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その指と唇で
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4.緊縛

男二人の前で、私は全裸になっていた。


理性が、見知らぬ男の前で痴態を見せてはならないと私自身に警鐘を鳴らす。
それでも孝則の視線に射抜かれると、…私は結局は逆らえないのだ。

「縛る」―――

孝則はそう言った。
柏木という男はその道のプロなのだと言う。
『プロ』という意味……細かいことは私には分からなかった。
一体どういう伝手で孝則が男を連れてきたのかも分からない。
孝則とこの男の関係も……。

孝則が私に対して今まで用意してきた様々な道具。
それらのものを一体どうやって入手してくるのか、不思議に思うこともあった。
だがそれを追求したことはなかった。
結局、彼にどんなことを望まれようとも、…私は逆らえないのだ。

(もう、縛られてる…)

それは肉体のことではなく、既に私の精神は孝則に縛られていた。



まだ明るい昼の日差しが、薄手のカーテン越しに部屋に入り込む。
私はベッドに座り、タオルで全裸の体を隠していた。
不安だった。本当は、逃げ出したいほどに。

「それでは」

柏木という男がバッグを持って私に近付く。
思わず私はタオルを持つ手に力が入る。
男がバッグから取り出したのは、濃いベージュ色の縄だった。
「ご心配なく。ガチガチには縛りませんから」
そう言って男は両手に縄を取る。
「………」
「キツくすると、内出血してしまいますから」
男は淡々と準備を整えている。
私は思わず孝則を見た。

孝則は窓際に立っていた。
私を見ると、どうってことはないといった愛想笑いを見せる。
彼のその目の奥に、私は何とも言えない威圧感を強く感じた。

ここにいる私は、きっとただの動物なんだと思う。
彼に対峙するときの自分……。
理屈では説明できなかった。
まるで弱い動物が、視線だけで射すくめられて動けなくなってしまうように。
そこには歴然とした力関係が生じていた。

「胸は、どうしましょうか」

男が孝則の方を見て言った。
「柏木さんは、どう思いますか?」
孝則は逆に質問を返す。
柏木は一瞬考えて、そして口を開いた。
「初めてですし、時間も時間なんで……。打ち合わせしたように手足だけの方が」
「じゃあ、そうしてください」
孝則の言葉を合図に、男は体ごと完全に私の方へ向き直った。

(…事務的な会話―――)

この状況でも、私はいつものように違和感を感じていた。
ベッドの上でタオル一枚になっている自分。
そして私を囲む男達…。
自分の身に起こっている現実とは思えなかった。


柏木は、私の足を取る。
男の手が触れて、私は初めて我に返った気がした。
体が固くなる。思わず足を引っ込めた。
「大丈夫ですから」
男に足首を握られる。
「えっ……」
改めて私は男の顔を見てしまう。
柏木は威嚇するでも下心を見せるでもなく、私の顔を見返した。
「リラックスしてください。と、言われても無理でしょうけどね」
『それが仕事』だと言わんばかりに、男は作業を続けようとする。

「あっ……」

私は押し倒され、片足をM字に曲げられる。
男の示すがままに、足を預ける。
タオルが体にかかっているので、まるでマッサージにでも来ているような雰囲気だった。

それでも縄は私の足にキッチリと廻されていく。

肌に食い込む違和感…

私の膝は折られ、太腿とふくらはぎが密着した状態で固定された。

(力が……)

曲げられた右足は、自分の力ではもう戻せなくなっていた。
また不安が大きくなっていく。
(私は何をしているの……)
今更に自問する。
柏木は縛りの作業に集中していた。
私は孝則の方を見ることはできなかった。

「うっ」

もう片方の足が曲げられると、完全にM字の状態になる。
「あ、あの……」
やっぱりやめて欲しい、…両足を広げられて、今自分のしていることの重大さを実感する。
私はまだ自由な腕で、開かれた足の間をタオルでおさえた。
「どこか痛いですか?無理な力がかかっていますか?」
男のこの事務的な態度が、自分のしていることの恥ずかしさを薄めてしまう。
この男がしている仕事の邪魔をしてはいけないような気にさせられてしまう。
足が広げられているとはいえ、まだ私の体にはタオルで隠されていた。
「いえ、そうじゃなくて……」
「どこか痛いですか?」
男がまた同じ質問を私に投げる。

「いいえ…」

言いなりだ、と自分でも思う。
私は目で孝則を探した。
彼は私の死角に立っていて、顔が見えない。

柏木は私に苦痛がないのを確認すると、また黙々と作業を続ける。
「体、随分柔らかいですね」
私を見る男の目。
それは……鏡越しに客を見る美容師のようだった。
私を見ているようで、見ていない。
彼の目は私の全体のバランスを捉えていて、実際に見ているのは私の表情ではなかった。
「ここまで開脚するなんて、珍しいです」
そう言いながら、男は更に私の足を開いていく。

知らない男の手が触れる。
そして私の体に縄が廻される。
肌に触れる縄の感触……
感覚的な違和感。
日常生活にはありえない態勢のまま、縛られていく……


両足が完全に開かれ、M字で固定されてしまった。
とはいえ、まだ力を入れれば足を閉じることができそうだった。
柏木は私の右手を取る。
「……」
私は何も言わず、男にされるがままになっていた。
『縛られる』ということに興味があったのかも知れない。
私はただじっと、男の器用な作業を見守っていた。

(ああ……)

男が私の手首を縛る。
食い込んだ縄ごと曲げられた足の後ろに引っ張られ、そして手首と足首を繋げて縛られる。
(もう手も自分で動かせない…)
ここまできて、自虐的な期待感が体の奥から沸きあがってくるのを感じた。

足を広げられている。
腕まで、動かせない。

柏木のあざやかな技術で、もう片方の手首も足首へと繋げられてしまう。
手首と足が一緒に縛られてしまうと、私はもう自力で足を閉じることはできなかった。
縄が触れているところは決して窮屈ではないのに、しっかりと束縛されている。

男は改めて、私を縛る縄を目と手で、確認した。
柏木のちょっとした力で、私の体は簡単に動いた。
自分では全く動けないのに。
(どうされてしまうの……)
男に膝を少し触られただけで、私の体は大きく傾いてしまう。
まるでダルマのようだ、と私は思う。


柏木が私の体から離れ、孝則の方を見た。
(孝則……)
私も孝則を見る。
壁に背をつけて立っていた彼は、一歩踏み出して私を見た。

「さすが、鮮やかですね」
感心した声で柏木に向かって孝則は言った。

「タオル、外してもらえますか?」

(えっ……)
孝則のその言葉に、私は一気に不安になる。
ここまで身を任せておきながら、私は縛り終わった柏木は作業を終えるとすぐに帰ってしまうものだと勝手に確信していた。
(まさか……)
大いに有り得ることだ。
無意識に考えないようにしていただけかもしれない。
ここまできて、私の理性が自分を責めはじめる。

柏木の手が私に伸びる。


「いやっ……」


私は思わず顔をそむけた。
たった一枚の布。それがこの現実と自分自身の心を遮っていたように。


露(あらわ)にされる―――
―――両手首が両足に縛られ足をM字に開かれて、恥ずかしいところを晒しているこの姿…。


「素晴らしいですね、柏木さん」
孝則が柏木の縛りを褒めている。
「いや……、それよりも彼女、柔らかそうで白くて…うん、…いい素材ですね」
私は二人から目を反らしていた。
男の視線を感じる。
孝則の視線も。
二人にこんなにあられもない姿を注視されて、私は今すぐにどこかへ消えてしまいたくなる。

「や……孝則さん……」

私は首を振って、そう言うしかなかった。

「冬子さん、すごく綺麗ですよ」
冷静な孝則の声。
「ねえ、柏木さん」
「本当に…」
男が相槌を打つ。
自分が蔑まれているのを感じる。
私の姿は二人の目には、どう映っているのだろう。
こうまでされてしまう、バカな女の姿……


「はっ!」

突然に触れられて、思わず私の体はビクンと跳ねた。


孝則が……、私の晒された一番恥ずかしいその部分に指を触れた。
「見てください」
孝則はそう言って、男に私のその部分をもっとよく見せようとする。
「いやっ……」
私は足の力を入れて、閉じようとした。
しかし片膝ずつ、それぞれの男に軽く手を乗せられるだけで全く動けなくなってしまう。
『彼はプロだ』と言っていた孝則の言葉を今更ながらに思い出す。
「ここ……」
孝則の指が私の肉を分けていく。
私はベッドに埋まるぐらいに、できる限り顔を背けた。
まるでこの現実から背を向けるように。
孝則の指で私の肉襞は大きく開かれる。
「彼女、クリトリスがすごく大きいんですよ」
私は男二人の息遣いを初めて感じた。
「ああ、本当だ」
柏木が言った。

(いや……)
本当に恥ずかしかった。
明るい部屋で、こんな風にまじまじと自分の性器を男二人に見られるなんて。
「や、…やめて……」
腕を振ってみる。
私の膝に乗せられた男たちの手に力が入り、すぐに私の抵抗は無駄に終わった。

「触ってみてください」
男に、孝則が言った。

(いやっ!)
全く動きがとれないことを、今更ながらに痛感する。
私を開いていた孝則の指の感触が離れると、知らない男の指が私の敏感な部分に触れた。
「やっ、…ダメです!」
できるだけ普通の声で懇願したつもりだった。
私の言葉は無視され、男の指は私のクリトリスを包む。

「触った感じも、なかなかいいですね」
私を触りながら、男が孝則に言っている。

「やぁ………」


男の指が、私のそこをゆっくりと左右に震わせる。
「あ、……いやっ」
私は思わず首を振った。
ただ、自分の足と手の指先だけが無意味に動く。
足を開かれて、私は知らない男にその敏感な部分をいじられていた。

「はあっ、……やぁっ…」

男の動きに合わせて、ビクン、と体が跳ねる。

縄を扱っていた時同様、柏木の指先は器用だった。
(いや、……こんなの…ダメ…)
「あぁ、…はぁうっ……」

「相変わらず感じ易いですね」
孝則の声が、現実へと私を引き戻す。
それでも男の指の動きは止まらない。
私のクリトリスへ、小刻みに快感を与え続けた。
それは次第に強さを増した。

「冬子さん、溢れてきましたよ」

「あぅっ!」

私の濡れたその場所に、孝則が触れた。
男は肉芽を揺さぶり続けている。
元々そこがとても敏感なのに、柏木の触れ方は官能的過ぎた。
(こんな風にされたら……)
早くも絶頂の兆しが体に見え始める。
(イヤ…こんなの……だめ……)

「あぁぁぁっ!」

心とは裏腹に、自分でも恥ずかしい声が出てしまう。
孝則の指が、私の中へ入ってきた。
「ダメっ、だめぇ……孝則さんっ……」
私は目を開けて孝則を見た。


目が合うと、孝則は口の端で笑った。


私の視野に、縛られた自分の両足が見えた。
その大きく開かれた間に、男たちの腕が。

「やぁっ……!」

私がもう一度顔を背けると、孝則の指が更に私の奥に入ってくる。
内部を激しく振られる。
柏木からクリトリスに与えられる感覚も、もう限界になりつつあった。
「や、やぁ、…はぁっ、…いやぁっ……」

男の指が更に強くそこを弾く。
孝則の指は私の中を激しくかき回す。

(だめっ……もう、…ガマンできないっ……)

二つの別の意志を持って蠢く指先に、私の性感は翻弄され一気に高ぶっていく。

「ああっ、……だめぇぇっ…!!!」


背中が仰け反ってしまう。
体が大きく震える。
「あぁ、…あぁぁぁぁっ………」


……ガックリと力が抜けた。


「早いですね、イってしまうのが」
孝則がゆっくりと私の中から指を抜いていく。
男の指もそこから離れた。
「はあ、はぁ…はぁ……」
私は肩で大きく息をしていた。
ホっとしたのも束の間、孝則が言う。
「この濡れ方……、そそられますでしょう?」
男たちはまだ私のその部分を見ていた。
達した後のそこを見られるなんて、屈辱的だった。
(もう、…やめて…)
そう思いながらも、既に自虐的な本能には火がついていた。
もう足を閉じようという気持ちもおきない。
股間を開かれたまま、手首も足首もぐったりとベッドに落ちていた。
「柏木さん…」
孝則の声。
二人は入れ替わり、足元で動く気配がする。

「あぁぁぁ……」

孝則の指よりも少し太い、男の指が私に入ってきた。
「うう!うあぁっ」
思いっきり奥の方をいきなり触られて、今イったばかりのそこに苦しいほどの感覚が走る。

グチャグチャグチャッ…

私のそこは大きな音を立てた。
その恥ずかしい音の大きさ以上に、内部に入った男の指は激しく動く。

「あぁっ!あぁっ!」

大きな声が出てしまう。
羞恥心が自分の中から消えてしまう。この強烈な快感のせいで。
腰が震える。中をかき混ぜられて、そこを中心にして体全体が揺さぶられる。
(ああ、…どうしたら、いいの……)

「ああんっ!うああっん!」

動く肩に、ふと手をかけられる。
孝則の手。
「うぅぅんっ……」
薄目を開けて見上げると、孝則はじっと私の顔を見ていた。
「やっ…、孝則さん……」
なんとか小声で彼の名を呼ぶ。
孝則は冷たい表情のまま、私を見下ろしている。
(う、あぁぁぁっ……)

私をグチャグチャにしながらも、男の指は確実に私の性感の強い部分を探っていく。
「ああ、ここですね……」
男はそうつぶやくと、一気に内部にあるその場所を責めた。

先ほどまでの感覚から、ギアチェンジされたように次元の違う快感へと変化してしまう。
(すごい……あぁぁぁぁぁぁ……)
わけが分からなくなっていた。
お腹の中から何かが込み上げ、何かが抜けていく。
それは背筋を通って全身へと巡る。
(ダメ…ダメ………)

「う、あぁぁぁっ!あぁぁぁんっ!!」


一瞬何が起こったのか分からなかった。
男の指がやっと体から抜けたとき、私は自分が泥になっていくようなおかしな感覚になった。
(溶かされる……)
縛られて動かない体。
そして本当に動けなかった。
体中が重い。力が入らない。

「随分たくさん噴きましたね」
孝則の嘲笑うような声で、私は潮を吹かされたのだと気付いた。

柏木の腕が、私の目の前へと突き出される。
「こんなに、噴きましたよ」
男はそう言って、私の口元へと手を近づける。
薄目を開けて見た柏木のその腕は、確かに肘の方までぐっしょりと濡れていた。
「あなたの、ですよ…」
柏木の手がさらに私の顔へ近付く。
「冬子さん、…自分の、舐めてみてください」
孝則が私の足元から言った。

「………」

従順だと思う。自分でも……
だけど私はこうするしかないのだ。
そして自分の心の内側でも、きっと男達に蔑まれることを望んでいた。
私は柏木の指を舐めた。

……これが私の味…。


私の両膝に、孝則の手がかかる。
「く、ふぅぅっ…」
思わず男の指を噛んでしまいそうになった。

孝則が、私に入ってきた。
ただペニスが挿入されただけで、ドロドロの私のそこはまた溶けるほどに感じてしまう。

「うう、…うぅ……」

男の手が、私の口の中にねじ込まれていく。
吐きそうになる感覚がして、私は思わず首を振って逃れた。
「はぁっ、…あぁっ……」
私の状況におかまいなしに、孝則は私に自分のものを突き立ててくる。
(ダメ…もう…変になりそう…)
潮まで吹かされて絶頂を迎えたばかりだというのに。
「あ、…あぁ、…あぁんっ…」
浮いた腰。体が揺さぶられてしまう。
孝則に動かされる体。
力なく揺れる足、そして足首に縛られた手。

私は両頬を男の手に包まれ、強制的に顔を男の方へ向かされる。

「うぅ……」

口を開けさせられ、入れられたのは手ではなかった。
もっと柔らかくそして固い、柏木のペニスだった。

「冬子さん、しっかりお礼をしてくださいね」
私の間で腰を動かしながら、孝則が言った。
(いや……ああ……あぁん…)
口に入っている男の感触でさえ、私を感じさせていた。
二つの男性のモノが、余計に私を興奮させた。
「うぐ……うぅぅ…」
口の端から唾液が溢れる。
それでも拭う術がなく、私はひたすらに男の動きを口で受け止めるしかない。

(あぁぁ!いやぁっ……!)

私はまた軽く達してしまう。
きっとそれは孝則に悟られたに違いない。
彼は一旦腰を引くと、私の膝に体重をのせ更に私の腰を浮かせた。
(うぅぅっ……)
結合が深くなる。
そこがヒクヒクと震えているのが自分でも分かった。
「んぐぐっ……」
頭を男に抑えられ、喉の方まで男のモノが入ってくる。
「うぅ、…んぐぅっ…」

(苦しい……)

すっかり敏感になってしまった子宮の入り口のあたりに、孝則が自分自身を打ちつけてくる。
突かれる―――。
「んぐぅっ…」
(あああぁっ……)
またイかされてしまう。
今度は先ほどよりも大きく。
ヒクついているのはその部分だけではなかった。
もう私は自ら腰を動かしていた。
手足は動かないとうのに、腰を自分で動かせるのは皮肉だった。

「ぐぅ、…んんぐっ…!」

柏木のモノが喉まで押し込まれ、そして男の律動を感じた。
(あぁぁ…)
口の中で出されたことを感じた。
「んぐ、…んぐっ……」
私は喉の奥でそれを飲み込んだ。

(あぁぁぁあんっ……もう、だめっ…)

孝則が私自身の奥へ奥へと……
体が揺すぶられる。
これ以上奥はないという場所まで、私は孝則に犯される。

(良すぎる……もうっ……)
閉じた目の裏がチカチカした。
縛られて動けない指先まで、貫かれる快感で震えた。

私の口が柏木からやっと解放されたとき、孝則は私の中へ自身を放った。

 

   

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