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その指と唇で
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5.呪縛

力が入らなくて、私はだらしなく足を開いたままだった。
(あぁ…)
放心したまま、孝則を見る。
「も、…毛布を…」
さすがに男二人の前でこのままの姿でいるのは辛い。
孝則は私の体、顔、足、晒した性器……舐めるように見つめた後、薄手の毛布を体に掛けてくれた。

(………)

私はぐったりとベッドに身を沈めた。
手首はM字に開かれた足首に縛られたままだ。
それでも、私は目を伏せた。


何かやりとりをした後、柏木は身支度をさっさと整えて部屋から出て行ったようだ。
シャワーの音がする。
私は部屋に一人残されて、そのままの格好で放置されたままでいた。
孝則が掛けてくれた毛布がせめて救いだった。
(私は……何を、しているの……)
口の中に、まだかすかに見知らぬ男の味がする。
汚れた顔も手が自由にならないため、汚れたままでいた。
一人きりになっても、私は束縛されたまま。
さっきから状態は何も変わっていない。
(……)
足首が少し痺れる。
無理な体勢が続いているからだ。
足の間がベタベタした。
お尻の方まで、私が出したものと孝則のものが溢れていた。


バスルームのドアが開いて、すっきりとした顔の孝則がバスローブ姿で出てくる。
「……」
私は何か孝則に言ってやりたかったけど、言葉が浮かばない。
彼とこんな関係になってしまっているのは分かっていた。
しかしまさか第三者まで巻き込むとは思っていなかった。
逆らうことができなくて、身を任せてしまったけれど…。
これからもこんなことが続いたり…更にエスカレートしたりと考えると、私は孝則が怖くなってくる。

「結構、こういうのも好きでしょう?冬子さん」

孝則がベッドに腰をかける。
冷たく、熱い眼差しを私に向ける。
「……ひどいわ…」
私は思わず言ってしまう。
“犯された”気がする。
実際、そうなのだが。
だけど私は拒否したわけじゃない。
「ひどい…?ですか…?」
孝則は毛布の上から私の膝に触れる。
そして私の顔を見て、少し笑った。
「あんなに感じていたのに?」
孝則は毛布を引っ張った。

「…やっ…」

恥ずかしい格好が、また露(あらわ)にされる。
汚されたままの体のあちこちが、孝則の目の前に晒される。
「み、見ないで……。もう、…ほどいて下さい…」
私は孝則から目を反らして言った。
「もう、……ほどいて…」
動かないと分かっていても、手のひらに力が入る。
それに連動して足首が動いてしまい、私は更に自分の足を広げてしまう。
「すごく、いい格好ですよ…」
嘲笑された、と私は思う。
しかしすぐに孝則は言葉を続ける。
「冬子さんの体は、すごく美しいです…本当に」

「あっ!」

孝則の手が私の肩に触れる。
あ、と思った瞬間、私は彼に強く掴まれて体を持ち上げられた。
そしてひっくり返される。

縛られたままで、ベッドに胸をつけたうつ伏せの状態に裏返される。
私は顔を横に向けて、孝則を見ようとした。
先ほどの姿勢よりもさらに動きが取れない。
それなのに、私は動物のように腰を高く上げていた。

「お尻も、すごくキレイですよ」
「…もう、やめましょう…孝則さんっ」

お尻が剥き出しにされているこの格好は、私にとってとても屈辱的だった。
「いい格好です、冬子さん」
「…いやぁっ」
腰をよじっても、状況が変わるわけではなかった。
それどころか、益々誘っているかのように見えてしまう。
「…もう、…やめてください…」
私の懇願も、孝則は聞き入れなかった。

「はぁんっ!」

お尻の上から、何か液体を垂らされる。
「や、……何…?」
肩越しに見ようとしても、自分が何をされているのか分からない。
「ただのローションですよ」
そう言うと孝則は更に液体を垂らした。
お尻の谷間にそって、性器へとその液体は流れていく。
「…やっ…」
散々汚されたその場所に、新しい液体を塗りつけられる。
「くっ……」
孝則は私の溝にそって指を動かした。
「僕がさっき冬子さんの中に出したもの……。もうすっかりあなたの中に溶けてしまいましたね」
「あぁっ…!」
孝則の指が入ってくる。
後ろからこうされるが、とても弱いのに。
その指は、私の中からおなかの前の方へと肉壁に沿って擦られる。
「あなたは、何度しても…いつも飲み込んでしまう」
「あっ、…はぁっ…」
ぐるぐると指を動かされているのが分かる。
「欲張りな人だ…」

孝則はそう言うと、私から指を抜いて離れた。


(はあ、はあ……)
少し弄られただけで、私はすぐに感じ始めていた。

孝則が戻ってきて、私のお尻に手をかける。
(あ、…何…?)
肉より固いものが私のそこに押し付けられる。

「あぁ、あぁんっ!」

あてがわれたそれは、簡単に私の中へ入ってきた。
「う、…うぅんっ…」
孝則はすぐにスイッチを入れた。
「はぁ、あぁんっ……あぁっ…」
形の安定した、独特の刺激。
温もりとはまた違う感触…そして私の羞恥心を更にかきたて、興奮させる。
「………」
孝則に、されていること…。
私はその姿を目の裏で想像してしまう。
肩と胸を完全にベッドに沈ませて、腰を突き出している私を弄ぶのは彼にとって容易なことだろう。
(私自身が、彼の玩具……)
「うぁ、…あぁん…」
思わず自分の足首を握り締める。
私はそれぐらいしか自分の体を動かすことができないのだ。

バイブレーターの金属的な音。
孝則は私に入ったそれを機械的な動きで出し入れする。
小刻みに震えた玩具は、孝則の手によって快楽のリズムを産む。
(ああ……ああ…)
どう当てれば私が感じるのか、孝則はよく理解していた。
「はぁ、…あぅっ…」
私は唇を噛んだ。
声を出さないことがせめてもの抵抗だった。
そんなことをしても、何の意味もないのに。
むしろ彼を喜ばせるだけだ。

「静かですね」
私を弄ぶ手を休めずに、孝則が言った。
「くっ……ふぅん…」
私は顔をシーツに擦りつけるようにして、声を殺していた。
「ですが…こちらはどうですかね?」
孝則はおもむろにバイブを抜き、自らの指を私の膣へ挿入した。

「くうっ!……あぁぁんっ…!」

ローションで充分に潤っているうえ、すでに感じている私のそこ。
かき混ぜられるグチャグチャという音が、私の耳にイヤでも入ってくる。
そしてそんな音を意識できないぐらい、孝則の指は私に快感を与えた。

「イきそうですね、…冬子さん」

私自身が力を入れて、彼の指を飲み込んでいた。
彼の動きを逃さないかのように、その部分がギュっと力んでしまう。
(もう、…ああ…)

「あっ、あっ、…イクっ、…イクぅっ…」

お尻がビクビクと震える。
何もかも、孝則の思うとおりに反応してしまうこの体。
「あぁ……あぁん……」
口の端から涎が垂れてしまう。
私にはそれすら拭うことができず、また自分のあちこちが汚れていくのが恨めしかった。


「冬子さん…」
再度、すぐにバイブレーターを挿入された。
「あぁ!…あっ…そんなすぐには…」
「…すぐに、が、…イイんですよね?」
口で何と言おうとも、私の体はバイブレーターをズブズブと奥まで飲み込んでしまう。
「ふぅんっ……っくぅっ…」
自分の意志では体の向きも変えられなかった。
ただ指先が空を掻くだけだ。
「あぁぁんっ…!」
しっかりと奥まで入ったバイブレーターは、内部にしっかりと振動を送り込む。
そして入り口からクリトリスへぴったりと張り付いた玩具の前部が、更に私に強制的な快感を与える。
「あぁ、あぁっ…あぁっ…」
(いい…ガマンできない…ああ…)

一度火が点いた体は、次の炎の出口を探して止まない。

私はすぐにでも達してしまいそうになる。
それを、何とか耐えようとした。
動かない体で、首だけを振った。

「…あああっ!」

そのすぐ後ろにあるもう一つの恥部にも、固いものが入ろうとしていた。
「やっ、…やめてっ……孝則さんっ…」
私は体をねじり振り返ろうとするが、全く無駄な抵抗だった。
両方のふくらはぎの上に孝則の足がかかり、腰も彼の腕で押さえつけられていた。
私の無防備な、お尻…。
とうとうその場所に、彼の手が伸びたのだ。

「やぁぁんっ!」
私はせめて上へと逃れようとしたが、両足に彼の体重がかかって全く動けない。
「あぁぁぁっん!」
お尻の中へ入ってくる。
猛烈な違和感―――

それでもすぐ前の穴は深くまでバイブで埋められていて、激しく振動を続けている。
その快楽からさえも、私は逃れられない。
(いやぁ…いやぁ…)
頭の中で、わずかに残された理性で、私は自分の快楽を否定しようとした。
「あ、あぁんっ!」

分からなくなる。
どこで感じているのか。

「冬子さん、もうすぐ後ろにもバイブが全部入ってしまいますよ」
「あっ、…いやぁっ……」
(どうして……)
お尻に感じる違和感。
たっぷりと垂らされたローションのせいで、まるであの部分のように入ってしまう玩具。
「きゃぁっ、……はぁんっ!」

孝則は後ろのバイブを動かした。

その動き。
見えないが、感じることはできた。
後ろの穴がまるでもう一つの性器のようだ。
孝則は後ろに入ったバイブレーターを、まるで膣にするように出し入れしているのだ。

「やっ、…やぁ、…あぁっ、…い、やぁっ…」

クリトリスから内部へと、連動して響く甘い振動。
そして私はお尻でも感じてしまっていた。
(イヤ……ああ…)
次第に快楽に飲まれていく。
どこが気持ちいいとか、どこで感じたらダメだとか……もうどうでもよくなってくる。


全てに感じていた。


(ダメ…もう、ダメ…あああ…)
下半身の力が抜けていく。
私の全ての感覚は、快楽を感じるために研ぎ澄まされる。

「イクっ、……もう、あぁぁぁっ!」



無理な体勢から、私は背中を反らせ一瞬大きく頭を上げた。
そのままドサリとベッドに顔から倒れる。
「はぁっ…はぁ…はぁ……」
くぐもった金属音。
私の中に埋められた玩具。
「………」
孝則は何も言わずに、私のアナルからバイブを引き抜いていく。
「…うぅっ…」
抜かれていく感じ。
その感覚は膣で感じるものとは違っていた。

ずっと挿入されていた前方のバイブレーターもゆっくりと引き抜かれた。
自分の中から、ボトリと液体が零れるのを感じる。


「………」
背後に孝則の体温を感じた。
まさか、と一瞬考えがよぎる。
私は目を閉じた。

「んんんんっ……」

孝則が、私の後ろに入ってきた。


ケモノだ、と、わずかに残っている理性で私は思う。
「あ、あ、…あっ、あぁんっ!」
私のその場所は、何の抵抗も示さず孝則を受け入れていた。
もう一つの隠された性器。
(ああ、気持ち、いい……)
アナルで交わることでさえ孝則とは可能なんだ、…と、バカな考えがよぎる。
それを真っ向から認めてしまえるほど、私の肉体は感じていた。
「あぁっ、あぁっ、…あぁっ…」
こんな部分で、私は孝則を求めていた。
体中のどこを犯されても、私は孝則なら自ら求めてしまうかもしれない。

(これ以上、ない…っていうほど…)

孝則の腰が、私のお尻に打ちつけられる。
彼のその太さ、その深さ……そして自分のこの場所に、こんな快楽があったなんて。

(私を、汚して……)


「うあぁっ、…あぁ、いいっ……孝則…っ…あぁっ…」
既に全てを許してしまった私の背後から、孝則が体を合わせてくる。
「冬子さんの全てで……すごく感じてしまう…」
普段聞きなれない甘い孝則の声。
それは私の火に油を注ぐ。



「あぁっ…もっと、…愛して……孝則さんっ…」

私ははっきりと彼を求めた。
「愛してます、……冬子さん…」
私の首筋でささやく、苦しそうな孝則の声。
「あぁ、……あぁっ、…愛してる、…う、あぁんっ……」


「く……冬子さん…」
孝則が更に私の奥深くへと刺さってくる。
繋がった場所から、体が揺さぶられる。
「…うぁぁっ、…やぁっ…」
「愛してる……冬子…」
「あぁっ、はぁっ、…あ、あっ、…あっ…」


こうなる度に繰り返される、その時だけの『愛してる』という言葉。
決してそんな風には、想い合っていないのに―――
何の意味も持たないその言葉をお互いに繰り返しながら、 私たちはケモノのように結ばれる。
「うぁぁん、あっ、…あ、…あぁっ…もっと…愛して…」
体の奥…こんな場所から湧き上がってしまう快感に私は流されていく。

(彼のペニスで、私の全ての穴を塞いでほしい……)

そんな妄想を抱きながら、
私は白く渦を巻いて上り詰めるる感覚に、全てを任せた。

 

   

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