会計を一括で行っている事務所の一室で、改めて細川となるみは挨拶を交わした。
「あの…。昨日聞けなかったんですけど、私はどうなっちゃうんでしょうか?」
二人の目が合った。
「広報活動6割、店がらみの仕事4割ってとこでしょうか。
とりあえず…。序々に広報の方が増えていくと思いますが」
細川が答えた。
昨日は社長に気をとられていて、なるみはあまり気にとめていなかったが、細川は一見地味に見せているがよく見るとかなりいい物を身につけていた。ちらっと見えた時計はロレックスだし、全体にシンプルに着こなしているせいで余計に垢抜けた印象を与えている。多分20代後半…30代かも知れない、となるみは考えた。
「……」
「打ち合わせを始めましょうか?」
細川が口を開いた。なるみが答える。
「あの、私…タレントなんて、ムリだと思うんですけど…」
「……イヤなんですか?」
鋭い目つきで細川はなるみを見る。
髪を後ろに撫で付けていて、銀縁の眼鏡に光が反射した。
なるみは萎縮してしまう。
「…イヤっていうか…あまりにも急で…」
細川は更になるみを見た。
「イヤじゃなければ、…じゃあ、頑張っていきましょう」
彼にあっさりと話を打ち切られる。
(きっと人を緊張させるタイプなんだろうなぁこの人)
なるみ自身はこういった仕事なので大抵の人とは接する事ができた。
きっとこんな細川ともうまくやっていけるだろう。
なるみの考えを悟ったのか、優しい眼差しで細川は言った。
「じゃあ、打ち合わせを始めましょうか」
なるみは風俗の仕事が嫌いではなかった。
むしろ、なるみはお客さんにかなり優しくされていて、そして凄い収入を得ていたので、ラッキーとさえ思っていた。
なるみは自分の将来なんて、考えた事もなかった。
自分は漠然と長生きしない気がしていた。
今日をこうして生きていられるだけでも幸せだった。
とにかく、今日が精一杯…。
しかし今、どういう形であれ、違う世界へと一歩踏み出そうとしていた。
なるみはまだ19歳だった。
「あの、細川さん」
「はい?」
細川は急に初めて名前で呼ばれて、少し驚いて返事をした。
「細川さんは、私と、…いつ、するんですか?」
「は?」
面食らった様子で、細川はなるみを見た。
「あぁ…」
しばらくして、彼は彼女の言葉の意図を知る。
「ボクはそういう事をするつもりはありませんよ」
少し考えてから、細川は続けた。
「今までは、仕事関係者とは必ずそういう事があったのですか?」
なるみは少し間を置いてから答えた。
「はい…大体は…」
細川はため息をついた。
打ち合わせが終ると、細川は彼女を自分の車に乗せ自宅まで送っていく。
「今日はこれで終わりです。明日は何もありませんので、ゆっくりしてください。
明後日は早速撮影になりますので、時間には迎えに来ます」
細川は淡々と予定を説明する。
セキュリティ体制万全のなるみのマンションの前に車をつけた。
「ここで大丈夫ですか?」
細川の言葉になるみはニッコリ笑って答える。
「大丈夫ですよぅ。送って頂いてありがとうございました。
じゃあ、また明後日ですね」
なるみはマンションの入り口へ向かった。
細川はそんな後姿を見送る。
細川は先日から思っていたのだが、なるみは礼儀を心得ている娘だ。
最近の、特に水商売の子と雰囲気が少し違うのはそんなところもあるからなのだろう。
そして、とてもあっさりしている。
キライなタイプじゃないな、と細川は思った。
なるみがどうして人気があるのかも、すぐに理解できた。
この業界の女の子独特の、不安定な精神状態を感じさせる要素もない。悲嘆にくれている様子でもない。
『私と、…いつ、するんですか?』
お茶でも飲みに行くかのように言い放ったのは驚きだったが、その一言で今までに彼女が歩んできた人生が推測できた。
細川はセブンスターに火をつけ、眼鏡をサングラスに替えて車を出した。
なるみは1人暮らしをしている自分の部屋のドアを開けた。
1LDKのこの部屋は、店が半分以上家賃を払っている。
全体をベージュで統一しているこの場所を、なるみはとても気に入っていた。彼女の稼ぎは普通の仕事では考えられないぐらいの額なので、凝ろうとすれば内装もかなりお金をかける事ができたが、ずっとシンプルな暮らしをしていた。
服装についてもそうだ。
元々ブランドに興味がないので、適当に自分の気に入ったものを買うようにしていた。バッグや時計はプレゼントされたものがたくさんあるので、自分では買った事がない。
自分には欲がないな、となるみはいつも感じていた。
仕事以外の時間は、この部屋でゆっくりしているのが何よりも落ち着く。
人に対する執着心もなかった。一人でいることを寂しいと思わない。
元々、寂しいと思う感情が欠落してしまっているのではないかとも思う。
なるみにとって、人は安らぎの場ではなかった。
独りが、落ち着くのだ。
「おはようございます」約束の時間どおりに細川は迎えに来た。
なるみは朝起きて出掛けて行く事が、とても健康的だと思った。
仕事とはいえ、なるみは遠出するのが嬉しかった。
「つかぬ事を聞くんですけど…」
細川が言った。
「なんですか?」
「なるみちゃんは、彼氏はいないんですか?」
運転している彼を見つめながら、なるみは答える。
「いませんよー、全然。ちなみに男友達もいないんですー。
…全然男っ気ないんですよ、私」
なるみはニコニコしている。細川はそんななるみを横目で見る。
「彼氏がいる子は、時間が不規則になったりしがちなんで、
聞いてみただけなんです。すみませんでした」
申し訳なさそうに細川は言った。
なるみは、自分よりも10歳以上っは年上であろうこの男が、自分に対してもの凄く丁寧な態度をとるのが不思議でならなかった。
(でも、「仕事」って、…本当はこういうものなのかな?)
なるみは風俗以外の仕事をした事がない。
(だけど、細川さんから感じるのは、何だか違う…もっと、自分に近い感じ…)
撮影は順調に進んだ。
仕事が終ると細川がマンションまで送ってくれる。
来週には新しい会員制の風俗店のオープンイベントがある。
今度の店は、芸能人や政治家や、とてつもない金持ちなどがターゲットなのだという。何らかの力のある者でないと会員にはなれない。女の子の方も密かにアイドル希望のグラビア系のタレントなども所属していた。風俗でありながら、タレント事務所とも繋がっているのだ。店舗は秘密裏に構えられ、それと分かるようには作られていない。場所も複数あり、勿論出張もする。
完全に裏のクラブだった。ある意味、愛人の代わりだった。
なるみが以前に撮影されていたグラビアをまとめて出した写真集は、順調に売上を伸ばしていた。
こういう出方では、異例の事だった。
今回は、改めて写真集を作るための撮影を最初から行っている。
既になるみの知名度は風俗誌を購入している者なら、知らない者はいない。本人は自覚していないが、名実ともに有名人になっていたのだ。
オープンイベントのその日。
なるみは花嫁を連想させるような白いロングドレスを着た。
前をホックで留めて着用し、膝のまん中あたりから脚が露出するようなデザインになっている。
イベントの会場には特別な人物のみが招待されていた。
「女の子」の中で、なるみがメインになるのだった。
「なるみ!」
名前を呼ばれ、簡易ステージの方へ裏から上がっていく。
客席の中心に、直線に伸びたステージがある。
小さかったが、その会場は充分に高級感を演出していた。そしてその舞台自体は、海外のストリップ場でよくあるような作りになっている。
ステージの中央には神崎が待っていた。
客は10人少し。
完全に内輪の世界だった。
客同士は、見えないように高いパーテーションで区切られており、ステージからでないと見渡せないようになっている。客の隣にはそれぞれ選ばれた上質な女の子が付いていた。
「当店の看板になります。『なるみ』です」
社長が簡単になるみを紹介し、挨拶をした。
なるみは神崎に導かれるまま、ステージの前方に歩いていく。
スポットライトが当たり、なるみの白いラメ入りのドレスが光り、彼女の美しさを強調する。
なるみは神崎の前に立たされると、突然後ろから抱きすくめられる格好になる。
「え…?」
「今日は、当店の看板娘を、みなさんにもたっぷりと見ていただきますわ」
スリットの入ったなるみの服の間に、神崎の手が滑り込む。
「あ……」
戸惑っているうちに、用意されていたソファーになるみは社長と共に座らされた。神崎を下にしながら、両足をゆっくりと持ち上げられ、ソファーの肘掛に固定される。
(いやん…こんなの……)
何も聞いていなかったなるみは戸惑う。
客からは自分の股間が丸見えにされ、パンティーがあらわになっている。
客からどよめきの声が漏れる。
「なるみの、可愛い色んなところを、
今日は特別に皆さんにもお見せしますわ」
ホックで留めてあるだけのドレスの前をはだけられて、なるみの形の良い乳房が現れた。ブラジャーはしていなかった。
「いやぁん…」
なるみは振り返って神崎を見ようとしたが、廻された神崎の指がなるみの両方の乳首をつまみあげた。
「あっ、…あん!」
そのまま乳房もろとも愛撫される。
「あぁ……」
屈辱的なその姿に、なるみは興奮し始めていた。
客や女の子が、自分を見る視線が突き刺さる。
ボーイがバイブレーターを神崎に渡し、社長はスイッチを入れた。
布地の上から、なるみのクリトリスに当たるようにバイブが押さえつけられる。
「はぁぁぁ…あ、あぁぁんっ…」
両足が固定されているから、なるみは身動きができなかった。
脚を開いたまま、いいように神崎に弄ばれる。
乳房も放り出されたままだ。
「可愛い声を、たっぷり聞かせてね…」
神崎がなるみの耳元で囁く。
先日責めて、神崎はなるみの弱いところを知り尽くしていた。
当てた玩具を少し動かしてやる。
「あぁ…、あん、っ、あぁぁ…」
(こんなの……恥ずかしい……)
なるみ自身から溢れ出てきたもので、布地がじっとりと湿っていく。
だんだんと布地越しに、なるみの秘部が露になっていく。
「あぁんっ、…いや…しゃ、…社長ぅ…」
なるみの懇願する声も、会場を興奮させるだけだった。
童顔な彼女のセクシーな表情に、男達は息を呑んだ。
静まった会場に、なるみの甘えた鳴き声だけが響く。
神崎はなるみのパンティーのひもの片側をほどき、その局部を曝け出した。
男達のため息が漏れる。
どの席からもよく見えるように、ステージの横の大きなスクリーンになるみの大事なところが大映しになっていた。
「あぁっ、…いやっ…、恥ずかしいっ、イヤっ…」
「可愛いわよ…なるみ」
神崎はさらになるみの秘部を指で広げる。
「う…い、イヤぁっ…」
なるみは首を振ってイヤイヤをするが、それがかえって男達の興奮を煽った。神崎が客席に向かって言う。
「どうですか?
こんなにキレイなこの場所が、貴方がたのモノを咥えてしまいますよ」
持っていたバイブレーターを、神崎は唐突になるみに挿入した。
「ああぁっ!!」
なるみは大きな声を出してしまう。
神崎がそれを動かす。
「あぁっ、あ、…あぁぁんっ!」
客席がどよめく。
それぞれの興奮が熱い線となって、なるみを視姦する。
男達の視線がなるみの顔に、開かれたその間に張り付く。
美しい少女が足をM字に固定され、玩具を呑み込んでいる姿は淫靡そのものだった。
(こんなにたくさんの人に、…見られてる…私のこんな姿を…)
スクリーンには玩具を出し入れされるなるみの局部がアップで映されていた。勿論修正などない。バイブレーターの動きに合わせ、唇がめくれるように濡れるその部分がそのままの姿で、映し出されている。
ステージの中央にいる可愛い顔をした少女は、社長にいいようにされていた。
神崎はバイブレーターの出し入れを激しくする。
「あぁぅ、…うぅっ、うん、うぅっ…」
嗚咽にも似たなるみの声が響く。
(ダメ…社長には、……感じるところが知られてる…)
白い液体が、玩具を汚していく。
その姿を男達は興奮して凝視した。
「どうですか?こんなに可愛いのに、こんなに淫乱なんですよ?」
神崎はバイブの振動を上げ、ぐりぐりと中をかき回した。
「あぁぁぁっ!あうっ!…あぁぁっ!ダメッ…!」
なるみは思わず叫んでしまう。
「このバイブレーターを、自分のモノだと思ってくださいね…」
神崎が客席に向かって言った。
男達はもうガマンができないようだ。
「皆さんも、隣の女の子を、どうかお好きなように…」
神崎の声とともに、あちこちから声が漏れ始める。
なるみの全身にも快感が走り、抑えられなくなってきていた。
「あぁぁ…、あ…社長っ…、い、いっても…いいですか…くっ、うぅぅっ…」
「可愛い声で鳴きなさい」
神崎は強く玩具をなるみに突きたてた。
「は、あぁぁーーーんっ!あっ、い、っいくっ、うあぁぁーんっ!」
既に客席のあちこちで、行為が行われていた。
ある娘はしゃぶりながら指で弄られ、ある娘は膝に跨って男を受け入れていた。
「あぁぁ…は、あぁぁんぅ…」
誰もいない楽屋で、なるみは再び神崎に貫かれていた。
貫かれていたのは、後ろの方の穴だった。
「あぁぁ、あ、あ、…あぁぁんっ…」
「もうすっかり使えるようになったわね…いい子だわ…」
前の穴には奥までバイブレーターが突き刺さっていた。
なるみは二つの穴で頬張りながら、愛液を溢れ出していた。
「あぁーっ、あっ、あ、あ、…ハァッ…く、うぅんっ…」
下半身に何をされているのか分からなくなるくらいの刺激を与えられ、なるみの意識は朦朧としていた。つい先ほどまで前の方を神崎に貫かれ、達したばかりだった。
なるみは立ったまま、腰をしっかりと神崎に打ち付けられていた。
「はぁぁぁんっ!…あぁっ!あ、…は、あぁぁんっ!」
「どんな気持ち?」
「んんっ、…く、…苦しい…ですぅっ…よ、良過ぎてっ…」
神崎に何度も突かれ、あまり経験のない快感がなるみの身体を駆けていく。
(すごい…二つとも、…感じる…ああん…)
「も、ダメ…うっ、…いっ、…イクっ…いっちゃうぅぅっ!」
神崎は笑みを浮べながらなるみへの出し入れを激しくし、
自らも中へと放出した。
「はぁ…はぁ……はぁ…」
経験したことのない感覚がなるみの中に残る。
「可愛いわね…ちゃんと私のものを飲み込んでくれているわ」
なるみの後ろの穴からは、少しずつ白い液体が滲み出していた。
「あぁ……はぁ…あぁ…」
なるみはビクビクと体を震わせる。
前の口には玩具がそのまま刺さっており、なるみの余韻をさらに広がらせていた。
「もうすっかり、こっちでも感じる事が出来るようになったわね」
神崎は満足そうに言った。
そしてもう一つのバイブレーターを今達したばかりの後ろの穴へと、ゆっくりと挿入した。
「はぁぁぁんっ!まだっ、ダメですっ!…社長っ!」
先ほどの神崎のモノよりは少し細かったが、ぼこぼこと突起を繰り返し、出入りの度に違った感触をなるみに与える。
(あああ…何なの……この感覚…)
「うぅっ、…う、くうぅぅんっ…」
二箇所を同時に玩具で犯されているなるみの姿を、神崎は嬉しそうに見ていた。バイブレーターのスイッチを上げる。
「はぁぁ!ふ、うあぁ、…うぅぅんっ!うぅんっ!」
なるみがいやらしい声で喘ぐ。
後ろの穴からの刺激が、敏感な前へと伝わる。
「イヤ…、やっ、…うあぁぁっ…」
「可愛いわね」
「はうううっ!」
神崎が後ろのバイブを引っ張る。
さっき自身が出したものがローションと混ざって、白っぽい液体がなるみの後ろからこぼれる。
神崎は後ろのバイブを押し込み、同時に前のバイブを引っ張った。
「ああああぁぁぁっ!」
なるみはもう机に突っ伏した格好になっていて、脚がガクガクと震えた。立っていられない。
(凄い…凄すぎちゃう…ダメ…)
神崎は始めはゆっくりとしていたが、次第にリズミカルに動きを加速していった。二つの玩具を交互に出し入れする。後ろからも前からも、沢山の液体が溢れてなるみの陰部はぐしょぐしょになっていた。
「ふあ、あっ、あっ、…あああぁーーーっ、んあっ、…ああーんっ!」
下半身がバラバラになりそうな感覚に、自分が壊れてしまう。
なるみはたて続けに何度も達してしまう。
もう自分が何をされているのかさえ、分からなくなっていた。
「あああああああ!んん、あぁーーーんっ!」
涙を流し美しい口元からは涎を垂らしながら、
なるみは社長のおもちゃになっていた。
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