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キスが止まらない
 
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6.元春の気持ち

「あーあ、オレ、ホントにやべーわ…」

ひよりがオレによく言うみたいに、オレは本当にバカになったんじゃないかと思う。
頭のどっか、思考の大事な部分に、ひよりから与えられる快楽が理性を超えて入って来ている。
最近は、あいつといる時間、オレの脳のほとんどがそれになってる気がする。
要するに何も考えられないんだ。
何だかマジでヤバイ。

「こんな時期に球技大会なんてやるなよって思うよな」
新太は最近髪を短くして、黒に戻した。
少しフワっと流せるようにパーマをかけている。
こいつは髪の色に関係無く、チャラい。
「そうだよな」
オレは頷いた。
10月が終わるというのに、今日は結構暑い。
球技大会は1日だけの行事で、少し前の体育の授業で練習するぐらいで、特にする準備もなく、熱くなっているクラスとそうでないクラスの温度差が激しい。
うちのクラスはその温度の低い方だった。

「特進クラスは今年もヤル気じゃん」
オレたちは体育館の端に陣取り、次の試合を待っていた。
不思議なもので、勉強のできる奴らはなぜか運動もできる奴が多い。
しかし特進の女子の方はヤル気が無さそうで、男子の試合をぬるい目で見ていた。
オレはその中にひよりを見つけた。

体育館の中は外よりももっと暑かったから、ジャージを着ているやつはほとんどいない。
ひよりもそうだった。
(あいつ、胸があるんだよな…)
遠目なのをいい事に、オレはTシャツ姿のひよりをガン見した。
痩せている方ではないし、太っているわけでもない。
ちょっとぽっちゃり寄りの普通。
でも肌は真っ白で、めちゃくちゃ柔らかそう。
そしておそらく巨乳だ。
(触りてー…)
いつもオレばっかりだった。
オレは全裸になってるのに、あいつは全く服を脱がない。
オレは色んなとこ触られたり、すげー恥ずかしいところを舐められたりしてるのに、あいつにまともに触れた事もない。あいつの肌に関しては全くだ。
(あ、やべ…)
視野にあいつが入ってるだけで、勃ってくる。


球技大会は予想通り、うちのクラスのチームは特に見せ場もなく終わった。
帰りの電車で、オレは携帯を開く。
『たまにはオレにもやらせろ』
ひよりに怒られそうなメッセージを打って、飛ばす。
あいつに言われた事が結局オレの背中を押して、オレは彼女と別れた。
もう今にも切れそうだったから、きっかけになっただけで、ひよりのせいで別れたわけじゃない。
オレ自身、もうひよりの事ばっかりで、彼女に魅力を感じなくなっていた。
(オレって、ひよりの事好きなのか…?)
携帯が鳴る。

ひよりからメッセージが返ってきた。
『いやだ』

(くっそ、ムカつく…)
愛想のかけらもない3文字を見て、まあ予想通りだなと思う。
ひよりの事が好きかどうかは別にしても、ひよりとするキスは好きだ。
これは間違いない。
キスがあまりに気持ち良すぎて、オレはいつもフワフワしてしまう。
そしてあいつの強引なペースに引きずり込まれる。
そうなったら、もうダメだった。
あいつの唇が触る、オレの体の全部の場所が気持ちいい。
オレは特に感じやすい方じゃないと思う、多分、至って普通だ。
少なくとも、これまではそうだった。

『明日、オレんち来いよ』
球技大会の翌日は、何か適当な名前の付いた休日になる。
それがせめてもの、大して盛り上がらない球技大会のメリットだった。
ひよりからの返事は、その日の遅くまで無かった。
あいつは気まぐれだからとあきらめていた時に、返信が来た。
『うちに来るならいいよ。誰もいないし』
その言葉を聞いて、オレは舞い上がる。
本当に、今まで女の子と付き合っていても、こんなに心から上がる事ってほとんど無かったんじゃないか。

(やっぱ、好きなのかな、オレ…)

改めて、自分に恋愛経験が無いと思った。
女と付き合ってヤル事はヤッても、オレから付き合って欲しいと言った事がそもそもないし、どうもピンと来ない。
中学の時の、年上の彼女の時にちょっと盛り上がって、その勢いでひよりとキスして…。
ひよりとのキスが良すぎて、オレはその後付き合った女にハマれなくなった。
ひよりが触る手がヤらしすぎて、多分セックスするよりもひよりがするあれが良かった。
(ああ…なんか納得…)
ひよりのせいなんだ、多分。
(でもあいつ、オレの彼女になんか、絶対なってくれなさそー…)
そもそも、オレはあいつを彼女にしたいのか?
(わかんねえ)

それでも、明日オレはひよりの部屋に行く。
明日は結構時間があるし、できることなら…とオレの期待は高まる。
でも何か嫌な予感もするんだよな。

 

   

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