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泳ぐ女
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11.未来

尚輝は何気なく自宅でテレビを見ていた。
映画のCMが入る。
「なるみちゃんだ…」
細川から彼女が映画に出ているという事は聞いていたが、ちょい役だと言っていた。しかし予告の中で結構な時間を割いて、なるみの姿が映し出されていた。
なるみは着物をギリギリのところまで肌蹴させて、雨の中を立ち尽くしていた。
その表情は儚げで、そして悲しそうに微笑んでいた。
「すげぇ…」
その表情は一度見ただけでも、見る側にかなりのインパクトを残した。


尚輝は興奮して、細川に言った。
「おい、なるみちゃんの予告、見たか?」
「いや、…まだ見てないけど…」
細川は答えた。尚輝は強く言った。

「なるみちゃん、すげぇいい顔してた。あれは絶対話題になるって」


尚輝の言ったとおり、なるみに対する問い合わせは殺到した。
なるみの写真集もそれに便乗して、改めて売上が伸びているという事だった。
初期に出ているものはプレミアまで付いているという。
「彼女のテレビの仕事、どうしますか?」
旗田は神崎に問い合わせた。
風俗店を経営している神崎にとっては、なるみは年齢を詐称して若い頃からこの業界にいるので、いたずらに彼女の過去を詮索されたくなかった。
話題になった映画は、なるみが端役で女郎役として出演しているものだ。しかし短い出番の中、誰もが認めざるを得ないほどの演技を、なるみはしていた。
なるみへの問い合わせは、様々な制作関係からも来ていた。
社長である神崎は、なるみの予想を越えた売れ方に戸惑っていたが、ここは芸能関係のプロの旗田に任せようと思っていた。
なるみの過去に関する噂は、現実的には裏で幾らでも圧力をかけることができたからだ。
「旗田くん、…芸能活動に関しては、君に任せるわ。
彼女の知名度のおかげで店は軌道に乗って拡張する予定だし、女の子の質もグっと上がったし…。もう風俗店の方は切り離して考えてあげて。それから、なるみちゃん本人にも相談してみてね」
なるみ次第では、芸能活動を本格的に始動してもいいと神崎は考えていた。
 

なるみは忙しかった。
次々と雑誌のインタビューやグラビアの仕事が入って、予定が埋まっていく。

「大丈夫か?」
細川はなるみを気遣った。
彼自身が夜の間仕事に出ているということもあり、二人の生活はすれ違いがちだった。なるみはほとんど休みがなかった。

それから半年が過ぎた。
二人はリビングのソファーに座り、朝食を取っていた。
「細川さん、あたし…あさって、1日休めるんだ」
なるみがニコニコして言った。
細川は少し困った顔をして答えた。
「あさってか…。その日だけはどうしても仕事が抜けられないんだ…ごめんな…」
「あ、…そうなんだ。うん、…じゃあ、ここでゆっくりしておくね…」
「残念だな、…せっかくなのにな…」
細川もガッカリした様子で言った。
なるみはそんな彼の様子を見て、ふと思いつく。
「ねえ、お店…行ったらダメ?」
細川は驚いてなるみを見た。
「……そうだなぁ」
なるみは彼に腕を廻した。
「ね?…ダメかなぁ?」
彼もなるみの腰に手をかける。
「ダメって事はないけど…。その日は結構予約が多くて…。
それに、おまえはもう相当有名人だし…」
「有名じゃないよ」
なるみは笑った。
細川はなるみの額に軽くキスして言った。
「店の男の方が気になって仕方がなくなるだろうからな…。やめておこうか」
「……分かった…」
なるみは少しシュンとした。
しかしそれ以上は細川には何も言わなかった。

「12月は、忙しいんだ…。ごめんな」
彼はなるみの髪を撫でる。
なるみはそんな細川の仕草が嬉しかった。
「しょうがないよ…。そうだ、あたしお正月は結構休めるかもだよ」
「そうか?」
なるみは目で彼にコーヒーのおかわりを聞いた。
細川は黙ってカップを差し出す。
なるみはスウェットの上下を着て、リラックスしていた。髪は前よりは短くしている。
キッチンへ立ち、そして二人分のコーヒーを入れて戻ってくる。
「細川さんはお正月、どうしてるの?」
二人で暮らしてから初めての年末だった。
「三が日は店も休みだし…。どこかへ行くか?」
なるみの表情がぱっと明るくなる。
「ほんと?わぁ…いやぁーん」
恥ずかしそうになるみは手をもじもじさせた。
「あたし、…何していいか全然考えつかないから…細川さんが色々計画してね」
細川はそんな彼女の様子を愛らしいと思った。
「そうだな…。金はあるし、…海外は?」
「海外!行った事ないよ!…行ってみたい!」
細川はなるみのその言葉が意外だった。
「海外行ったことないのか?グラビア撮影とかは?」
「あ、…あたし、全部国内でしてるの」
「え、…じゃあ、前に出した写真集の海のやつは?」
「あれは、沖縄。キレイだったよね」
「そうなのか…」
細川は思い出していた。自分がマネージャーをしていた頃はなるみは風俗店と掛け持ちしていたので、国内でしか撮影していない。
「なるみ、パスポート持ってる?」
なるみはその問いかけにきょとんとした。
「なーに?パスポートって?」
「……」
細川は返す言葉がなかった。
なるみは細川の表情を見て言った。
「ごめんなさい…。あたし、常識的なこと全然知らないの…」
細川は時計を見た。まだ朝の7時だった。
「なるみ…、今日は何時に家を出たらいい?」
彼は優しい声で言った。早朝に帰宅してから、まだゆっくり眠っていなかった。
「今日はねぇ…。だいたい1時ぐらいに旗田さんが迎えにくるよ」
「じゃぁ、まだ時間あるな」
細川はなるみを見た。
なるみは彼の手にそっと触れた。
「でも、細川さんは眠いでしょ?…ちゃんと寝ないと…」
細川は眠る気分ではなかった。

「なるみ」
なるみは細川にキスされた。
唇を合わせながら、背中を抱きしめられる。
シャワーを出たままの彼のさらさらした黒い髪が、なるみは大好きだった。
唇が離れると、細川はなるみの前髪をかきあげながら優しい目で見つめた。
なるみはそれだけでドキドキしてくる。
細川が口を開く。
「オレは、…この女の子が好きだよ…」
なるみは嬉しくてキュンとしてしまう。
「細川さん…」
彼は真面目な顔でなるみを見て、言った。

「…名前は…?」
「えっ?」

唐突な問いかけに、なるみは驚く。
質問の意味がピンとこなかった。
細川はなるみの頬に手をあてた。

「オレは…、この子の名前も、…知らない」

なるみの動悸が早まる。
今まで何年間も偽りつづけてきた、自分の触れたくないところに切り込まれているのだ。
「細川さん…」
彼はまっすぐになるみを見ていた。
非難するような色ではなく、真剣そのものだった。
なるみは細川のことが好きだ。「好き」だという簡単な言葉では言い表せないぐらい大事な存在になっていた。
「…あたし…」
「『鈴木』、なんて…ウソだろう?」
なるみは何て言えばいいのか分からなかった。細川は更に続ける。
「オレは、おまえの全部が好きだ…。オレが名前を聞くのは、おかしいか?」
なるみは言葉に詰まる。

(でも、今しかない……)

「あたし、…あたしは…」
様々な想いが交錯して、なるみはうまく口が動かない。
細川は彼女のそんな様子を見て言った。
「オレは…、この子の全部が好きだ…。
たとえ過去に何があろうとも…。…ちゃんと受けとめるよ」
なるみの胸に何かが込み上げてくる。
思わず涙ぐんでしまう。
「…野口、…ゆきこ…」
涙が抑えられなくなって、溢れ出してしまう。
「だけど…あの頃のあたしは…、もう、いないの…『ゆきこ』なんてもういない…」
涙が次々に零れ落ちていく。
「昔には、…戻りたくない…いや…」
思い出したくない過去まで溢れてきそうで、なるみは首を振った。
細川はなるみを抱きしめた。
「名前なんて関係ないけどな…」
なるみも彼の背中をギュっと掴む。細川の腕にも力が入る。
そして、なるみの耳元で囁いた。

「オレの…、籍に、入るか?」

「………」
なるみは意味が分からなかった。
「えっ…?」
「オレの籍に入るか?」
「……………」

なるみはその言葉が信じられなかった。
しばらく頭が真っ白になってしまい、ただ細川を見ていた。
彼はなるみの頬を両手で包んだ。
「名前も、変えたらいい…。過去はもう、流せばいい…」
「………」
なるみは倒れてしまうかと思った。
細川の言葉に、一瞬視界がぐらついた。
「…うそ、……ウソでしょう??」
なるみは気を失ってしまうかと思ったほどだった。
細川はなるみの肩を強く掴んだ。
なるみはハッとして、我に返った。
細川はなるみを優しく見た。
その顔は、今まで見せた表情の中でも一番慈悲に溢れていた。
「結婚しようか?」

(うそ、…これって、…夢??)

なるみも彼を見た。
細川は更に優しい眼差しで見つめ返してくる。

「結婚してくれ」

なるみは言葉が出なかった。
ただ細川に抱きしめられながら、涙を流していた。


仕事場では、旗田に「泣いた?」と聞かれてしまった。
なるみはなんとかその場を適当にごまかして、その日をなんとかやり過ごした。
今朝、彼に言われたこと…冷静になれば本当に夢だったのではないかと思ってしまう。
なるみが帰宅したのは深夜の2時だった。
勿論彼はまだ帰っていない。
(大変だなぁ…あの仕事も…)
なるみはシャワーを浴びて、シルクのパジャマに着替えた。
薄いピンク色の光沢のある素材でお気に入りの1枚だ。
彼が帰って来るまで待っているつもりだったが、いつのまにか眠ってしまった。

人の気配に気付いて、なるみは目を覚ました。
ソファーで眠ってしまったのだ。
「細川さん…?」
なるみは薄っすらと目を開けた。
「寝てなかったのか?風邪ひくぞ。そんな格好で」
「お帰り…おつかれさま…」
なるみは半分寝ぼけて、彼に抱きついた。
細川は自分が帰ってきた時に、家になるみがいてくれる事が嬉しかった。
(オレも、変わったな…)
女なんて鬱陶しいだけだったのに。
一人きりの生活が、何よりも楽だと思っていたのに。
彼はなるみにキスすると、コートを脱いだ。
「何か飲む?」
「ああ」
細川はそのままシャワーを浴びに行く。
なるみが時計を見ると、もう朝の5時半だった。
二人分のコーヒーを入れながら、昨日の朝のことを思い出していた。

「細川さん…」
暖房の効いた部屋で、二人でコーヒーを飲む。
「なに?」
細川はなるみから少し離れて、ソファーに並んで座っていた。
なるみは自分の指先を見つめながら言った。
「昨日…、言ってくれたこと、…すごい嬉しかった」
キレイに整えられた爪が輝いている。
「だけど…嬉しすぎて…どうしていいのか分からないの…」
「なるみ…」
何か言い出しそうな彼を遮って、なるみは続けた。
「あたし、細川さんと一緒にいたい……でも…」
「でも…?」
細川は言った。なるみはため息をついた。
「でも、…あたしなんかでいいのかなぁ…」
なるみの目からまた涙が溢れてくる。

「…あたしなんか……細川さんには…」
細川はなるみのそんな様子がたまらなくなって、肩を掴んで自分の方へ向けた。
ソファーの上で二人は見詰め合う。
「言っただろ?オレは、この子が好きだって」
「………」
なるみは目に涙を一杯に貯めていた。
彼は彼自身を振り切るように、なるみに言った。
「お前が、必要なんだよ……オレには」

(もう、…離れられないな…)
細川は自分自身に芽生えて止めることのできなくなった感情に、正直戸惑っていた。しかしそれが運命のようにも感じた。
なるみと出会うために、自分が今までこんな人生を歩んできたような気さえしていた。
「なるみは、…オレが必要じゃないか?」
なるみは激しく首を振った。
「ごめんなさい、そういうことじゃなくって……何だか…怖くて…」
なるみは決心したように、細川を見た。
「あたし、避妊してないの、…気付いてたでしょ?」
細川はなるみが風俗時代から気付いていたが、ピルでも飲んでいたのかと思っていた。
「あたし、子どもできないんだよ。…何度も中絶したから」
なるみが宙を見つめたまま言った。唇が少し震えている。
「あたし、…今まで何人を相手にしたか、分からないよ?
体もボロボロだし…すっごい汚れてるし…」
細川はそんななるみが可哀想になってくる。
この小さな体で今まで様々な辛い経験をし過ぎている。それなのに気丈で、心は汚れていなかった。
不思議なことに、彼はなるみからいつも前向きなモノを感じていた。風俗には自暴自棄になっている女の子も多数いるが、ポジティブな子も大勢いた。
なるみは特に強く、まともな人間だった。

「ごめんな…」

「え…」
「オレは、一時でも…お前が体を売る手伝いをしていた」
「…そんなこと…」
「……それは事実だよ」
なるみは彼の腕を掴んだ。
「でも!だけど…!
細川さんがいなければ、あの仕事を辞めることはできなかったよ!」
見詰め合う。二人の言葉にならない想いが、視線に溢れる。
自然と唇が重なる。
細川は、言った。

「オレに、…お前を幸せにさせてくれ…」

細川はなるみの涙を舐めた。
そして彼女のパジャマのボタンを外していく。
放り出された美しい乳房。その先の色づきを指で触れる。
ピクンとなるみの体が震えた。
「あぁ…」
なるみが甘い息を漏らす。

細川はなるみを寝室へ連れて行った。
暖房の入った暖かい部屋で、なるみをベッドに降ろす。
パジャマのズボンを脱がせると、下には白い総レースのショーツをなるみは着けていた。彼女の薄い陰毛が透けている。ショーツ1枚のその姿は、作品として出来上がった彼女のグラビアよりもずっとセクシーだった。
「細川さん……」
しばらくお互いの唇をむさぼりあうように求めた。
細川はなるみのショーツを脱がすと、その脚を割って愛撫を始める。
柔らかく豊満なもう一つの唇の間を舌先で何度もなぞる。
「んんっ」
なるみがため息を漏らす。
亀裂の間にある大きめの彼女の突起を、細川は吸うようにねっとりと愛撫する。
「ん、はぁ、…あっ」
なるみの間からはどんどん溢れ出してきていた。
彼はそれを指ですくい、裂け目の間に塗りつけるように指を動かす。
すっかりヌルヌルになっている彼女の性器に何度も指を往復させる。
「あん、あんっ…」
なるみは細川に抱きついた。
彼女が愛撫で軽く達すると、細川は自分のペニスをなるみの入り口に当てた。

「んあっ!」

細川はゆっくりとなるみの中へ自分を沈めた。
なるみも彼を締め付けながら、受け入れていく。

(あぁん……気持ちいい…もう…)

一度奥まで当てると、細川は腰を引いた。
「は、…うう」
なるみは唇に指を当て、快感を堪能した。
細川はなるみの脚を自分の後ろへ廻させると、改めて腰を動かし始めた。
彼の大きめのペニスが、なるみの肉をこする。
なるみの体に熱い波が押し寄せる。
「あぁ、あ、…はぁっ、あんっ、あ、あ…」
細川は更に奥を激しく責めた。
なるみはきつく目を閉じて、自らも揺さぶられながら細川の動きを感じ取る。
彼のものを中心に咥えて真っ赤になったその部分は、筋にそって愛液を零す。
細川はなるみの両方の足首を掴んで、左右へ大きく広げた。
「んんんっ、…ふあ、あっ…」
これ以上は入らないというところまで、細川は自分自身をなるみへ差し込む。
彼女の内側がヒクヒクと動くのを感じた。
このまま何度か突いたら、なるみはすぐに達してしまうだろう。
「あぁぁ…ほ、細川さんっ、キス、して…」
なるみが細川へと腕を伸ばした。
細川は両足を抑えていた腕を離し、体をなるみへと倒した。
寝室にはなるみが点けていたキャンドルの匂いが甘く漂っていた。薄いベージュのシーツの上で、繋がった二人は唇を求め合う。
真っ白ななるみの体が、細川の腕の中で蕩けていた。

「細川さん……、好き…好きなの…」

なるみはまた泣いてしまう。細川はそんな彼女が可愛くてたまらなくなり、なるみの体内の自分自身を更に固くした。
「あ、……あぁんっ」
(細川さんが、…固くなってく…あたしの中で…)
なるみは彼の形をハッキリと感じることができた。
彼女の中は感度がよく、なるみ自身の意志でも動かすことができた。
精神的な高ぶりと快感が混ざって、なるみの中での彼のモノが更になるみの体内に快感を起こす。
細川はなるみの涙を指先で拭った。
そして小さな声で言った。

「離さない…」

「細川さん…、細川さん…」
なるみは彼を強く抱きしめた。
細川はその姿勢のまま、一気に出し入れを激しくした。
「あっ!…あんっ!は、あぅっ、あぁぁっ!」
(気持ちいいっ…ダメ…もうっ…)
「なるみ、…かわいい…好きだ…」
彼は更になるみを突きたてた。
「は、やぁっ、あぁぁんっ…、あ、あ、あ…」
細川はなるみの中が動きを増しながら締めつけてくるのを感じていた。
(そろそろ、イクな…)
彼はなるみの脚を再び大きく開き、奥まで貫いた。
「あ、あ、あ、あ、…あっ、あぁぁぁーーーー!」
なるみは全身で快感の海に溺れてしまう。
白い衝撃が頭の後ろから背中へ抜ける。
腰が浮いてしまう。

「んあぁぁぁーーー!」

彼のものを体内でしっかりと掴みながら、なるみは絶頂を迎えた。
極みに達したなるみの体内の動きを細川は味わっていた。
(すごい中だな…相変わらず…)
彼は自分も連れていかれそうになるのを懸命に堪えていた。
細川もまた快楽の中にいた。
こんな風になっても堪えることができるのは、経験の賜物だった。動くのを止め、なるみの中に自分を刺したままでいた。彼女の痙攣するような内部の動き堪能する。
「はぁ、…はぁ、はぁ」
なるみが少しずつ落ち着いていく。

「今日は簡単には、許さないよ…」

細川はなるみに囁いた。
「えっ…」
なるみは薄目を開けて彼を見た。
細川もまた、いやらしい表情をしていた。
彼は突き刺したままの自分自身を、彼女の子宮の入り口にグリグリと当てた。
「あぁぁんっ!だ、…ダメっ、ま、まだっ…」
嫌がるなるみの腰を細川は持ち上げ、その部分にしっかりとペニスを擦りつける。
なるみが弱いことは分かっていた。
「あぁぁっ!、イヤっ、…だめぇっ、だ、だめ…あぁっ!」
なるみは首を振る。
体中に残っている快感が、またその部分に集まってきてしまう。
それは辛いほどに。

細川は久しぶりに自分のテクニックをなるみにぶつけてみたくなっていた。
最近は穏やかなセックスで満足していたのだが、今日は徹底的になるみを可愛がりたくなっていた。
なるみの全身からは力が抜け、人形のように細川の行為を受けとめていた。
快感に眉を潜め、ただ1点だけに力が入っている。
細川は快感に歪むなるみの姿も愛しいと思った。
彼女の体は熱くなり、白い肌は更に柔らかさを増していく。
彼は一旦自分のモノを抜き、なるみの体を裏返す。
なるみは細川にされるがままだった。促されるまま、両膝をつく。
(細川さん……あぁ……)
なるみ自身も、彼に自分の体をもてあそばれるのは嬉しかった。
「ひゃぁうぅぅんっ!」
なるみはいやらしい声をあげてしまった。
突如細川が入ってきたのだ。
後背位はなるみの性器全体を刺激し、下半身が蕩けそうな快感を彼女に与える。細川は女を抱きなれた潤滑な動きで、的確になるみが感じるところを責めた。
「あぅ、…あっ、はぅっ…、うあぁぁぁっ」
(もう、やぁんっ…あぁん)
なるみは次第に何も考えられなくなっていく。
ただでさえ敏感な身体が、彼の絶妙な技で更に感度の度合いを増してしまう。
なるみはシーツを掴む。
枕に顔を埋めて声を堪えた。
腰はしっかりと細川に抑えられ、ただ自分自身の中心で彼の動きを受け止めるだけだった。
彼の体と自分の体がぶつかり合う音が響く。

(そんなに突かれたら…こ、こわれちゃう……)

細川はなるみを感じさせつつも、自分自身をコントロールしていた。
彼女を溺れさせつつ、自身は冷静に保っていた。
「あ、…あ、…あ、あ、あっ…」
実際になるみの中は凄かった。
しかし細川は堪える。
そして更に責めた。
「ダメ!ダメっ!!…あ、あ…もぅ、あっ」

(またいっちゃう…イヤ…いやぁ…)

なるみは細川がまだ達していないのに、自分が再び絶頂を迎えてしまうのがイヤだった。
「いやぁっ…あぁぁぁっ…」
細川はなるみが達しそうになるのを充分に理解しながら、彼女の乳房を掴んで上半身を持ち上げた。
「んあぁぁっ!」
なるみは持ち上げられて体重が下半身にかかり、彼のものが更に自分自身を突き刺してしまう。
細川はなるみの乳房も愛撫した。
「あぅ、…あっ、あ、あぁ」
彼はなるみを突き立てる動きを止めなかった。
「ああっ!…はぁぁ、あん、イヤっ…だ、だめぇ」
(もうだめ…ガマンできない…細川さんっ)
「あああんー!うあああっ!」
細川に体を預け、なるみはまたイかされてしまった。


二度目になるみが達している間も、細川は彼女からペニスを抜かなかった。
持ち上げられたままのなるみの体重が、彼の胸にかかる。なるみの膝が震えているのを感じる。
細川はなるみの体をそっとベッドに落とすと、自分を差し込んだままなるみの体をひっくり返した。
力が抜けてぐったりとしたなるみを、後ろからそっと抱きしめる。
なるみの荒い息遣いはまだ続いていた。
「はぁ、…はぁ、はぁ…はぁ」
細川はなるみのうなじにキスした。
「ほ、…ほそかわ、さんっ…」
なるみが声を振り絞る。
彼は黙ったままうなじへのキスを続けた。
「まだ、…いってないの……?」
なるみは初めて細川に抱かれた日のことを思い出していた。
その時も自分ばかり何度もイカされたのだった。
「抜いてもいい…?」
動きがとれないなるみは細川に言った。
「だめだ…なるみがそのまま上に来て」
なるみは言われるがまま、抜けないように体勢を立て直して細川の上に跨ってそのまま体を落とした。自然に抱きしめあう形になる。
「あたしの体……あんまり気持ちよくない?」
なるみは自分の中で少し力を無くした彼の存在を感じていた。
上になって、体の中の液体がたくさん零れてきたが、それは全てなるみが出したものだ。
細川は不安そうに見つめてくるなるみがいじらしくて、可愛くてたまらなくなる。
なるみの首筋を撫でると、彼女はくすぐったそうに首を震わせた。

「よくないわけ、…ないだろう?」

細川は懸命に堪えていたのだ。
その最中、少しでも気を緩めると、簡単に放出してしまいそうだったというのに。
彼はなるみを見つめた。
その優しい眼差しを見て、なるみはキュンとなってしまう。
(あぁん、…好き…もう…)
細川はなるみの中がキュっと締まったのが分かった。
まるで彼女の心の動きを、体で感じられるようだった。
彼はなるみの髪を触った。その手に彼女の手が重なる。
その指は微かに震えていた。
「あたしは…」
そう言ったなるみの瞳が潤む。その姿は怪しく色っぽかった。
「こうして…細川さんと繋がってるだけで…感じちゃう…」
吐息とともに、なるみが言った。
「なるみ…」
「…すごく…いいの……細川さんが…」
なるみもまた、体内の彼が固くなっていくのを感じた。
「はぁ…ん、もぅっ…」
なるみの眉間にシワが入る。
細川は自分も腰を引きながら、なるみの腰に手を当て少し浮かせる。
そして自分の動きと一緒になるみの腰を自分へと引き寄せて奥まで挿入した。
「あぁんっ…」
なるみは全身から力が抜けていくのを実感していた。
(どろどろになってしまいそう…)
またすぐに達してしまいそうな予感がしていた。
感じ易い自分の体が、少し情けなくなる。

細川はなるみを抱きしめ、繋がったまま上下の位置を入れ替えた。
なるみの脚を持ち上げる。
彼女からも見えるように大きく開いて、そして少しずつ自分のモノを引いていく。
(やぁん……)
なるみは二人の繋がった部分を見た。
静かに自分の中から少しずつ出て行く彼のものに、沢山の粘液が絡んでいた。
「ふぁ…」
なるみは下唇を噛んだ。
ゆっくりとしたその動きですら、なるみにとっては官能だった。
「オレも、すごく…いいよ…」
細川はそう言うと、再びなるみへと入る。
ゆっくりと、液体の絡んだ色の濃い肉の塊が、なるみの赤い裂け目へと呑み込まれて行く。
自分の中に入っていく彼のモノを見て、なるみの興奮は更に高まってしまう。
細川はなるみに自分の脚を持たせた。
自身のモノを出し入れしながら、空いた手でなるみのクリトリスに触れた。
「はんっ!」
なるみの体が大きく震える。
彼は二本の指で優しくなるみの粒を愛撫した。
その粒はすでに大きくなっていて、細川は円を描くように丁寧にそれを触った。
「あぁぁぁぁっ……」
何度も達して敏感になっている体は、その甘い愛撫に耐え様もなかった。
彼の指は焦らすように優しく、そしてなるみに入った彼のモノもゆっくりと出たり入ったりしていた。
「ひ…ん、あっ、あぁぁぁ…」

(あたし…もう…おかしくなりそう…あぁぁん)

ふしゅっ、ぷぷっ…
なるみの性器は音を立てながら愛液を吐き出してしまう。
なるみが達しないギリギリの刺激で、細川は愛撫を繰り返した。
今までこうして何人の女が彼の下で泣いたことだろう。
しかし細川にとってなるみは特別以上だった。
なるみは左右に首を振りながら、快感の声を漏らしつづけていた。
細川は焦らされた快楽で苦しそうななるみにそっとキスした。
「んんん…」
唇が重なり、舌がもつれあう。
彼は愛撫の手を緩めなかった。
なるみの中が更に締まる。そして複雑な動きをして細川のモノに絡みついく。
「やぁっ……イヤぁっ…あぁうっ……っちゃうよ」
「んん?」
細川はなるみの耳元で息を吐いた。
(すごいな…なるみの中は……)
目を開けてなるみを見ると、歪んだ顔さえ愛らしかった。
そしてそうさせているのは自分なのだと思うと、細川は高ぶらずに入られない。
ゆっくりとなるみに出し入れしていた。
肉の粒も優しく愛撫し続けていた。
なるみの体が一瞬固くなる。
「うあ、い…いっちゃうっ…イヤ、…いやっ、ガマン、…するっ…」
なるみが一層辛そうな顔をした。
「ガマンなんて、しなくていい…」
「イヤ、…いやっ…くっ、…んんっ」
細川は粒を触っていた指先に少し力を入れた。
「う、あぁぁ!」
なるみの背中が一瞬仰け反るが、すぐに首を振ってイヤイヤをする。
「だめぇっ、…細川さんっ、うぅっ…いやっ…」
「何度でも、…イかせてやるよ…。何度でも…」
細川はなるみに囁いた。なるみは細川の肩を両手で掴む。

「ダ、だめっ、…ほ、細川さんも、一緒にっ…うぅんっ」

懸命ななるみの様子に、細川も折れた。
なるみの体を起こして自分の上に跨らせ、抱きしめながら下から突いた。
「あっ、あっ…あぁぁっ…」
なるみは気を許したらすぐにでも達してしまいそうだった。
彼から溢れてくるこの快感が嬉しくてまた涙が流れる。
さっきからゆるゆるの刺激を与えられて体はもう変になりそうだった。
「んあぁぁ、……も、だめっ、…はぁぁぁんっ、
ほ、細川さんっ…、いこっ、…い、…一緒にっ、…うぅっ…」
なるみの体内は複雑に動き、細川もそれに同調するように快感を貪った。

「きゃぁっ、…あ…!あああ!ううあああああんんっ!」

細川は加減なくなるみを突いた。
彼女の一番深いところで、彼は射精した。
なるみは強い快感に飲まれ、真っ白になった。



なるみは眠ってしまい、旗田の電話で起こされた。
「行ってくるね」
細川にキスして部屋を出た。
久しぶりに激しく愛し合い、体中にまだ痺れるような甘さを残したままだった。
なるみは旗田の車に乗り込む。
旗田はなるみと細川の関係を知っている。
彼はなるみから出るむせるような女のオーラを感じていた。
今日はいい写真が撮れるだろうと思った。

なるみは今朝、細川に言われたことに実感を感じられないまま、仕事場へ向かう旗田の車の中でまた眠ってしまった。
 

   

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