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言いなり学園
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9.支配

「謙介、これこの前話してた本」
「悪いな、松庭」
謙介は耀から英文の本を受け取る。
家庭教師をびっしり付けて多言語を学んでいる謙介は、帰国子女の耀と最近よく話をしている。

(意外だな…あの2人)
楓香は遠くから2人を見て思った。
話しかけにくいタイプの楓香と違って、耀は誰にでもオープンに接している。
そのため、蒼組の中でも自然と人が集まっていた。
楓香はクラスでは耀ぐらいしか話をしないため、彼が他の生徒と話している間はほとんど1人だ。
入れ替わりの激しいこの教室で1人でいる事に慣れているので、楓香はそれを特に苦にしているわけではない。
楓香だけでなく、この教室の特質上、休み時間に自分の席についたままの生徒は他にも何名もいた。

謙介は耀と談笑している。
普段教室にいる謙介は、騒いだりしないものの、他の生徒から慕われてよく話しかけられていた。
そんな時の彼は、持ち合わせた人当りの良さで、うまくやっていた。

耀が謙介と話している事で、楓香は少し気が緩んでいた。
じっと見つめてしまい、耀が楓香に気付く。
耀は楓香に笑顔を見せると、楓香もそれに応える。
(じっと見てたの、バレたかな…)
楓香は見ていた雑誌に目を戻した。

「楓香って、すごく可愛いと思わない?」
耀の問いかけに、謙介はチラリと楓香を見た。
席についていて、雑誌を見ながら携帯をいじっている。
「見た目はとび抜けてるかもな」
意外と素直に答えた謙介に、耀は少し驚く。
「へー、謙介もちゃんと女の子見てるじゃん。ぶっちゃけ、どう?楓香って謙介の好み?」
(こいつ…)
謙介は一瞬間を置き、答えた。
「好みだよ」
「えー、マジで?謙介ってもっと清楚なタイプが好きなのかと思ってた」
「オレ面食いだから」
謙介はわざとそう言い、その後の耀の言葉も適当に受け流した。

(こいつ、わざと聞いたな…)
耀は一見、懐っこくて人を警戒させないように見えるが、彼の並外れた聡明さを謙介はすぐに見抜いていた。
計算高いタイプじゃない、本能的に計算の早い男だと、謙介は思っていた。
(オレに『興味が無い』とか、否定的な言葉を期待してたんだろうな)
謙介も気付いていた。耀は明らかに楓香を狙っていた。
耀が楓香に対して本気なのかどうかは微妙だと思っていたが、彼の自尊心のために楓香を狙っているのはよく分かった。
(友達のフリして近づいてんじゃねーよ…)
耀の見え見えの下心が、謙介の気に障っていた。

「楓香、何してんの?」
耀は自分の前の席にいる楓香に声をかける。
「雑誌チェック。今度服見に行く時の参考~」
楓香は耀の方へ、体の向きを変える。
「あ、その服すごい可愛い。めっちゃ楓香に似合いそう」
雑誌に載っている、白でまとめたスタイルを耀は指差した。
「ホント?これいいなって思ってたの」
「こっちは陽菜って感じかな。元気な感じで」
「あー、分かる!そうだね」
楓香と耀のやり取りを、近くの席の男子たちがチラチラと見ていた。
話しかける事ができないだけで、男子たちは皆楓香に近づきたいと思っていた。
そのハードルを簡単に超えてしまう耀を、皆羨望の眼差しで見る。

「ねえ、楓香」
耀の声が小さくなる。
「何?」
急に聞こえにくくなったので、楓香はとっさに耀へ近づいてしまう。

「……謙介の事、好きでしょう?」

ささやき声で突然そう言われ、楓香はスっと血の気が引いてしまう。
思わず冬服の袖をギュっと握った。
(やっぱりバレた…)
以前に『楓香の好きな人が蒼組にいる』と指摘された。
誰か分かるのも時間の問題だと、その時に耀は言っていた。
「なんでそう思うの?」
「だって、そうでしょ?楓香、いつも謙介の事見てるじゃん」
耀は周りに聞こえないぐらいの小さな声だった。
それが楓香にはせめてもの救いだった。
(バレるよね…)
ただでさえ鋭い耀が、ずっと自分の後ろの席にいるのだ。

楓香はため息をついた。
「誰にも言わないでくれる?」
「いいよ。言わない」
「誰にも、だよ?陽菜たちにも、紅組の男子にもだよ」
「分かったよ…。でも1個お願い聞いて」
「何……?」
本能的に警戒して、楓香は体が固くなってしまう。

「1回デートしてよ」
耀は上機嫌の笑顔で、楓香の返事を待っている。
「もう……1回だけだよ」
「やった」
「1回、デートだけだよ?」
楓香は声を絞る。
ひそひそ話す2人を、周りの子が注目しているのに気づいていた。


(耀…、悪い子じゃないんだけど…)
自分の部屋で勉強机の前に座り、楓香は勉強の手を止め今日の事を思い出していた。
耀は謙介と全く違うタイプだ。
耀は快活でよく気が利き、大声で話すし女の子にも平気で声をかけていた。
見た目も対照的で、栗色の髪で明るさをまとったような外見の耀に対し、謙介はいかにも真面目でクールなタイプだった。
対照的過ぎて、耀といる時によく楓香は謙介の事を考えてしまう。
耀が謙介と違う事をするたびに、そのたびに謙介の事を思い出してしまう。
(他の人と一緒に過ごす時間が重なると、余計にケンちゃんに会いたくなるよ…)
もう1カ月以上謙介の部屋には行っていない。
用事も無いので、メールする事もない。
(2人きりで会いたいのは、ケンちゃんだけなのに…)
もし会いたいと言ったなら、謙介は何と答えるだろうか。
(あっさり『おいで』って、言ってくれるかも…)
「でも本当に忙しそうだしなあ…」
意地悪な事を言われても、それでも謙介との接点が切れない事が楓香にとって何よりも大事だった。

(このまま…消えちゃうのかも知れない)

学校からの帰り道を、楓香は1人で歩く。
資料を運ぶ当番に当たってしまい、友人たちは先に帰っていた。
冷えてきた11月の風が頬に刺さる。
(もっと保湿しないと乾燥しちゃう…)
ため息をついて、楓香はマフラーを締め直す。
カバンから小さく携帯の音がした。
「えっ…!」
楓香は思わず声が出てしまう。
謙介からのメールだった。


裏口から呼び鈴を押すと、謙介が鍵を開けにくる。
「久しぶり…ケンちゃん」
「入れよ」
先日生徒会室で弄ばれたものの、謙介の家に来たのはテスト前の9月以来だった。
謙介はグレーのトップスに白いパンツという私服姿だ。
眼鏡越しに、いつもどおりのクールな顔で楓香を見る。
謙介の部屋に通され、楓香は彼がいつも座っている両肘付きの大きなイスに座らされた。
「………」
謙介に促されるまま、違和感を覚えながらも楓香は謙介のイスに浅く腰掛ける。
相変わらず、会話もない。
それでも久しぶりの謙介の匂いに、楓香はドキドキして、なぜか安心する。
楓香は制服のまま、まっすぐにここへ来た。
膝に置いていたカバンを、謙介がベッドへ投げる。

「………」

謙介は楓香を見る。
髪から、肩へ、そして胸へと視線が移る。
楓香の目を見たのは、ほんの一瞬だった。
謙介の手が伸びる。

(…!)
首筋へ伸びた手に、楓香は思わず肩をビクンとさせて反応してしまう。
謙介は楓香の制服のリボンを取り、ゆっくりとボタンを外して行く。
(また何も話さないで…)
緊張で、楓香の呼吸が乱れる。
それとともに、胸が大きく動く。
(何も話さないで、このままエッチな事されちゃうのかな…)
空しさが心の奥を支配しているのに、謙介に触れられる期待が感情を滑る。

焦らすように時間をかけて、謙介は楓香のボタンを1つ1つ丁寧に外し、ゆっくりと前を開いた。
(はあ……)
まだ何もされていないのに、楓香は声をあげてしまいそうになる。
ブラジャーにしっかりと寄せられた胸の谷間が、期待に震える。
謙介が楓香のブラジャーを少しずらしただけで、すぐに乳首が零れてしまった。
(恥ずかしいよ…)
それでも謙介の表情が知りたくて、楓香は顔を上げた。

謙介は楓香を見ていた。
謙介が自分をじっと見ていた事に楓香は少し驚いたが、それでも謙介から目をそらさなかった。

何も言わずに見つめ合った。
それは数秒だったのに、楓香には長い時間に感じられた。
謙介の右手が、楓香の唇に触れる。
楓香はその温もりに応えるように、自然に唇を緩めた。
謙介の中指が、楓香の口を割る。

(ああ……)

楓香の舌を、謙介の指が触った。
「舐めて」
謙介が言った。
楓香は唇を閉じ、謙介の指を舐める。
その舌の動きに合わせて、謙介の指が動く。
絡む楓香の舌に、また謙介の指が動く。
(ああ…ケンちゃん…)
楓香の口に入れた指を、謙介はゆっくりと引いては、また押し込んだ。
挿入を想像させるその動きに、楓香の興奮が高まる。
「んん…」

部屋に夕暮れの日が入り、楓香をオレンジ色に照らした。
髪の端まで夕日の色で輝く楓香を、美しいと謙介は思う。
その唇に、自分の指が入っている。
その指は楓香の唾液にまみれ、それさえ美しい光を放つ。
(綺麗だよ…楓香)
このまま押し倒して、いっそめちゃくちゃにしてしまいたかった。
謙介は軽く首を振り、自嘲するような笑みを一瞬浮かべた。

左手で謙介は器用に、座っている楓香のショーツを脱がしていく。
脱がされた事で、さらに楓香の期待は高まってしまう。

口の指を抜かれ、楓香は謙介に促されるままに自分の膝を手で掴んだ。
謙介に向かって座ったままM字に足を開く。
その膝を抱えるように、自らの手で体へ押しつける。
謙介がスカートをめくってしまうと、楓香のそこは彼に完全に見える格好になった。
子どもの頃から何度も見られているその部分なのに、楓香はいつもとても恥ずかしかった。
「見える?楓香」
謙介の手が、楓香の手の上から彼女の膝を押す。
イスに座っている状態で体が起きているので、視線を下げると楓香から楓香自身のその場所が見えてしまう。
「……うん」
楓香は静かに頷いた。
見えている自分自身の性器は、自分のものでありながら普段全く目にする事は無い。
自分の体の中心にある そこは、何て淫靡なのだろうと楓香は思う。

先程まで楓香の口に入れていた指を、謙介は自分の舌でたっぷりと舐めた。
楓香はそんな謙介を見ているだけで、キスをされているような錯覚に陥る。
謙介の舌が触れる彼の指には、きっと自分の唾液がついているのだろうと楓香は想像する。
謙介の唾液と楓香の唾液が絡んだ彼の指が、そっと楓香へ向かう。

「見て」
楓香の手の上にある謙介の左手に力が入る。
右ひざをグっと体に寄せられ、さらに自身の性器が楓香からも見えてしまう。
「んああぁんっ…!」
謙介のその指が、楓香の中へ入って行く。
久しぶりに入ってきたその感覚に、楓香の腰が動いた。
「だめだ、目を閉じるな」
謙介の言い方は冷静だったが、彼の興奮もまた声に溢れていた。
「あぁ…っ…」
楓香は薄く目を開けて、謙介を見た。
彼の表情に、楓香も興奮してしまう。

「入ってくの、見えるか?」
「ん……。うん…っ」

楓香の肉を割って、謙介の中指がゆっくりと入っていく。
(ああ……いやらしい…)
分かっていた事だが、この情景を目の前にしてしまうとそう実感してしまう。
「う、あ…」
謙介が指を引き、楓香の中からまた彼の指が姿を現す。
その指は楓香の愛液を纏っていた。
(ああ、もう……)
再びゆっくりと入れられていく指。
そして楓香に見せつけるように、謙介はそれを抜いていく。

「ちゃんと見ろよ」
謙介の言葉に、楓香は顔を上げた。
自分自身の膝を掴む手に、無意識に力が入っていた。
謙介は楓香の愛液にまみれた指を、舐めた。
「あ……、ケンちゃん…いや…」
恥ずかしくなり、楓香は思わず足を閉じようとした。
楓香の膝の、彼女の手の上にある謙介の左手がそれを許さない。
愛液をぬぐうように、謙介は自分の指先から付け根までしっかりと舐めている。
(やだ……恥ずかしい)
絶対に何か味がするだろうと、楓香は思う。
こんな格好をしている事よりも、自分のそれを謙介が味わっている事の方がずっと恥ずかしかった。

謙介はその指を、再び楓香の口へ入れた。
「お前も舐めろ」
「んん…」
楓香は先程と匂いの変わった謙介の指を舐めた。
楓香の舌が謙介の指に何度も絡むと、謙介は指を抜き、そのまま楓香の唇を触る。
(もっと、唇に触れて欲しい…)
求める女の顔で、楓香は謙介に視線を投げる。
「はあ…はあ…」
「…これ、入れたいのか」
唇を触っている謙介の指が、楓香の舌に触れた。
「……入れて…」
小さな声で楓香は答えた。


「足、開いてろよ」

謙介の口から楓香の口に入っていた彼の指が、再び楓香を割って入ってくる。
「んぁ……、あぁんっ…」
楓香の顔がゆがむ。
そんな彼女の頬に、謙介は左手で触れる。
親指で楓香の唇をなぞった。

(可愛いな……楓香…)
恥辱と快感に身を任せている楓香の顔を、謙介はじっと見た。
右手の指に、楓香のぬめりと温度を感じる。
指を動かすと、目の前にある楓香の表情が更に歪む。
(キスしたい…)
その衝動を、謙介は抑える。
別にキスをしたって良かったのだ。
ただ、そうしない事で見られる楓香の様が、謙介は好きだった。
自分を求めて苦悶する彼女の姿は、謙介を興奮させた。

謙介は楓香の頬に触れたまま、親指を楓香の口に入れる。
キスを求めるように、楓香は謙介の指を舐めた。
「んんっ……、んっ…」
(やっぱり…気持ちいい……)
謙介の指が自分の上と下に入っている事が、楓香は嬉しかった。
(こんなに恥ずかしいのに…ケンちゃんが好き…)
「あぁっ…」
楓香は自分の膝をグっと掴む。
謙介の指の動きに、腰が動く。

楓香は目を開けて謙介を見た。
自分を見る謙介の目が興奮している事で、楓香も切なくなってしまう。

(もう……私……)
こんな関係でも、謙介のそばにいられるだけで楓香は幸せだった。
「うぅっ……、うあっ…」
報われる事がなくても、謙介にとってただの都合のいい女であっても、それでもいいと思った。

謙介は楓香から一旦指を抜き、床に膝をついて楓香の性器に手を触れた。
濡れた裂け目の、脇をなぞる。
「楓香は感じると、」
「はぁ…はぁっ…」
「この辺が全体的に固くなるよね」
謙介は楓香の毛の生えている、回りの部分を撫でた。
「ここは勿論だけど」
亀裂に指を入れ、少し大きくなった粒を触る。
「あぁんっ…!」
「ここ好きだよね?」
謙介の語尾に力が入る。
楓香の返事を待っているのだ。
「…うん…、好き……」
謙介は肉を広げ、その小さな突起を露出させる。
楓香に見えるように、舌を伸ばしてそこを舐めた。

「あぁっ……!」

自分の足の間に、謙介の顔がある。
その舌先が、楓香の敏感な部分を捉えて、そして愛撫している。
(ああ……ケンちゃん……)
学校で近づく事さえできない彼の事を思い出して、楓香はもっと興奮してしまう。
「もっと、舐めて……いっぱい…」
楓香の上半身の力が抜けていく。
「あぁっ…、あんっ…ん、んんっ…」

謙介は、舌で楓香の粒を舐めながら、そのすぐ下で奥まで入れた指を小刻みに動かす。
彼の唾液と楓香の白い愛液が混ざり、楓香のそこを伝う。

(もう、これでいい……)

楓香の体も心も、謙介から与えられる悦びで支配されていた。

 

   

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