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言いなり学園
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7.告白

謙介との電話から数日後。
友人と約束をしていたので、楓香は午前中に家を出る。
その日もとても暑く、飲み物を買おうかとコンビニへ目を向けた。
視野に入る遠く。前に、見慣れた姿を見つける。
背の高い、白いシャツ。細い黒い縁の眼鏡。

「うそ…、ケンちゃん?」

謙介本人だった。
こちらへ向かって歩いてくる。
「ああ、楓香。珍しいな、外で偶然会うなんて」
「か、…帰ってたの?」
「今。やっぱりダルくて、先に帰ってきた」
(そうなんだ…)
「…今帰ってきたわりには、ずいぶん軽装だね」
「荷物は後で親と帰って来るし。まあ、家に戻るわけだから向こうから持ってくるものもないしな」
「そう…」
楓香は自分に何の連絡も無く謙介が帰ってきた事に少しへこみながらも、久しぶりに彼に会えた事は素直に嬉しかった。
「出掛けるのか」
楓香の様子を見て、謙介が言う。
「ケンちゃんはこの後何かあるの?」
珍しく楓香は謙介の予定を聞いた。
「家で休む」
あっさりとした答えを返す謙介。

「わ…私も一緒にいていい?」
「お前、これから出掛けるところなんだろう」
謙介が怪訝な顔で楓香を見る。
楓香は白に花柄が入った膝上のワンピースに、可愛らしいミュールを履いて、髪は緩く横でまとめていた。
どう見てもこれからどこかへ外出するスタイルだった。
「いい。…ケンちゃんといたい」
「オレは別にいいけど。お前はそれでいいのか」
「大丈夫!…うん。でもちょっとメールさせて」
楓香はラインを送る。
片想いの彼と偶然会ったからそちらへ行きたいと、素直に打った。
無事に今日の予定がキャンセルできたどころか、すぐに応援メッセージが沢山返ってくる。
(みんな…ありがとう…)
「えっと…今日の予定、空いた」
楓香はできるだけ嬉しさをこらえて、謙介について歩いた。


警報装置を切って、謙介が裏口のドアを開ける。
久しぶりに人が入った家は、しんとしていて暗く、蒸していた。
「本当に暑いな…こっちは」
謙介は色々なところの冷房を入れて回る。
キッチンの大きな冷蔵庫に沢山ストックしている飲み物を、謙介は2人分取る。
「そっち座れば」
リビングで、別々のソファーへ斜め向かいで2人は座った。
謙介は荷物を横に投げて、体を崩す。
だらしなく座っていても、彼は育ちの良い雰囲気がする。
身に着けているカジュアルな白いシャツも、素材の良さが一目で分かるようなものだった。
「今日、ホントに誰もいないぜ。夜も帰って来ないし」
「そうなんだ。晩御飯とかどうするつもりだったの?」
「適当」
強く入れた空調の音が、広い部屋に響く。
「向こうはどうだった?」
とりあえず無難そうな事を、楓香は聞いてみる。
「疲れた…。いつも誰かいたし、すごく1人になりたかった」
(ケンちゃんは1人になりたかったのに、来ちゃった…)
ここに来てはいけなかったかも、と楓香は思う。
「えっと…来ちゃって今更だけど、ケンちゃん疲れてるのに、私ここにいてもいいのかな?」

「いいよ。別にお前は疲れないから」

「………」
そんな謙介の言葉に、楓香は舞い上がってしまう。
「お前随分日焼けしたな」
「うそ、ホントに?」
久しぶりに謙介と距離を取って、普通に話していた。
他愛もない事が、楓香にとっては全て嬉しかった。

 


「あぁ…。だめ……そんなに…」

謙介のベッドの上で、楓香は裸でうつ伏せになり、背中にキスされていた。
楓香は足を少し開き、その間を謙介に触られている。
「ああんっ…」
うなじに這う謙介の唇に、楓香は興奮してしまう。

日焼けで水着の形が分かる彼女の背中を、謙介は手で撫でた。
そのまま腰を通って、再び足の間に指を戻す。
「はぁっ…」
楓香の声が出る。
謙介は起き上がると、後ろから楓香の腰を引っ張った。
楓香を四つん這いで両肩をベットにつぶした体勢にさせる。
腰が反り、お尻が持ち上がったその格好は、楓香の性器を後ろからよく見せる。
「休みの間、オレにこうして欲しかった?」
「……うん」
楓香は素直に頷いた。
謙介からまる見えの、ピンク色をしたその部分から、自然にトロリと液体が溢れてきて楓香の亀裂を滑る。
そして糸を引いて、足の間から垂れた。

その様子を見ている謙介の興奮も、否が応にも高まってしまう。
指で入口の周りを触ると、楓香の腰が震えた。
少し触れているだけなのに、また溢れてくる。
謙介が指を入れて、中をかき混ぜる。
「ああっ…、ああんっ…」
動きに反応して、楓香が声を出す。
指を引くと、ドロドロと白い楓香の愛液が一緒に溢れ出てきた。
(すごい濡らし方だな…)
謙介は楓香のあまりに淫らなその部分に、口をつける。
「ああんっ…!…あぁっ…」
楓香の反応が強くなる。

謙介は楓香から離れ、彼女の腕を引いてこちらへ向かせた。
「どんな顔してるの?」
「あぁっ…」
「顔見せてよ、楓香」
彼は全ての愛撫をやめ、楓香の両腕を掴んで覆いかぶさるように真っ直ぐに彼女を見た。

「いや……、恥ずかしい…」
ただ顔を見られているだけなのに、楓香は恥ずかしくてたまらなかった。
「オレを見ろよ」
「やだ……」
そう言いつつも、楓香は目を開けて謙介を見た。
顔を隠したくても、肩の横でがっしりと謙介に両腕を握られていた。

興奮と悦びに潤んだ瞳で、楓香は彼を見上げた。
頬は上気して紅色になり、汗ばんだ額についた前髪が少し濡れている。

謙介は、唾をゴクリと飲みこんだ。
(楓香、可愛すぎる……)
こうして顔を見てしまうと、感情が爆発しそうになる。

そんな謙介の表情を映して、楓香の気持ちもまた昂ってしまう。
(ケンちゃん…好き……)
涙がひと筋、瞳の端から零れた。
謙介と見つめ合っているだけで、逃げ出したい程切なくなってくる。
「ケンちゃん」
(好きって言っても、いいかな……)
また涙が零れる。

謙介もまた、自分の目の前で切なそうに涙を流す楓香を見て、たまらない気持になっていた。
楓香が次の言葉を言う前に、謙介は彼女の乳首に口をつける。
「あぅっ…」
反射的に楓香は反応してしまう。
彼女の手首を掴んでいた腕を離し、謙介は楓香の乳房に触れた。

「あっ…、やっ……」
乳房を大きく揉み解され、乳首を吸われる。
謙介の口の中にあるその先は、彼の舌で何度も転がされた。
「はぁっ…、あんっ……」
ずっと彼に触れて欲しかったこの数週間。
ようやく謙介に愛撫されて、楓香の欲望は楓香自身の理性が許容できる範囲を超えて溢れてくる。
(ケンちゃん……好き…、気持ちいい…)
謙介の指が、また楓香のそこにまた触れた。
「あぁっ…、気持ちいい……、あぁっ…」
謙介は楓香の反応を見ながら、感じる場所を丁寧に触っていく。
「あぁ、あぁっ……」
少しずつ昇っていく快感に、目を閉じて楓香は身を任せた。


シャツの胸を少しだけ開けた謙介は、ズボンを下げて自分のものを出してベッドに横たわる。
全裸の楓香が、彼のお腹にくっつく程反り上がった謙介のものに自分の性器を当て、またがった。

「うっ……、はぁっ…」
一度イってドロドロになったそこを、楓香は謙介に擦りつける。
元々深い形の楓香の亀裂の間に、彼のペニスが滑る。
(ああ……気持ちいいよ…)
楓香は挿入せずに自分を擦りつけて、謙介の上で腰を振った。
彼のものをしっかりと押し付けて、溢れ出して止まらない自身の愛液で謙介を汚していく。
「あぁっ…、はぁんっ…」
(もう……我慢できない…)
楓香は腰を動かしながら、彼のものを自分自身で感じる。
固く熱いそれが欲しくてたまらなくなる。

「もう、挿れたいよ…。ケンちゃん…はぁっ…」
楓香の腰が浮く。
「挿れたいの……、挿れてもいい?」
懇願するような切ない声を出して、楓香の手が謙介のペニスへ伸びる。

楓香の手が、謙介のそれを握る。
謙介のものが、楓香の手で持ち上げられていく。

「やめろ」

謙介は楓香の手を掴んだ。
「だって……、もう…ケンちゃんと繋がりたい…」
はっきりと自分に向けられた楓香の好意と欲情が刺さって、痛い。
謙介は楓香を押し倒すと、彼女の上にまたがった。
自分で自身のものを擦る。
「あっ…、あんっ…」
それを見ていた楓香が手を伸ばして来る。
動かす謙介の手に、楓香の手が重なる。
謙介は彼女の上に、精を吐いた。


「はぁ…、はあ…」
謙介の出した白い液体が乗った腹が、楓香の息遣いとともに大きく波打った。
彼はすぐにズボンを直し、ボタンを留めた。
裸の楓香の汚れたものを、謙介は黙ってキレイにしていく。
汗だくの彼女に、彼は大きなタオルをかける。
謙介は楓香の隣へ、横になった。

「なんでダメなの…?こんなにしてるのに…」
夏の間離れていた上に2人きりで、楓香の感情が溢れる。
「ケンちゃんとしたいよ…」
「……」
謙介は黙って楓香を見ていた。
楓香も謙介を見る。
こんな風にちゃんと向かいあって顔を見る事はほとんど無かった。
何も言わない謙介に、楓香はどうしていいか分からなくなる。
気持ちだけが意志と裏腹に、勝手に流れてしまう。

「ケンちゃんの事、好きなの…」
とうとう口に出してしまう。

「知ってる」
楓香の切羽詰った告白に対し、謙介はあっさりと言った。
予想外の冷静な反応に、楓香は戸惑う。
「ケンちゃんは…私の事好きじゃないの?」
「別に嫌いじゃない」
謙介の手が、楓香の頭を撫でる。
その優しい手つきに、楓香は謙介の真意が読めない。
「じゃあ、……好きなの?」
「お前はオレたちの関係をハッキリさせたいの?」
「………」
謙介に切り込まれて、楓香は言葉に詰まる。
「お前が無理なら、もうこういう事しないよ」
「………」

聞いてはいけない事を、言ってしまったと楓香は思った。
でも、口に出してしまったのだ。
穏やかな彼の様子に、楓香は激しい違和感を感じる。
(どうしよう……)
バッサリ切り捨てられると思った。
謙介が楓香の好意を分かっているように、楓香も謙介から嫌われていない事ぐらいは分かっている。
しかし楓香が望むような、恋人のような気持ちを彼が持っているとは思えなかった。もしそう思われているとしたら、今の関係はもっとずっと前から、こうでは無かったはずだ。
謙介は、反応を探るようにじっと楓香の事を見ていた。
楓香は言葉を返せない。
付き合って欲しいと願えば、拒否されてしまう気がした。

見つめ合ったまま、時間が流れた。
楓香を見ていた謙介の目が閉じて、彼はいつの間にか寝息を立てていた。
頭に乗せられた彼の手の温もりに、楓香も裸のまま眠りに落ちてしまった。



「楓香……」
謙介の手が楓香の肩を揺らす。
「私…寝ちゃってた…?」
「寝かせておこうかと思ったけど、お前いつ起きるか分からないから」
「何時…?」
楓香は起き上がる。
タオルケットの下は裸のままだった。
「2時。お腹空かないか」
「うん」
ベッドの脇に、しわにならないように楓香の服が置いてあった。
「親いないし、ピザとか取ってみようぜ」
「…うん」
楓香は手を伸ばして、服を取る。
謙介は普段通りだ。
(ううん、いつもより優しいかも…)
棘の無い謙介の態度。
時折見せる、彼のそんな雰囲気が楓香は好きだった。
彼から与えられる肉体的な快楽以上に、そんな普通の彼が、楓香の心を離さない。

遅い昼食を2人で食べた。
会話が弾むわけでは無かったが、謙介がリラックスしていたようなので、楓香も安心して側にいられた。
(さっきの会話…)
謙介に好きだと言ってしまった事よりも、彼に自分の事をどう思うか聞いてしまった事を後悔していた。
(ケンちゃんにとって、私は)
ただ都合の良い時に、側に置いておきたいのだろうという事は分かっていた。
それは謙介にとって都合の良い時で、楓香が彼に会いたい時では無い。
(私はいつも一緒にいたいけれど…)
謙介はそうではない。
(分かってたのに…)
食事が終わってしまうと、特にする事もなくなってしまう。
家でゆっくりしたいという謙介に、ただ一緒にいたいというだけでついてきてしまった楓香。
改めて2人きりだと、何をしていいのか分からなかった。
リビングを片付けて、楓香はソファーに腰を下ろした。
謙介はその隣に座る。
隣に座られるだけで、楓香はドキドキしてしまう。

「楓香、どうするの?」
「えっ…」
楓香は謙介を見る。
彼の表情は落ち着いていて、優しい。
「さっきの話」
「さっきの、って…」
「お前はどうするの?今までと同じでいいのか?」
柔らかい彼の目が、楓香は怖かった。
嫌だと言ったら、すぐにここにはいられなくなる。
手を離す前の、最後の優しさのように感じられた。

「……うん」
楓香は そう言うしかなかった。
今のままの関係が、嫌だとは言えない。
結局、答えは1つしか無いのだ。
その答えを選ぶしか、謙介の側にいる術は無いのだ。
謙介に促されるまま、楓香は彼の部屋へ戻る。

謙介はつい先程まで楓香が眠っていたベッドに、すぐ横になる。
目が、楓香を呼んでいた。
「………」
楓香も謙介の隣へ、横になった。
話している時間よりもずっと、話さない時間の方が2人は多い。
謙介は楓香の肩を押し、彼女を反対側へ向かせた。
楓香の背中越しに手を伸ばし、服を着たまま肌に触れる事もなく、謙介は楓香を後ろから抱きしめる。

そんな彼の一連の行動に、楓香の動機は激しくなってしまう。
(ケンちゃんがこんな風にするから……)
冷たくされるだけなら、肉欲に任せて扱われるだけなら、きっと心は動かなかったはずだ。
少し優しくされるだけで、楓香は辛くなる。
(泣きそう…)
謙介の前でいつも泣いてばかりだから、楓香は堪える。
背中越しに回されて、手に合わさる謙介の手。
(こんなに好きになりたくないのに…)
目の前にある彼の手さえ愛しい。
少しだけ指を動かして、彼の指を触った。

よく隣で眠っていた幼い頃と同じように、そのまま謙介と楓香は眠ってしまった。


 

9月になり、学校が始まる。
登校早々に、それぞれの進路を提出させられた。
9月末から始まる前期試験の結果で、卒業後の進路が決まる。
そこで卒業までの最終的なクラス編成があり、そのまま後期の学年末試験まで試験は無い。
学年末試験自体はクラスにも進路にも何の影響も及ぼさないため、9月末の前期末試験は高校での実質的な最後の本気の試験となる。

学校が始まっても、夏休み前と2人の関係は変わらなかった。
週に1~2日、楓香が謙介と一緒に勉強をする。
謙介も楓香に教える事で自分自身の学習の理解へ繋がっていたため、そうする事がずっと習慣付いていた。
家に誰もいない時以外は、性的な行為をする事もまれだった。

楓香は謙介の部屋で、いつものように勉強をしていた。
「ケンちゃんは、進路何て出したの?」
「国際関係学」
「ずっと語学やってたもんね…」
「楓香は?」
謙介はチラリと楓香を見て、眼鏡を直す。
「事務職とか、合わないと思うから……理工系のどこかに出そうと思ってる」
「まあ、お前も今の成績だったらどこでも希望は通るだろ」
「そうかな」
確かに謙介のおかげで、楓香もかなり学力がついている。
この学園に限らず、外部受験をしても大抵の大学は通るぐらいのレベルにはなっていた。

「前期末試験が終わったら」
謙介が眼鏡を外して机に置く。
「家庭教師増えるし」
「うん」
「時間無くなるから。お前ももう自分の勉強ぐらい余裕でやれるだろ。後期は実際何かに影響するテストは無いしな」
「………それって」
(それって、もうこうやって一緒にいられなくなるって事?)
楓香の手も止まる。

「来月からは、今みたいに毎週うちに来るのは無理だな」


謙介の言葉の本当の意味が、楓香の心に小さなヒビが入る様に静かに広がっていく。
学校での授業中、謙介の後ろ姿を見てまた考える。
(試験が終わったら、会えない…)
二度と謙介の部屋に行けないわけじゃない。
「たまに来ればいいから」
そう彼も言っていた。
(でも、いつ…?ケンちゃんの言う『たまに』って)
普段の謙介が今でも忙しいのは知っている。
楓香の知らない予定が、彼には結構入っていた。

(今みたいには会えなくなる)

静かに、その事実が楓香に現実を見せる。
冷たくされても何も無くても、日常的に通っていた謙介の部屋。
もう、いつ会えるか分からない。
(そのまま卒業して、その先は…?)
楓香は考えたくなかった。
夏のあの日、曖昧にされたが、しかしハッキリと謙介に拒まれた。
これまでの関係でと釘を刺されたという事は、これ以上の関係はあり得ないという事だ。
(あれ以上、言えるわけないよ…)
楓香は不安でたまらなかった。
 


勉強に集中できないまま10月になり、前期末試験の結果が発表された。
楓香は自分の結果を見て、手が震えた。
「18位……」
20位までが蒼組に入れる。
成績が落ちた事はショックだったが、もう一方でギリギリでも蒼組に残れた事にホっとしていた。
(もうちょっとで、落ちてた…)
そう考えると、恐ろしかった。
2年の時はヒト桁の時もあった。
その位の順位をキープしていないと、周りとの相対評価でいつ蒼組から落ちてもおかしくない。
今回も、あと1問でも落としていれば、きっと20位台になっていただろう。
そうなると蒼組には残れない。

謙介の顔を見るのが怖かったが、教室でどうしても会ってしまう。
楓香と目が合ったが、特に彼は表情を変えなかった。
その後も、順位が落ちたと責められる事も無かった。
何も言われないという事が、何よりも楓香は辛かった。

 

   

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いかなる場合でも無断転載を固くお断りします。

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