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9.愛 |
ソファーに座り二人は少し休んでいたが、やがてお互いを求めてしまう。 なるみはすぐには裸にされ、彼の愛撫を受ける。 細川は自分の部屋でなるみが全裸でいる事に興奮していた。 なるみの体をじっくり見る。 ほれぼれしてしまう程の全てのバランスのよさに、今まで彼の抱いてきた女の記憶が薄れていく。 彼はソファーに座って、自分の上になるみを跨らせた。 「あぁぁんっ…」 なるみは手を使わずに器用に自分自身に細川を差し込んでいく。 「あん、…好き…」 なるみはゆっくりと上下に動いた。 細川の目の前で、なるみの美しく豊満な乳房が揺れる。 「はぁ、…あん、…あぁ…」 彼女の甘い息が細川にかかり、彼自身も更に興奮していく。 なるみは彼のものが自分の中で固さを増していくのを感じる。 二人は激しくキスを交わし、そして細川は下からなるみを突き上げた。 (あぁん、気持ちいい…細川さん…いい…) 「んん…ふ、うぅっ…」 なるみは唇の間から、甘い声が漏れてしまう。 細川はなるみの乳房を愛撫した。時折、乳首の先を噛む。 「んっ、…細川さんっ、……好きっ…好き…」 細川の動きに合わせて、なるみも自分から腰を動かす。 「んくっ…、ふ、…あっ…あぁぁっ…」 風俗の仕事を辞めてから、もう1年近く経とうとしていた。 その間、なるみは細川にしか体を許していない。 彼の体に自分の体が慣れていくのが分かる。 行きずりの関係ばかりだったなるみは、それさえも大きな喜びだった。 (もう、細川さんだけが、いい…) 以前のように感情もなく男に抱かれるのは、今ではもう辛くて無理だと思った。 (もう、あたし…昔の自分には戻れない…) 何をしても生きていける自信があったのに、今の自分は不安だらけだった。 彼のいない毎日にはもう戻れない。 なるみの体内が動き、細川は彼女がもうすぐ絶頂を迎えるのを感じる。 細川は更に激しくなるみを突いた。 「あぁ!うあ、んあぁっ!…くっ…いくっ、いっちゃうぅ」 なるみが低いため息をつきながら、腰を震わせた。 細川もなるみの動きに合わせて、自らのモノをなるみの中に放出した。 細川はなるみを抱き上げて、自分の寝室に連れて行った。 (あぁん…気持ちいい…) 初めて寝るウォーターベットの感覚に、なるみはウットリしてしまう。 「あたし、…ここで寝ていいの…?」 なるみは細川を見つめた。 細川は微笑んでなるみを見つめ返した。 なるみは彼のこの優しい目に弱いのだ。 思わず胸がクン、としてしまう。 「何だか、…嬉しすぎて…ホントに夢みたい…」 細川は更に目を細めた。 「夢じゃないよ…」 彼女の髪を束にして、弄びながら答えた。そっとなるみにキスする。 「あたし、……なんか幸せすぎて…」 なるみの目が潤む。 ふと手を離すと全てが無くなってしまいそうな不安感で一杯になってしまう。 「オレがいるだけじゃん」 細川は笑った。 「……」 「オレは、どこにも行かないよ」 細川は自分が優しくなったなと思う。 なるみはいつも不安そうにしていた。 「なるみ」 「はい…」 「オレだけじゃ、物足りない?」 「そんな、…そんな事、絶対にない!」 なるみは細川の言ったことに驚いてマジメな顔で言い返した。 「細川さんだけで、いいです!」 細川はそんななるみを見て少し微笑んで、彼女の頬に手をあてて言った。 「なるみは、…オレの事が、大事か?」 「…はい…」 なるみは大きく頷いた。 「オレも、なるみの事が大事だよ」 「………」 「なるみ」 「…はい…」 「これからは、自分の事ももっと大事にしろよ…」 その言葉になるみは胸が痛くなる。 「オレはお前が大事だ」 細川はなるみの頬にそっとキスしながら言った。 「愛してるよ……」 彼が優しく囁く。 なるみの中で何かが崩れた。 涙が一筋頬を伝うと、堰を切ったように次々に溢れてしまう。 「細川さん…」 なるみは彼に強くしがみ付くと、肩を震わせて泣いてしまった。 今まで抑えてきた様々な思いが、わっと出てきてしまう。 彼女の肩に乗っていたこれまでの様々な過去でさえ、細川の前で崩れてしまう。 なるみは嗚咽をもらして泣いてしまった。 泣きじゃくるなるみを抱きしめながら、細川は考えていた。 まだ20歳そこそこの、この女の子が歩いてきた人生の多難さを想像していた。 何も言わないが、きっと相当な事情があってこの世界に足を入れたんだろう。 細川はなるみの事を何も知らなかった。 今まではそれでもいいと思っていたが、親密になるにつれて次第に彼女のことを知りたいと思い始めていた。彼女の過去も含めて、全てを理解したいと思う。 細川自身、そんな感情を一人の女に抱く事自体が初めてだった。 (幸せにしてやりたい……) 彼にとっても、なるみはもうかけがえの無い存在になっていた。 自分も30歳を超えている。 このまま、ずっと彼女と暮らしてもいいと思う。 (ずっと、守ってやりたい) 今までの彼女の人生の分まで、なるみを幸福にしてやりたかった。 しかし細川はなるみの名前すら知らない。 彼女はどこでもずっと、「なるみ」とだけ名乗っていたのだ。 その夜、なるみはスッキリとした気持ちで眠れた。 初めてこれからの自分を考える事ができるような気がしていた。 (あたし、…細川さんがいなくなったら、死んじゃうかもな…) 失いたくないという気持ちが強くなればなる程に、不安も強くなっていく。 (だけど、一緒にいれば、生きていける) 不思議な事に、なるみは不安な気持ちと同じぐらい前向きな気持ちにもなっていた。 その後なるみには映画の仕事が立て続けに入った。 その間もグラビアを撮ったり写真集の予定があったりと、スケジュールは忙しかった。 今回はロケで、2ヶ月近くも東京を離れることになった。 「電話するね」 「ガンバレよ」 最初になるみを見た時の細川の予想通りに、なるみのタレントとしての活動は軌道に乗っていた。世の中の知名度はまだまだあまりなかったが、男性誌を読んでいる層にはアイドル以上の存在になりつつあった。 「これ、なるみちゃんに似てるんだよ」 尚輝がビデオを手にしていた。 「マニアの間で、すごく昔に流通していたらしいんだけど、内容がハードで伝説の1本になってるらしいぜ」 細川は尚輝からビデオを受け取った。 「尚輝は、どう思った?」 細川は言った。 「似てると言えば似てるような気もするけど、…違うと言われれば違うかもなぁ。 画像が超ワリィし」 「ふぅん」 「ま、彼女だとしても、不思議じゃないよな。あーいう仕事だったわけだし」 「これ、処分してもいいのか?」 「あぁ、そのつもりで渡したんだ」 細川はなるみのいない間、自宅でそのビデオを見た。 ダビングが繰り返されたせいか画像がかなり悪い。 人相を判断するのも難しいような映像だ。 そのビデオにはどう見てもまだ子どもが無理矢理に複数の男性に弄ばれる姿が映っていた。画像が悪いながらも、どんな事が行われているのかは理解できた。 乳房もかなり小さい…中学生か、下手したら小学生ぐらいの少女が縛られたり組み伏せられたりして様々な格好で犯されていた。バイブレーターが2本も刺さった状態で、足を広げられて吊るされていたりもしていた。 少女の顔はぼやけていて、誰であるか特定するのは困難だった。 しかし細川はこれはなるみだと確信した。 彼はすぐにそのビデオを破壊した。 指先が震えていた。 なるみが東京を離れて、1ヶ月が経った。 「なるみちゃん、今日と明日、撮影がなくなったよ」 「え!」 「俳優の都合で、撮影が前後する事になったから」 「はい……って、事はお休みですか?」 「そうだな。まあ、ゆっくりしてよ」 マネージャーの旗田が言った。なるみは続ける。 「じゃあ、東京に帰ってもいいですか?」 「いいよ。明日の夜までに入って貰えれば」 「…じゃあ、帰ります!」 なるみの顔が輝いた。旗田は言った。 「ボクも仕事の段取りがあるんで、一度東京に戻ります。一緒に帰りましょうか?」 「はい!」 なるみは喜んで細川の携帯に電話した。 『ただいま電話に出る事ができません……』 メールだけ入れて、とりあえず急いで自宅へ向かった。 なるみが東京に着いたのは、昼の11時を回っていた。 (もう、起きてるよね…) 静かにマンションのドアを開ける。 部屋の中は静まり返っていた。 そっと寝室に入る。 (細川さん……) 大きなベッドの中心で、彼は静かに眠っていた。 上半身は裸で、筋肉質な腕が毛布から出ていた。 細川の姿を久しぶりに目にして、なるみは嬉しくてすぐにでも飛びつきたくなる気持ちを堪える。 静かに彼へと近付いた。 「あ」 なるみは声をあげてしまった。 自分の写真集が枕もとに無造作に何冊か置いてあった。 (やーん…) 思わず顔がほころんでしまう。 気配に気付いてか、うっすらと彼の目が開いていく。 「んん…」 細川は寝ぼけながら、なるみを抱き寄せる。 急に力強く引き寄せられて、なるみは彼の体に圧し掛かってしまう。 体重を感じ、細川がキチンと目を開いた。 「なるみ…??」 「ただいまぁ!」 彼の体の上で、なるみがニッコリ笑った。 「え?なんでいるの…?」 状況が分からないまま、半分寝ぼけて細川が上半身を起こした。 「ちょっと時間が空いたから、帰ってきちゃった」 「…そうか…」 改めて細川はなるみをギュっと抱きしめた。 「会いたかったぁ~。ホントに~」 なるみも細川にしがみつく。 腕に彼の肌の感触を感じる。それがとても嬉しい。 二人は暫くキスを交わした。 「久しぶりだな…なるみ…」 「うん…」 起きたばっかりの男の匂いのする彼も好きだなと、なるみは思う。 「嬉しいよ…写真、見てくれてたんだね」 なるみが満面の笑顔で言った。 「あ…?!」ベッドの脇に置かれた写真集に細川が気付く。 普段クールな彼が、かなりバツが悪そうな照れたような表情になる。 (カワイイ…細川さん…) 珍しい彼の表情に、なるみは顔がほころんでしまう。 「なるみがいない間、これで自分を慰めてた」 細川が大マジメに言った。 「うっそぉ…」 なるみが真っ赤になる。 「嘘だよ」 二人は顔を見合わせて笑ってしまった。 なるみと細川は食事をしに外に出た。 今日は彼は店を休むことにした。 「こうして休めるのも、あいつがいるおかげだよ」 「あ、…尚輝くん?」 「本当はあいつが店長になってもいいんだけどな。本人がイヤがってるんだ」 「ふぅん」 なるみは尚輝の事を思い出した。 人の良さそうな感じで、いかにも女の子から好かれそうなタイプだった。 「ところでさ、…昔、なるみが尚輝を相手にしたときって、…尚輝に何したんだ?」 「え?」 細川は言いにくそうにしている。 「あ、…お店での事だね。ね、もしかしてヤキモチ焼いてくれてるの?」 ニコニコしながら無邪気になるみは言った。 食事に入った店内では、隣の客との間隔が充分に開いていて二人はゆっくりと会話する事が出来た。 「そうかもな」 細川もニッコリして答えた。 いつもなるみよりも彼の方が上手なのだ。 「ふふふっ。お店での事は、秘密なんだよね」 なるみが出てきたコーヒーにミルクを入れて、スプーンでかき混ぜながら言った。 「今度、細川さんにもしてあげようか?」 「…どんな事、してくれるんだ?」 それを聞いて、なるみはくすくす笑った。 そして細川の事を色っぽい目で見る。 「ねえ、もう帰りたくなっちゃった…」 「んっ…好き…細川さん…」 なるみは細川に体を絡ませる。 彼は彼女の細い腰を抱きながら、更に彼女の奥深くヘ入る。 抱かれている最中のなるみは、本当に美しかった。 「綺麗だな、…お前は…」 なるみは可愛らしい顔の奥に、大人の女を感じさせるようになっていた。 細川はなるみの首へキスした。そしてうなじへ唇を移す。 彼の鎖骨のあたりに、なるみの乳首の先が触れる。 なるみは体の中で、彼の体温を感じていた。 二人は体を起こして繋がったまま、腰を動かさずにただ抱き合っていた。 経験豊富な二人のセックスは優雅だった。 行為そのものを楽しみながら、お互いを確認しあう。 なるみは細川に抱かれる毎に、自分がまともな人間に戻れるような気がしていた。 今までの経験一つ一つを、彼が消していってくれるような気がする。 他の男に抱かれた回数分、細川に抱かれたかった。そしてそれ以上に。 もっとずっと側にいて欲しかった。 二人はベッドの上で長い間繋がったままでいた。 行為が終わり、二人は体を寄せ合う。 「ねぇ、尚輝くんにしたこと、して欲しい?」 「……何をしたかによるけどな」 なるみはうつ伏せになっていた。 肘をついて少し起き上がると豊満な乳房が強調される。 「…でも、恥ずかしいかな…」 なるみは細川の胸に顔を寄せた。 「そんな、恥ずかしい事?」 「うん……恥ずかしい…」 細川は興味が湧いてくる。 「どんな事したんだ?」 「…うーん…、細川さんの方が、恥ずかしいかもよ」 「オレが?」 「うん」 なるみは細川の体の上に乗って、少しキスした。 「でも、…せっかくだから、…する?」 「何だよ…怖いな…」 細川はちょっとひいてしまう。 なるみは耳元で囁いた。 「あたしが、…細川さんを犯すの…」 「は?」 一瞬細川は意味が分からなかった。そして暫くしてピンとくる。 「それって…」 「そう、まさにそう。尚輝くんは、女の子になってくれたんだ…」 なるみがニヤニヤしてた。 細川は尚輝がどうして何も言わなかったのか、理解した。 「変態だなぁ、アイツ」 細川はあきれて言った。 「あ、ダメだよ!尚輝くんに言ったら! …秘密にしないと!お客さんとのマナーなんだから!」 そんな話を聞くと、細川の方が恥ずかしくなってくる。 尚輝がなるみを弄んだと思っていたのに、される方になっていたとは…。 「細川さんにもしてあげようか?気持ちよくしてあげるよ…自信あるよ?私」 なるみがエッチな目で言った。 「…いいよ、オレは」 細川は真顔で答えた。 「そう?…そうだね…あたしも恥ずかしいもん」 細川となるみは付き合い始めてちょうど1年ぐらいだった。 ずっとノーマルなセックスしかしていない。 なるみは仕事柄様々なことができるのだが、彼との今の関係に充分過ぎるほど満足していた。 「ねぇ、細川さん……」 「うん?」 「あたしと、これからもずっと…一緒にいてくれる?」 細川はなるみがこんな事を言うのは珍しいなと思った。 「そうだな。…ずっと、な」 彼自身もこんな事を心から口にした事はなかった。 こう言ったのはなるみが初めてだった。 細川はなるみの頭を抱き寄せる。 「オレの言ってること、ウソじゃないから」 「…疑ってないよ?…なんかムキになってる…?」 なるみはちょっと笑った。 細川は思わず念を押した自分に恥ずかしい気がしていた。 (久しぶりに会ったし、ちょっとマジメに話すか…) ここのところなるみの仕事が忙しくて、半年ぐらいの間ゆっくり過ごした日数は数えられるぐらいしかなかった。 「オレ、今まで仕事のせいでウソばっかり言ってるからさ」 なるみは優しく彼を見る。 「しょうがないよ。そういうのは…同じサービス業として、分かるよ」 細川にとって、なるみは付き合いやすかった。 お互い、普通で分からない感覚が何も言わずに伝わる。 「あたしは、騙されたりしないから」 なるみが澄んだ目で言った。 「絶対に、騙されないよ…。でも、…細川さんには騙されてもいいんだ…。 だけど、他の人には騙されないよー」 なるみは笑った。 「別に騙さないよ」 細川は答えた。 「長い付き合いに、なれるかな…」 なるみは言った。 「なるさ…」 細川はなるみの肩を掴む。 「あ!そうだ!」 なるみが体を起こした。 「細川さんと長く付き合って、…でマンネリになったら、いつか、あたしが、 ……細川さんを犯してあげる」 なるみは色っぽい声で細川に囁いた。 細川はガラにもなくドギマギしてしまう。 なるみは笑って細川に抱きついた。 |
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