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言いなり学園
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8.転入生

高校最後のクラス編成。
楓香は恐る恐る教室へ入った。
謙介の部屋へと行く口実の無い今、彼と会えるのは学校だけだ。
(あれ…?)
座席の並び方が不自然に変わっている事に気付く。
前期までは5人並んだ席が後ろへと4列続く並び方だった。
(6列…?)
座席は前3列が5人ずつ、その後ろから3人ずつの2列になっていた。

机に貼ったビニールテープに、席の数が書いてある。
クラス編成の最初は、順位別に席に座る事が決まっている。
生徒たちの自尊心を露骨に刺激させるのには、効果覿面だった。
楓香は自分の席を探す。
ほとんどの生徒が先に着席していて、楓香は18のテープが貼られている席へ座った。
(ケンちゃんはまだ来てないな…)
1位の席は、窓際の一番前。楓香の席は4列目の端だ。
教室を見回すと、数名の生徒が入れ替わっている事に気付く。
(蒼組に残れたけれど…もし残れなかったとしても、ケンちゃんはやっぱり私に何も言わなかったかも知れない)
自分が蒼組に残った意味など無かったのではないかと、楓香はふと考える。
ただ同じ教室で彼を見る事ができる、それだけだった。


「今日は転校生を紹介します。松庭 耀(ヨウ)君です」
背の高い男子が教師の言葉に頭を下げて入ってくる。
茶色い髪に日本人離れした顔立ち、その外見だけで人目を引いた。
真面目な優等生ばかりの蒼組では、尚更だった。
「松庭君はアメリカからの帰国子女で、学力テストの結果、このクラスが相当でした。特例ですが、今日からこのクラスは21名になります」
教室が少しザワつく。
前の方に座っている女子達が、転校生を見てヒソヒソ何かを話していた。
(派手な子だな…)
自分の事を棚に上げて、楓香は思った。
教師は転校生に簡単な挨拶をさせると、空いている後ろの席へ座るように促した。
楓香の横を転校生が過ぎて行く。
彼は楓香をじっと見ると、笑顔を向けた。
外国帰りのせいなのか、その一連の流れは自然で、楓香も彼に笑顔を返した。
彼は楓香の真後ろの席に座った。

休み時間になると、転校生は楓香に声をかけてくる。
「ねえ、君名前何て言うの?」
「笹原楓香…えっと、松庭くんだっけ?」
「そうそう。耀でいいよ。楓香ちゃん、良かったら休み時間、教室の周り案内してくれないかな?」
「別にいいけど…」
楓香は立ち上がる。
先に立っていた彼を見上げる格好になった。
(ケンちゃんより背が高いかも…)
確実に180を超えているなと楓香は思う。

廊下に出ると、他の生徒がこちらへぶつかりそうな勢いで走ってきた。
転入生はさりげなく楓香の横に周り、それをスマートに回避する。
何も無かったように、転入生はサラっと楓香の横を歩く。
「この学校って変わってるよね、クラスの名前もそうだけど」
「そうだね、組の名前はちょっと幼稚園みたいだよね」
楓香がそう言うと、転校生は笑顔を見せた。
「何か、クラスの他の子たちって話しかけにくい雰囲気がしてさ」
「ああ…」
ずっと蒼組にいる楓香でさえ、クラスの子と馴染む事は無かった。
教室の中には学力という序列が出来上がっていて、雰囲気は殺伐としていた。
「楓香ちゃんだけ、雰囲気が違ってた」
「確かに私はあのクラスの雰囲気じゃないね」
楓香も転校生の言葉に納得して頷く。

「ねえ、あの子じゃない?蒼組の転校生って」
遠くから声が聞こえる。
「うわー、カッコいい!」
早くも他のクラスの女子から、転校生は注目されていた。
「ハーフっぽいよね」
「帰国子女らしいよ」
(聞こえてるって…)
廊下を歩きながら、楓香は苦笑する。
「笹原さんとお似合いじゃない?」
「すごい、美男美女だよね~。オーラが違うよー」
楓香が声の方を見ると、女子たちは慌てて教室へ戻って行った。

「耀くん、すごい注目の的だね」
「はは、珍しいからじゃないの?確かにオレ、クォーターだし」
「クォーターなんだ?」
「そう。だから髪も地毛」
「そうなんだ…」
近くで見ると彼の髪は、濃い茶色と栗色の部分があり、自然にできたそのグラデーションは美しかった。

教室へ戻ると、そこでも2人へ皆の視線が集まる。
とりあえず席について、彼は近くの席の子の名前を確認しながら挨拶をした。
誰とでもそつなく接する彼の態度はスマートで、日本人らしからぬ紳士的な雰囲気を醸し出していた。

午前の授業が終わり、昼休みになると耀が楓香に言った。
「楓香ちゃん、どこに行くの?」
「お昼。紅組の友達と食べてるの」
「オレも一緒にランチしていい?」
耀は教室内を見回すと、また楓香に視線を戻して眉間にしわを寄せた。
(彼も、この教室には居づらいよね…)
「うん、いいよ」
楓香は2人を連れて、紅組へ向かった。

「あれ~?楓香珍し~~、クラスに友達できたんだ?!」
「えーっと、転校生の松庭耀くん」
楓香が紹介すると、早速耀は陽菜と愛美に愛想よく挨拶をした。
「カッコいいね~~、耀くん」
「いや、そんな事はー。オレはみんなの可愛さの方が気になるよ」
「も~、耀くんカルイね!そんなんで蒼組にいたら、浮くでしょう?」
陽菜は楓香と耀を一緒に見ると、大笑いした。
「ああ、だからこっちに来たんだ!そうだよね~。楓香と耀くんは、浮くよ。あ、いい意味でね」
大声で盛り上がっているせいもあり、紅組でも耀は視線を集めた。

「陽菜、この男、誰?」
紅組の男子が集まってくる。
蒼組や葵組と違って、このクラスの男子は明るい。
「蒼組の転入生だって」
「うわー、蒼組かよ。スゲー。にしても転入生で蒼に編入って、珍しいよな。楓香ちゃんと一緒に紅組に来ちゃえば」
すぐに周りに人が集まってくる。
紅組は蒼組よりも15名人数が多い。
楓香の体感では、蒼の倍ぐらい人がいる感じだった。
「なあ、オレたちも混ぜてよ」
男子数名が和に加わり、賑やかなランチになった。

2人が戻り、教室を去った後、紅組では早速彼らの話で盛り上がる。
「耀のスペック、ヤバくね?」
一緒にランチをした男子の1人が言う。
周りで見ていた女子も入ってきた。
「陽菜ちゃん達、いいなあ。今度彼紹介して」
「うん、うん。耀くんも喜ぶんじゃないかな」
誰にでも当たりの良い陽菜はニコニコと頷く。
「じゃあ、オレも笹原さんとランチさせてよ」
「ちょっと、みんな面食い過ぎじゃないの」
冷静に見ていた愛美が口を開いた。
それに周りの女子が答える。
「いいじゃん♪目の保養♪笹原さんと転入生のツーショット、美しかった~!」

噂になっているとは知らず、楓香は途中で耀と別れ、化粧室から出ると1人で教室へ戻る。
「あっ」
廊下でバッタリ謙介と会った。
冬服に変わった彼の姿が、楓香をまたドキドキさせる。
「…げんき?」
普段、学校では2人はほとんど会話をしていない。
だがしばらく喋っていない謙介に、楓香は思い切って声をかけた。

「まあな…。お前は元気そうだな」
背の高い謙介は、常に楓香を見下ろす目線になる。
冷たく見える、その眼鏡越しの視線が少し和らぎ、誰からも見えないような角度で楓香の髪に一瞬触れた。
そして足を速めて、楓香より前を歩いて教室へ入って行く。
(………)
思いがけない謙介の行動に、楓香の鼓動が一気に激しくなってしまう。
教室に入っても、楓香のドキドキは収まらない。

「お昼はありがとう、楓香ちゃん。色んな人と話せて良かったよ」
後ろの席の耀がすぐに話しかけてくる。
「みんなも耀くんと話せて嬉しかったみたい」
楓香は笑顔で言うと、すぐに前を向いて授業の準備を始めた。
(ケンちゃんと、しゃべりたいな…)
一番前の席にいる、謙介に目を向ける。
ほんの一声、声が聞けただけで嬉しくて仕方がなかった。
楓香は自分の長い髪に、触れた。
(さっき、ちょっと触ったよね…)
先程の出来事を何度も思い出して、楓香は自分の中の謙介への想いを改めて確認してしまう。


耀は後ろから楓香をじっと見ていた。
この教室の中、楓香の存在自体がただ1つの光のようだと思った。
(花、だよ。まさに)
初めてこの教室に入った時から、すぐに楓香に目が留まった。
(可愛いなあー、楓香ちゃん。この教室に友達がいないっていうのも良いじゃん)
楓香の美しい長い髪、肩から肘までのラインへと視線を動かす。
(この子の後ろの席で、ホント良かった。オレ、ついてる)
時々斜め前を見ているような仕草を楓香がしているのに、耀は気付く。
(この子の癖なのかな)
その日は深く考えずに、耀はただ楓香の後ろ姿を観察していた。



教室で友達がいないせいもあり、楓香は耀と一緒にいる時間が増えていく。
耀も昼休みは紅組へ楓香と一緒に行き、彼女と同じ席だったり、違うグループに入ったりして、蒼組よりも紅組の子たちと親交を深めて行った。
「すごーい、コミュ力だよね、耀くん」
耀を見ながら、愛美がつぶやく。
違う席でランチを取りながら、3人は遠目で男子の集団に既に馴染んでいる耀を見ていた。
「帰国子女だから?やっぱりインターナショナルな人は違うよね~」
「陽菜だってなかなかのコミュ力だと思うけど。私は尊敬してるよ」
楓香の言葉に、陽菜は恥ずかしそうに笑った。
「耀くん頻繁にうちのクラスにいるせいか、耀くんの事好きな子がすごい増えてるんだけど、楓香はどうなの?」
「えっ?私?何が?」
鏡でマスカラをチェックしていた楓香の手が止まる。
「だって耀くんといつも一緒にいるじゃん、みんな気にしてるよ。楓香が相手だったら勝ち目がないって」
陽菜は楓香の手から鏡を奪い取る。
「何もないよ~、一緒にいるって言うのも、耀くんぐらいしか蒼組でしゃべれる人いないだけだよ。私好きな人いるし」
「楓香はそうだけどさ。耀くんは分からないじゃん。ねえ、耀くんって彼女いるのかな?」
「知らない~、聞いてない。すごいモテてるみたいだし、逆に何人も彼女がいたら引きそうだから、怖くて聞けないよ」
楓香は言った。
教室で唯一喋るクラスメートに、あからさまに男女の話をするという事に気が引けたというのもあった。
「彼女、いない方がおかしいよね…。でも分かんないか。楓香だって彼氏いないわけだし」
そう言って陽菜は楓香へ鏡を返した。

(耀くんは背も高いし目鼻立ちもハッキリしてるし、確かにカッコいいけど…)
楓香が異性として意識をしてしまうのは、やはり謙介だけだ。
どんなに美形でも、耀は友達としか思えなかった。
(クラスで初めて友達ができた、って思えるのは嬉しいけど)
誰にでもフランクな彼の態度に、楓香も少し気を許していた。
同じクラスの真面目な女子達も耀の事は気になっているようで、彼と話をしている時に彼女たちの視線を楓香は時々感じた。
(耀くんとは教室で話せるのにな…)
楓香の視線は無意識に謙介へ行ってしまう。
謙介は相変わらず淡々としていて、休み時間には1人で本を読んでいたり、他の真面目そうな男子と授業の話をしている。
楓香とは目が合う事もほとんど無い。
(せっかく同じクラスなのに)
謙介と話す事は夢みたいに非現実的で、こうして遠目で彼を見る事ができるという小さな権利をありがたく思うしか無かった。

 
「一緒に帰ろう」
楓香は用事があり、友人たちには先に帰ってもらっていた。
階段を下りた昇降口のところで、耀が立っていた。
ただ立っているだけでも、雑誌の1ページの様に見える彼の姿は美しい。
入口からの光に栗色の髪が透けて、彼が更に輝いて見えた。
「耀くん、今帰りなの?」
「楓香を待ってた」
「そうなんだ…。ありがとう」
素直に嬉しい反面、告白されたらどうしようと楓香は警戒する。
『待ち伏せ』に良い経験が無かった。

駅までの道を2人で歩く。
途中、学校の生徒だけではなく、通り過ぎる他人の視線も彼らに向けられた。
並んで歩くだけでも、楓香と耀は目立っていた。
「楓香の友達2人とも、良い子だよね」
「うん…、そうだね」
すぐに耀は楓香の事を名前で呼ぶようになった。
それは楓香だけ特別という事ではなく、男女ともに友人になると彼はすぐに名前を呼び捨てにしていた。
「陽菜は周りに気を使ってくれるし、愛美はクールだけど人の事よく見て発言してるし」
「うん」
意外とちゃんと人の事を観察してるんだなと、楓香は思った。

「楓香は、…好きな人がいるね」
「えっ?陽菜たちから聞いた?」
「聞いてないけど、楓香の様子を見てれば何となく分かる」
「………」
「それも蒼組にいるね」
「…!」
楓香は言葉に詰まる。
(なんで…分かっちゃうの…?)
顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かった。
その様子は耀の発言を肯定しているようなものだった。
「なんで?…なんでそう思うの?…誰だか、分かるの?」
楓香は観念して顔を上げた。

近くで見た耀の瞳は、黒ではなく薄いグレー。
その神秘的な目で見られると、楓香は考えている事を全て見透かされてしまいそうな気がした。
「教室にいる時の楓香と、紅組にいる時の楓香が違うから。誰だかは…、今は分からないけど、多分そのうち分かると思う」
楓香の視線の動きはいつも一瞬で変化したので人物は特定できなかったが、それも時間の問題だと耀は思っていた。
(私の態度、違うんだ…)
楓香は恥ずかしくてたまらない。
秘めているつもりだったのに、転入生に簡単に気持ちがバレている。
(耀くん、鋭い…)
「言わないでね。絶対。私が誰を好きなのか分かっても」
「うん。言わない。って言うか、やっぱり蒼組に好きな人いたんだね」
耀は笑った。
「もしかして、カマかけてた?」
楓香はふくれて耀を見上げる。
「いや、絶対そうだなって思ってたから」
少し得意気で、秘密を見つけた子どものような笑顔を耀は楓香に返した。


夜、謙介からメールが来た。
(うわ…、久しぶり、ケンちゃんからのメール)
そういう楓香も、自分からメールを送る事は無かった。
『明日の昼休み、時間があったら生徒会室で雑用手伝って欲しい。
都合が合うなら返信して』
「事務的過ぎ……」
内容にはガッカリしたが、謙介に会えると思うと楓香は明日を待ちきれなかった。

耀には用事があるからと言って、昼休みは真っ直ぐ生徒会室へ向かった。
楓香はこの部屋へ入った事が無い。
入口のドアはガラスが縦に2枚はめ込まれていて、下半分は擦りガラスになっている。
部屋を覗くと、もう謙介が来ていた。
「ケンちゃん、1人…?」
「ああ」
謙介と2人きりだという事に、楓香は嬉しさを隠しきれない。
「ケンちゃん、生徒会だったっけ?」
「いや。生徒会の奴らと親しいだけ」
「親しいんだ!」
「オレの人脈を舐めるなよ」
口の端だけを少し上げて、真っ直ぐ楓香を見る謙介。
そんな彼の表情が、楓香の心に刺さる。
「こっち座って」
謙介はイスを引くと、楓香にそこへ座るように促した。
長机が2つ並べられていて、イスが幾つか置いてある。
部屋の隅には畳んだパイプイスも置かれていた。
「生徒会の奴らは葵組が多いから、たまに頼られる事もあるんだ」
「ふうん」
「前期の会報のまとめ、文章がおかしくないかチェックしてくれないか」
「私でいいの?」
「お前だって一応ずっと蒼組にいられた学力があるだろ」
そう言って謙介は楓香の横に立ち、彼女の前に書類を置いた。
(あ、ケンちゃんの匂いがする…)
すぐそばにいる謙介に、楓香は抱きつきたい衝動に駆られる。
彼の気配全てが、楓香にとっては特別だった。
(もうどれぐらい、ケンちゃんに触ってないんだろう…)
「じゃあ、もう始めてくれる?大した量じゃないから、昼休み中にできるだろ?」
楓香はパラパラと書類をめくる。
元々ページ数が少ない上に写真がかなり多いため、文章の量は多く無かった。

楓香が目を離した隙に、謙介は彼女の足元にしゃがみこんでいた。
「ケンちゃん?」
「お前は仕事しろ」
「えっ…」
スカートがめくられる。
謙介が楓香の足を開く。
「何っ…、えっ…」
すっかり机の下に入った謙介の様子は、楓香からは分からない。
ドアの方を見ると、ガラス越しに廊下から楓香の姿はまる見えだった。
しかし長机の下は見えない。
「あっ…」
ショーツの隙間に謙介の指が触れ、布地を横へずらしていく。
股間が空気に晒される感覚で、楓香はそこを謙介に見られている事を悟る。

「声出すと聞こえるよ」
「えっ…、あっ…やっ…!」
謙介の口が、楓香の性器へ触れた。
しっかりと唇が付いている状態で、亀裂を彼の舌が割る。
「はっ……、うっ…」
久しぶりに触れた謙介の感触に、楓香の体は電流が走ったようにビクビクと反応してしまう。
(こんなところで…)
「あぁっ!」
「だから声 出したらダメだって言っただろ」
「うっ…」
謙介の口が一瞬離れる。
ショーツを押さえていない方の手、その指が楓香に触る。
(ああ、ダメっ…)
楓香は廊下を見た。
時々人が通る。
生徒会室は教職員室と近く、生徒よりも教師が通り過ぎる事が多かった。

「うぁっ……!」
楓香は声をこらえる。

(ダメ、ダメ…、指入れちゃ…)
入れただけで溶けそうになるその感覚に、楓香は首を振った。
「お願い、ケンちゃん…指はダメ…、ダメなの…」
小声で楓香は懇願した。
久しぶりなのにそんな風にされたら、正気を保っていられる自信がなかった。
「お願い…ダメ…」
手を伸ばして、自分の足の間にある謙介の手を触る。

謙介は愛液がベッタリついた指を抜くと、その手で楓香の足をもっと広げた。
柔らかい楓香の体は、それに抗う事なくされるがまま開脚してしまう。
「はぁっ…、うっ…」
ジュルジュルと、謙介が楓香を吸う音が響いた。
感じている様子を悟られないように、楓香はできるだけ平気な顔をしようとした。
それでも久しぶりの謙介の愛撫に、肉体の反応は止まらない。

謙介は楓香を吸いながら、舌で激しく肉芽を転がす。
「うぁ……、んっ……はぁっ…」
堪えられなくなって、せめて顔が外から見えないように楓香は下を向いた。
教師がすぐ横を通っていると思うと、気が気では無かった。
クリトリスへの激しい愛撫に、楓香の腰が震える。
「うっ…、んっ…、あぁぁぁっ…」
(ダメ…、そんなに吸ったら、取れちゃうっ……!)
謙介は楓香の性器に吸いついて、彼女の感じる粒の裏で舌を動かす。
彼が出した唾液が、楓香をさらに汚した。
(ああ、駄目…気持ちいい…もう駄目…)
「あっ…ダメっ……、もうっ…」
楓香は下を向いて、口を押さえる。

「んんっ……うぅぅっ……!」
謙介の顔へ自らの腰をガクガクと揺らして、楓香はすぐに達してしまった。

「なんだ、全然我慢できないんだな」
謙介はハンカチで手と顔を拭きながら、机の下から出てくる。
「相変わらず、漏らしたみたいに汚してるぞ」
「はあっ…、はあっ…はぁっ…」
楓香は呼吸が戻らない。
電流のように放たれた快感が、まだ体中を巡っていた。
謙介は自分が今使ったハンカチを楓香に投げる。
「それでイスもキレイにしておけ。ちゃんと持って帰って洗えよ」
書類の上に、生徒会室の鍵を置く。
「それもちゃんとやっておけよ。葵組の永沼に鍵と出来た書類、渡しておいて。頼んだぞ」
そう言うと、謙介はドアを開けて部屋を出て行った。


楓香が教室へ戻ったのは、昼休みが終わり授業の始まるギリギリだった。
書類もチェックし、隣のクラスの永沼へ鍵と一緒に渡してきた。
謙介に乱された体も心も、既にかなり落ち着いた状態で自分の席へとつく。
「ねえ、楓香」
後ろから耀が声をかけてくる。
「何?」
振り向いた楓香を、耀はじっと見た。
瞳のもっと内まで入り込むようなその視線に、楓香は思わず構えてしまう。

「昼休み、何かあったでしょ?」
「えっ…」
「なんか違う。詳しい事はあえて言わないけど、…なんか雰囲気が」
耀はそう言うと、楓香がドキンとする程、表情が色っぽくなる。
しかしそれはほんの一瞬で、すぐにいつもの彼に戻り悪戯っぽい笑顔に変わった。


 

   

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著作権は柚子熊にあります。
いかなる場合でも無断転載を固くお断りします。

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