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6.気持ち |
繋がったまま、二人は濃厚なキスをしていた。 (離れたくない…) なるみは泣いていた。 細川はそんな彼女を見て、心がグっと締めつけられる。 あまりに魅力に溢れた少女の、その全てを自分だけのものにしたくなる。 何度もキスを交わしながら、なるみの中で彼はまた固くなっていた。 なるみもそんな彼を感じる。 「細川さん……また、して…」 何度でも、彼に抱かれたかった。 なるみはサラサラの彼の髪に触る。 彼を見つめるなるみの目は、純粋な輝きに満ちていた。 細川は自分がこの娘に溺れてしまいそうだと、本能的に悟る。 なるみが細川にキスする。 開いた唇からなるみの舌が伸び、彼の口の中を舐める。 (好き……細川さん……) 細川はなるみを自分の上に座らせる形に移動させ、言った。 「自分で動いてごらん…」 男達を虜にしてきたなるみのテクニックを細川も味わってみたいと思った。 「………」 なるみは細川にじっと見られるのは恥ずかしかったが、それでも彼を喜ばせたいという気持ちの方が強かった。なるみは体を少し浮かせ、細川の膝に両手をつけて自分の体重を支えた。ちょうど彼の上にしゃがんでいるような格好になる。 細川の方からは繋がった部分が丸見えになってしまう。 「細川さん……」 なるみは細川を見た。 彼から見えるなるみの姿は、これ以上ない程淫靡だった。 「…見て……」 小さくつぶやいて、なるみは動き始めた。 彼女の腰が上がったり下がったりする度に、結合している部分が艶かしく見えた。 腰は上下の動きと共に前後にも回り、今まで何度もこうして男をいかせてきたのだろうと、細川は考える。 「あ……あぅ…、は、あぁっ…」 なるみの口からは声が漏れ、彼女から出る液体で細川のモノが光る。 そして先ほど彼が出したものも、なるみの動きと共に溢れ落ちる。 彼女のその部分は彼のものを咥えこんで蠢いていた。 前後の動きが加わっているせいで、まるで口を閉じたり開いたりしているように見える。その様子は細川が視線を上げると見える少女の可憐さとは対象的で、彼の性的な興奮を高めた。 なるみが動きを速める。 「あぁっ、…あぁぁんっ…細川、さぁんっ…」 細川に貫かれているという喜びを、なるみは全身で感じていた。 彼のものは今までのどんな男のものよりも、ずっと彼女にとって官能的だった。 彼をイかせてあげたいのに、もうなるみは自分自身が達してしまいそうになる。 一方、細川は先程よりも冷静さを取り戻していた。不覚にもあっという間になるみと共に連れて行かれた先刻とは違い、彼女の中を味わう余裕があった。 そのままの姿勢でなるみを押し倒し、今度は自分が上になって彼女の中を思う存分掻き回した。 激しい快感がなるみを襲う。 「あぁぁぁ…、き、…気持ち、いっ…いい…あぁ、細川さんっ…」 「…かわいいよ…」 細川の囁きに、なるみの心はギュっとなる。 そしてそれに反応するように肉体の快楽も強まる。 「あぁぁんっ、あ、あっ、…あ、あ、あぁぁぁっ!」 体の中から、背中へ、頭へ、指先へ、足の先まで、快感が駆け抜けた。 絶頂を迎えたなるみの中はよりいっそう動きを増し、細川は何とかその刺激に耐えた。 益々激しく彼はなるみの体を突き上げる。 なるみは何度も押し寄せる強い甘い衝撃の中、我を忘れてしまう。 「あーーーっ!あ、あぁぁぁーーっ!」 (もぉ、ダメ…) なるみは体を震わせて、細川に何度も墜とされる。 (もう、…おかしくなりそう……、ダメ…だめぇ…) それでも細川は彼女の感じるところに当たるように、強く挿入を繰り返した。 なるみの腰を抑え、更に奥へとしっかり刺し続けた。 「んあぁぁっ、あぁぁぁんっ!」 眉間に皺を寄せて泣きながら乱れ続けるなるみを、しっかり抱いたまま細川は彼女の中へ自分自身を放った。 細川はシャワーを浴び、まだ汗ばんでいる肌にシャツを着なおした。 冷房のよく効いた寝室に入ると、なるみはそのまま眠ってしまっていた。 彼女の肩まで毛布をかけてやり、そっとキスする。幼さの残る寝顔を見つめ、その頬を撫でる。愛しい、と思わずにはいられなかった。 細川はなるみの部屋を出た。 一人の寝室で、なるみは目を覚ました。 体中が重く、ダルくなっていた。 自分がどうしていたのかすぐには分からず、裸でいた事で先程の行為を思い出す。 なるみは寝室を出てリビングへ行ったが細川はもういなかった。 歩くと、自分の中から彼の残していったものが零れてくる。 (ああ……) 自分を失ってしまう程何度もイかされた後、眠ってしまったのだ。 まだ体のあちこちに甘い余韻が残っていた。 自分の亀裂に指を潜らせ、零れる液体をすくう。 「細川さん……好き……」 なるみはその指を舐めて、呟いた。 それから何事もなかったように、また日々が始まる。 なるみは店で男の相手をする回数が格段に減った。 グラビアの活動がなるみの仕事のメインになっていた。 彼女のそういった活動によって、自然といい女の子が集まるようになってきたらしく、新しい店は軌道に乗っていた。 相変わらず細川は事務的に、なるみを迎えにきて送り届ける。 なるみはあの日の事が自分だけが見た夢のような気がしていた。 髪をサラサラのままにした、色っぽい細川をそれからは見ることはなかった。 彼女は美しくなっていった。 少女と女の間の、微妙な艶っぽさに溢れていた。 芸能的な活動をしている事で、表情もどんどん変わっていく。 しかし時折見せる切ない色気は、彼女の内面から来ているものだった。 なるみの芸能活動は順調だった。 細川と打ち合わせをし仕事をこなし、車に乗り帰宅する。 そんな日々が続き、何ヶ月か過ぎ、いつしか12月になっていた。 (あれからもう3ヶ月も経つんだ…) あの日の事をお互いに話題に出す事はなかった。 細川もなるみも、以前のように距離を置いた態度で接していた。 (あたしが細川さんの事を好きでも……それがどうなるわけでもない…) なるみが体を売っている事の手伝いをしているのが、彼の仕事だ。 もしそんな二人が、男女の関係になってしまったならば、自分もとてつもなく辛い思いをするだろう。そして、それが割り切れる程なるみは強くなかった。 なるみは彼に対する気持ちを抑えた。 なるみがもらった12月のスケジュールには、店での仕事の予定がなかった。 「あの……お店の方は?」 なるみは細川に聞いた。 「11月でお店は辞めてもらいます」 細川は表情を変えず、淡々と言い放った。 「え…」 突然の事で、なるみは驚いた。 自分はこの仕事をし続けなければいけないと、覚悟を決めて今日まで来ていたのだ。唐突な事で、不安を強く感じてしまう。今までは体を張って生きていたのだ。 「これからは、芸能活動一本で行ってもらいます」 「………」 細川の説明だと、これからはグラビアだけではなくVシネマの仕事も受けるのだという。 「大丈夫ですよ、なるみちゃんなら、やっていけます」 なるみは、自分の事ではないような気がして呆然と彼の言葉を聞いていた。 そういえば、前に社長が言っていた。 (「タレント活動を中心に…いずれそちらをメインに…」) (もう他人を相手にセックスしなくてもいいんだ…) その事から開放される事、なるみにはまだ実感がなかった。 それからは慣れない事に日々振り回されていった。 帰る時間も不規則になり、毎日クタクタに疲れていた。 細川のベンツの中でも、なるみはほとんど眠っていた。 「着きましたよ」 細川が声を掛けてもなるみはなかなか目をあけない。 少し肩をゆすっても、熟睡しているようだった。 その寝顔は、美しすぎた。 「なるみ……」 細川はキスした。 彼は感情に関わらずたくさんの女を相手にしてきたせいで、女性に恋愛感情を持つことがほとんどなかった。女は愚かで、独占欲が強い。いつからか女性に対してドライな考え方になり、そしてまたそういう女性ばかり自分の周りに集まっていた。女を金で換算するようになっていた。こいつからは幾らとれるか…。そんな事ばかりを考えて、今まで来ていた。 なるみに対して最初に受けた印象が、今となってはハッキリ分かる。 この娘は、自分と似ているのだ。 そして、自分よりも強い。 なるみはその強さのおかげで、純粋なところは流されずに汚れないまま今日まで生きてきたのだ。今まで彼女の人生にどんな事情があったのかは分からない。だが、おそらく自分の想像を越えるような苦労があったのだろうと細川は思う。 彼女を大事にしたい気持ちでいっぱいになる。 (少し、走らせるか……) 細川はエンジンを入れ直し、車を出した。 柔らかい夜風を肌に感じて、なるみはまどろんでいた。 (海の匂いがする……) なるみは目を開けた。 車は停車しており、運転席の細川と目が合った。 「………」 (あぁ…これは夢…?) 半分寝ぼけた瞳で、なるみは細川を見つめた。 その眼差しは細川の目にはひどく官能的に映る。 細川がなるみの方へ腕を伸ばす。 甘い空気が車内に満ちていく。 その空気に逆らうことができずに、細川はなるみに触れてしまう。 なるみは彼を見つめていた瞳を閉じた。 渇いた喉が水を欲しがるように、お互いに求めながらキスをした。堰を切ったように、お互いの気持ちが溢れ出てしまう。キスはどんどん濃厚になり、なるみはこのまま細川に食べられてしまいたいと思う。 (ずっと……こうして欲しかった……) 現実かどうかを確かめるために、なるみは細川の舌を噛んだ。 「……ってぇ…」 唇を離して細川が引っ込む。 「何すんだよ…」 いつもはクールな細川なのに、その反応になるみは笑ってしまう。 それでもまだ現実感はなかった。 (今なら言える……) なるみは笑うのを止めて、真剣に彼を見た。 「好きなんです……」 「………」 細川はただなるみの視線を受けとめる。 「それだけなんです……」 なるみは切なかった。 こんな風に打ち明けても、きっとどうにもならない事が分かっているのに。 細川はいつかこんな時が来るだろうと感じていたが、それが今夜になるとは思っていなかった。 なるみの気持ちを打ち消すように、細川は言った。 「…俺、来週お前のマネージャー辞めるんだよ」 突然の事に、なるみは驚く。 「う、…うそ…」 彼は続けた。 「俺と入れ替えに、本当の芸能マネージャーが付く。俺はそのまま本来の店の方に戻る」 「そんな…急すぎます……」 今まで事務的な付き合いながらも、細川とはほとんど毎日会っていたのだ。 それなのに、彼が急に自分の側からいなくなってしまう……。 「………」 例え彼に抱かれてもどんなキスをされても、なるみは彼の気持ちがずっと分からなかった。 ホストにハマって、大きな借金を作って働いている女の子が店には何人もいた。また借金を作らずとも、ホストの為に風俗で働いている子もいた。彼は、今はこうしていてもベテランのホストなのだ。 細川が自分にとっている態度が、どんな気持ちから来ているのか……なるみはずっと分からなかった。なるみはただ、細川と一緒にいられる時間があるだけで、嬉しかったのだ。 (そんな…どうしたらいいの…) 今になってみて、自分のこの半年間を支えていたのは彼だった事が分かる。 彼を知ってしまったら、いなくなった生活がどんな風になってしまうのか、 …想像もできなかった。 (もしかしたらもう、…会えなくなる?) 自分がついさっき好きだと告白した事さえ、もうどこかへ飛んでしまっていた。 あの熱いキスでさえ。 自分のマンションまで向かう車の中で、なるみは何も言えなかった。 ショックだった。 細川はそんな彼女の様子を覗っていた。 マンションの前に着くと、なるみに言った。 「今週の日曜日で、俺は最後だから…」 「………」 何て言ったらいいのか分からず、なるみは細川と目を合わせられない。 「夜、空けておいてくれ…な」 「細川さん…」 細川から見るなるみの瞳は、心なしか潤んでいるように見えた。 彼はこのまま彼女を自分だけのものにしてしまいたい気持ちを抑え、その場を離れた |
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