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心に薔薇の赤、両手に棘を
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4.バイブレーター

泉は、男女の付き合いが分からなくなっていた。
(好きなもの同士が、デートしたり、キスしたり、エッチしたり…でもそれだったら、今の関係は…何?)
たまたま彼ら二人と付き合っているだけ……。
二股かけているのと、一緒じゃないの…?

決定的に普通と違うのは、3人でセックスをしていることだ。

泉は次第に彼らに惹かれていた。
特に、トオル……。
もしトオルと二人きりで普通に付き合えたらと、泉は考える。
しかしアキラと別れてしまうのも、今となっては辛かった。

(あたし……変だよね)

きっと、トオルの方がアキラよりも好きなんだと思う。
それでも3人で会うあの行為も捨てられない。

トオルは泉に「好きだよ」と、頻繁に言う。
アキラは絶対にそういうことは言わなかった。

いつも帰りに送ってくれるのはアキラだったが、彼はあまり長い話が好きではないようだった。
トオルとは違ってとっつきにくい雰囲気なのだが、時々笑いかけてくる表情にはハっとする程の輝きを感じてしまう。
そんな秘められたアキラの魅力にいつか呑まれてしまいそうで、彼に対しては本能的に泉は心のどこかで警戒していた。


「これ、見た事ある?」
トオルが手に持っていたのは、男性の形をした白いバイブレーターだった。
「や…こわい……」
見たこともない玩具に、泉は身構える。
「大丈夫だよ。泉は感じやすいんだから」
裸のままで座った形で、後ろからアキラに抱きかかえられた。
そのまま、両脚をアキラに掴まれる。
「やん……。こんな姿勢…恥ずかしいよ……や…アキラ…」
M字に開かれ、泉の恥ずかしい部分は丸見えになった。

「泉ちゃんの穴の奥までよく知ってるんだから、今更平気でしょ」
トオルが泉の開かれた部分を見ながら言った。
「いやあ……」
その通りなのだが、改めてこうされるととても恥ずかしくなってしまう。
アキラが泉のうなじにキスした。
「あ…ん……」
「泉…」
囁きとともに、アキラが耳をかじる。
「んん……」

トオルがバイブのスイッチを入れた。

「や……だめ……」
泉は体を動かそうとしたが、アキラに後ろからしっかりと抑えられていた。
「きっと泣いて悦ぶよ…。泉ちゃん…」
意地悪な笑顔をトオルは浮べた。

ヴィーンンン……

バイブの先が泉のクリトリスに当てられる。
「はっ……あうっ…」
冷たい感触に、泉の体が大きくビクンと動いた。
「あ…はああ……んんん…」
指や舌でされるのとは比べられない程の、強い振動が泉の敏感なところを襲う。

「きゃ…ああああ…や、…あ…」

「こんなのまだ弱い方だよ」
トオルはスイッチを少し上げた。
泉に伝わる振動も強くなる。
「あ、あ、あああ……あああんんん…」
アキラに両脚を動かないようにされているので、泉はますます感じやすくなってしまっていた。

(ああん…バイブって、こんなに感じちゃうんだ……)

泉は戸惑っていたが、体は既に新しい刺激を欲していた。
「やあ…あうううん…はうう……」
その場所に規則的に振動を繰り返され、泉は腰まで震えてくる。
(いやあん……我慢できない…)

「はっ、はあ…あああ……アキラっ…、はあん…キス、…して」

アキラは脚を離し後ろから泉を抱きかかえると、首を伸ばして彼女にキスした。
「んんんっ……」
ふさがれた唇から声がもれてしまう。
トオルは泉の陰唇をめくりながら、亀裂の間全体に振動が伝わるように幅広く押し付けた。
「きゃっ、…あうう…」
(気持ちいい…よすぎちゃう…あん…)
泉の体がガクガクと震えた。
まだ何も入ってきていないというのに、ドロリと愛液が零れ落ちる。

(泉ちゃん、こういうの、本当に好きなんだな…)
トオルはニヤリとしながら、少しだけスイッチを上げた。
(すげえ、…ローション使ってるみたいだ)
バイブレーターは泉の出した液で滑りながら、彼女の襞全体をぶるぶると震わせている。

「はっ、ああんん…だめ……も、だめ……」

(すごいっ…もお…感じちゃう……だめえ…)
バイブレーターを当てられてまだほんの少ししか経っていないというのに、もう泉の体は達してしまいそうにだった。
アキラが後ろから泉の乳房をもてあそぶ。
ゆるゆると、柔らかい乳房を上下に揺さぶった。

「あうっ、…はあ…う、…ううう……」

アキラが泉の唇を舐める。
泉は背後から抱きしめられているので、すっかりアキラに体を預けてしまっていた。
アキラに乳房を愛撫されキスされている間にも、容赦なく玩具の振動はそこへ伝わってくる。
「あっ…!」
部分的に起きていた快感が全身に押し寄せると、泉はあっという間にその波に呑まれてしまう。

「んああっ!は、あああんっ!」

泉の背中に力が入り、体がビクビクと動いた。
ガクンと力が抜け、背中ごとアキラの胸へ崩れる。
「……もしかして…もうイっちゃったの?」
トオルは本当に驚いて、まだ動いたままのバイブを泉の体から離した。
「イク時はちゃんと言わないとだめだろ」
アキラが背中から手を伸ばし、泉の乳首をギュっと摘んだ。
「はあはあ……だって……はあ……あん」

「まだ許さないよ」

トオルはまだ放心状態の泉の脚を、改めて開く。
既に一度達した入り口は、液体に溢れベッタリとそのまわりを汚している。
愛液にまみれたそのピンク色の唇に、バイブレーターをゆっくりと差し込んでいった。

「んあああぁぁぁっ……」

泉の達した体の中に、男性のではないそれが入ってくる。
(ダメ……ああっ…)
しかし泉の体は簡単にそれを呑み込んでいく。
乳首はアキラに両手で遊ばれていた。
(動かさなくても…入っているだけで、感じちゃうのに…)
「はあっ、…ああ…あああ……」
トオルはバイブレーターの外に突き出ている部分がクリトリスに当たるように位置をずらした。
「泉ちゃんの乱れるところをたっぷり見せてもらうよ…」
そう言って、今度は二つのスイッチをいれた。

「ああっ!!…はあんっ、あんっ、あん、あん!」

(やああ…すごい……だめっ…ああん)

達したばかりの泉の突起に先ほどより強い衝撃が与えられる。
「これをすると、大体の女の子はイチコロ」
トオルがアキラを見ながら笑った。
「感じ易い泉ちゃんの反応が楽しみだ」
そしてしっかりと泉の奥に当たるまで深く、玩具を刺した。
バイブは奥で首を振りながら先端を回転させる。
それと同時に膣の入り口のあたりを刺激する目的で玩具の中に仕込まれた粒が、ガリガリと回る。
(ああ……ああ…ああ…)
それだけではなく、外側に突起した部分は泉のクリトリスをブルブルと震わせた。
トオルは絶妙な角度で、泉の感じる部分にそれら全てが当たるように玩具を操作した。
「ああっ、ああっ、…ああ、ああっ…!」
時折泉の体がビクンと大きく動く。
愛らしい顔が快感に歪む。
既に我を忘れた泉の口元からは涎が流れていた。
脚を開き恥ずかしい部分を晒し、その口で玩具を咥えている姿態は妖艶だった。
「すげえ……すごい色っぽいよ…泉ちゃん」
ゴクンと喉を鳴らしながら、トオルは思わず呟いていた。
彼も泉を見て、興奮していた。

後ろで泉の体重を支えているアキラにはハッキリ分かる程に、泉の体はビクンビクンと震えていた。
その震えは、泉の快楽の波に合わせ次第に大きくなっていく。
「やっ、あ、…ああ、…はあっ、…」
泉の体内に力が入って、バイブがすぐに押し出されてしまう。
「すごい力で、押し出されてくるんだけど」
トオルは出てこようとするバイブを押し戻す。
(これだけ力があれば……泉ちゃんの中は気持ちいいはずだよな)
玩具を自分のペニスとダブらせて想像し、トオルは泉に入れたくてたまらなくなる。

「やああっ、はああっ、…あ、あ、ああっ…」

今までに感じたことのない感覚だった。
泉はもう、どこで感じているのか分からなくなっていた。
下半身全部が性器となり、機械的な振動をただ受け入れる。
それは激しすぎる快感を引き起こし、泉は自分の中からあらゆる液体が出ていってしまいそうな錯覚に陥る。
体の中から痙攣のような振動が起きていた。
それが玩具からのものなのか、自分自身がそうなってしまっているのかも分からない。
自分を見失ってしまいそうだ。
尋常でない程の大量の愛液が玩具を白濁させていた。

泉の陰唇はヒクヒクと動き、バイブとともに振動している。
汗でびしょびしょになりながら、泉はアキラの手をぎゅっと握っていた。

「あう、あう、…あっ、あうっ…あうんっ、うんっ…」

今までに二人が聞いたことのないようなエッチな声を、泉は出していた。
(すげえエロい、泉ちゃん……)
トオルは自らももう我慢できず、バイブのスイッチを最強に入れた。

「ひゃぅんっ、ああっ!だめえっ!あうっ!あうぅっ!」

泉はもう自分を抑えられない。
手と足の指先まで電気ショックを与えられて、下半身を切り落とされてしまうんじゃないかと思った。
玩具の振動で体がバラバラにされてしまう。
頭の中が真っ白になり、考えることができなくなっていく。

(あたし……もうダメ……死んじゃうっ…)

出てこないように、トオルがバイブをしっかりと抑える。
トオルの体まで、泉のそこから出た液体が飛び散った。

「んんんああああっ!」


叫びながら、泉はアキラの方へ大きく頭をそらした。
持ち上がった体から、全身の力が抜け落ちていく。
―――― 泉は失神した。



「おい、バイブで気絶しちゃったぜ」
アキラは驚愕して言った。
「………潮吹かれた」
玩具を持つトオルの腕はビッショリと濡れ、胸の方まで飛沫が飛んでいた。
トオルはスイッチを止め、気を失っている泉の中からバイブを抜いた。
ドボっと固まりになって、泉の性器から液体が落ちてくる。
シーツにも泉の出した愛液で、大きな染みができていた。
抜いた後も、泉の入り口はヒクついて小さく震えていた。
「たまんねー。いやらしー」
トオルは指を、その泉の中に入れてみる。
「なんかまだ動いてるぜ。……入れてぇー」
自分のものを失神した泉に入れようとしているトオルに、アキラは言った。
「やめとけよ、痙攣してるかもしれないぜ。…抜けなくなったらどうすんだよ」
アキラは泉の体をトオルから遠ざけると、そっとベットに寝かした。
「気がつくまで、寝かせとこうぜ。…おまえはケモノか」
泉に毛布をかけながら、呆れてトオルに言った。
そんなアキラの様子を気にもせず、トオルは感嘆しながら言った。

「それにしても、予想以上にすごい感度だなあ。…オレ泉ちゃんがますます気にいったよ」
「…そうだな」
アキラは汗だくの泉の額についている髪を、指でそっと分けながら答えた。



泉はベットの上で気がついた。
どれくらい眠っていたのだろう。
「あ……」

「やっと目が覚めた?」

アキラが横のソファーで本を読んでいた。
「あたし…?」
自分に何が起きたのか分からなかった。
体中汗をかいたのか、べたべたしている。
横に置いてあったトオルの長いパーカーを着て、アキラのソファーの方へ行った。
「なんか飲む?」
アキラが言った。
そういえばノドがからからだった。
「うん…。何でもいい…ゴクゴク飲めるものがいいな…」
泉はソファーに腰かけた。
アキラは立ち、飲み物を取りに行く。
机には、今までアキラが読んでいた本が置いてある。
医学関係の難しい本だった。
「こんなムズカシイの…読んでるんだ」
「あー、…しょうがないからな。でもすげー眠くなる」
トオルもアキラも、医者を目指しているというのは以前聞いたことがある。
しかし泉は二人が普段どういう生活をしているのかはよく知らなかった。
「ミネラルウォーター、このままでいいか?」
「うん、ありがとう」
ペットボトルをアキラから受け取る。
アキラは泉の隣に座った。
水を飲んでみて、すごくノドが渇いていたんだと泉は実感した。

「あたし…どうしたんだっけ?」
「……覚えてないの?」
アキラはタバコを取り出した。
「うん……。もしかして……何か変なこと…した?」
「アレ見ても……思い出せない?」
アキラがキッチンを間仕切っているカウンターの上を指差す。

そこには、バイブレーターが無造作に置かれていた。

「………」
泉の顔がみるみる赤くなっていく。
「思い出した?」
ニヤニヤとアキラが泉を眺めた。
「……でも、……やっぱりあんまり覚えていない」

「失神したんだよ」

「え?」
「気を失ったの。泉」
「え?なんで?どうしてあたしが…気を失ったの?」
泉は訳が分からなかった。
(どうして…失神?)
ポカンとしている泉に、アキラは笑って言った。
「相当、気持ち良かったんだろ?」
「…………」
(すごく気持ちがよかったのは…何となく覚えてるけど…うそ……?)
「うそ…みたい……。あたし…でも…全然覚えてない…」
「ホントか?泉、すっげーーーエロかったぜ」
アキラはちょっと驚いて、泉をまじまじと見た。
そう言われて、泉は真っ赤になってしまう。

「ごめん……」
泉はしゅんとして下を向いた。
「え?なんであやまってんの?」
「だって……なんかしたんでしょ?あたし……」
不安そうにしている泉に、アキラは笑いながら答えた。
「なんもしてねーよ。ただ、相当感じまくってただけでさ」
(泉のこういうところが、可愛いんだよな…)
アキラは可笑しくて仕方がない。
「そうそう、泉、潮吹いてたぜ。トオルのこと、すげえ汚してた」
(潮……?)
泉は耳まで赤くなってしまう。
そう言われても記憶になかった。
「…ヤダ…あたし……恥ずかしい……」

「…………感じやすいんだな。泉」
アキラは真顔に戻って、泉の髪を撫でる。
「……」
泉は恥ずかしくて、アキラの方を見れなかった。
「……そういえば、トオルは?」
改めて部屋を見回し、ずっとトオルがいない事を不審に思う。
「飲みもん買いに行ってる」
アキラはタバコに火を点ける。
泉は溜息をつき、ソファーに背中を押し付けて体を沈めた。
「……何だかすごい疲れちゃった…今日はもう帰りたい…」
「…帰る?……」
トオルの事が気になって、アキラは言った。
煙をゆっくりと吐き出し、少し笑顔になる。
「……まあ、トオルはいっか。
それより、泉シャワー浴びたほうがいいんじゃないの?…出てきたら、送ってやるよ」
「ごめん。そうする…」

シャワーを浴び、泉は自分の体が思っていたよりずっと汚れている事に気づいた。
体の色々な所が、ベタベタとしていた。
(こんなに、出しちゃったの…?あたしが……?)

シャワーから出ると、トオルは帰ってきていた。
「もう帰るの?泉ちゃん」
「うん…。ごめん……色々と…」
トオルを汚した、とアキラに聞いていたので恥ずかしくて泉はトオルを直視できない。
「すごいいきまくってたから、体力消耗したんじゃん?」
トオルは泉の顔を覗き込んで言った。
「…もう……」
泉は顔をそむける。
アキラが右手に引っ掛けた鍵をブラブラさせて、立ちあがった。
「じゃ、行こっか」


「アキラ……。あたしのこと、どう思う?」

「は?」
運転しながらアキラはちらっと泉を見る。
泉の意図するところが分からなかった。

泉は大きく溜息をつく。
車内は、甘いムスクの香りがした。
アキラからも、時々この匂いがする。
「あたしって、すごい淫乱だよね……?」
「あー、そういう意味ね…。んー…たぶん大体の女はみんな淫乱だぜ…。泉はマシな方」
アキラはちょっと笑って答えた。

(そう言われても…全然気が楽にならないよ…)
泉はアキラを見ながら思う。

「淫乱というか…。ただ、感じやすいんじゃないの?」
ハンドルを握って前を見たまま、アキラは答えた。
「そうなの…?わたし…他の女の子のことなんか、分からないもん」
「女同士って、そういう話しないの?」
「あんまりそういう具体的な話は、しないよ……」
「へー、そういうもんなんだ…」
信号待ちで車が停車する。
アキラは泉の方を見た。
泉もアキラを見つめる。

彼はきれいな二重の眼をしていた。
今まで何となく気になっていた事を、泉はアキラに言ってみる。
「アキラって…、一体今まで何人くらいの女の子と経験があるの?」
「…………。分かんねえよ…。数えてないもん」
「50人くらいとか?」
「……少なく数えても、多分その倍はあるな…」
「うそ…」
思わず泉は絶句してしまう。
信号が青に変わり、アキラは車を発進させた。
「でも、トオルはオレ以上だぜ、間違いなく」
「ふうん…なんか、やっぱり二人ともすごいね……」
「オレはここ半年くらいは、あんまりないぜ」
「ふーん…」
(その、”あんまり”ってどのくらいなのよ…)
もはや泉の想像を絶していた。
「前はナンパばっかりしてたしな。
1ヶ月10人とやったとしても、1年で120人…そう考えると改めてすげえな…。
トオルの部屋で何人も女の子呼んで……って事もあったし…。
でもさあ、ヤラしてくれる女の子って世の中にはそれだけいるんだぜ?」
自分のことながら、口に出してアキラは辟易してしまう。
「……だって、男前だもん。アキラ」
「あー、そ?泉に言われるなんて、超嬉しー」
アキラは髪をかきあげながら笑った。
「トオルと二人だったら、断る子の方が少ないと思うよ」

「でも泉は、クールだったぜ」
「ええ…?クールって、何…?」
意味が分からず、泉は口篭もった。
「何て言うか、毅然としてたっていうか…普通にアプローチしても全然落ちないっていうか…」
そう言うと、アキラの手が泉の膝へ伸びた。

「……これ、俺らの憧れだったんだぜ。…い、ず、み、ちゃ、ん」

ぽんぽんと泉の膝を叩く。
泉が見つめると、ニヤニヤしていたアキラが少しマジメな表情に戻る。
そんな彼の変化に、なぜか泉の心はザワザワしてくる。

アキラは前方に視線を戻して、黙って車を走らせた。

 

   

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