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言いなり学園
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5.相互依存

謙介が当番で教職員室へ行った帰りだった。
廊下で見知らぬ女子に呼び掛けられる。
「左近くん!」
振り返ると、女子2人組。
声をかけてきた方の子はいかにも真面目そうで、黒縁のメガネをかけていた。
その後ろに隠れるように、いかにも女の子といった雰囲気を漂わせている、どちらかと言うと可愛らしい系の子がいた。

「何か用事?」

謙介は勤めて普通に答えた。
そうでもしないとイラ立ちが声に出てしまう。

「葵組の星野って言います。と、…突然ですが、左近くんは彼女っていますか?」
眼鏡の子が真っ直ぐにこちらを見て言う。
「いないよ」
そう言って2人を見下げる。
どんな反応をするか、少し興味が出たからだ。
「…いないって、靖子、言っちゃえば」
眼鏡の子が可愛い系の子にささやく。
「でも、…えっと」
謙介は2人の女子の押し問答にもすぐに飽きてくる。
イライラせず待っていられたのは、数秒だった。

「悪いけど、自分より学力の低いクラスの子とは付き合わない事にしてるんだ。頑張って蒼組に入っておいでよ。じゃあね」
ちょっと馬鹿にし過ぎたかなと謙介は思ったが、女は大抵鈍感で、何でもかんでも自分の都合の良いように解釈し過ぎるから、これぐらいで丁度良いと納得した。

蒼組は殺伐としている。
現在、男子が14名、女子が6名。
テストの度にメンバーが入れ替わるので、教室はいつも緊張感があった。
その中でも、常に蒼組をキープしているものが15名ほど。
残りの5席は、いつ葵組に落ちるか常に危機感を持っていた。

そして常に蒼組に在籍している彼らの特権意識は強烈だった。
その中でも、常にトップなのが、左近謙介。
彼は不動の1位で、高校に入ってからこの3年までの間、その順位を落とした事がない。
別格だった。
まさにピラミッドの頂点だった。

ただでさえ、蒼組というだけで一目置かれる。
しかし謙介の場合は、容姿も優れていた。
180センチ以上ある身長に、虹組にも入れそうなほどの運動神経。
クールな眼差しにキリっとした態度は、女子のみならず、学園中のカリスマだった。

「左近くんは、女の子に興味が無いのかしら…」
「蒼組の男子って、勉強はできてもモッサリした子ばっかりだけど、左近くんだけは輝いてるのよね…」
「あんなに完璧な人、彼氏にしたら逆に疲れそうじゃない?」
「やっぱり遠くから見守るのが1番かな」
謙介が歩けば人目を引く。
同じ蒼組の女子でさえ、謙介のその容姿もさることながら、学力がずば抜けているという意味でも謙介には畏怖の念を抱き、気安く声をかける事もできなかった。

そんな謙介と比べ、楓香は対照的だった。
彼女は他のクラスの生徒たちからも、よく声をかけられていたし、その都度フレンドリーに接していた。
「楓香がずーっと蒼組にいるのがすごい不思議なんだけど」
悪気なく陽菜が言う。ここは紅組だ。
蒼組20名、葵組25名、その下の紅組が35名。さらに下には竹組がある。
このクラスになると、雰囲気はだいぶ緩かった。
竹組に落ちなければいい、または落ちても気にしない、ぐらいの感覚の生徒がほとんどで、常に蒼を狙っている1つ上の葵組とはまた違っていた。
「そんな猛勉強しなくてもさー、自然に大学に上がれるんだから、いいじゃんね」
爪にやすりをかけながら、陽菜が言う。
「でもさー、学力別にされてるっていうので、親のプレッシャーがあるんじゃないの?上の方の子たちはさ。楓香の親みたいに」
愛美はおっとりとしていて、彼女も特に順位を上げるつもりは無いようだった。
「だけどちょっと勉強したぐらいで蒼組に上がれないよね、だから楓香が常に蒼にいるのが不思議なんだよね。」
「私だって頑張ってるよー。でも私、蒼組でちょー浮いてるんだよね」
楓香は苦笑いをする。
教室を移動する時も、何かのグループを作る時も、楓香を積極的に誘う女子はいない。時々下心のある男子に声をかけられるぐらいだ。


謙介が時々、女の子から告白されているのは、楓香も知っていた。
彼が女子をバッサリ振るのは予想できたし、何よりも楓香自体が告白される事が多くて、謙介の周りの女子なんて全く気にしていなかった。
(ケンちゃんの良いところと言えば、女の影が無いところなんだよね…)
あの冷たい謙介が、女の子に優しくするところは想像できなかった。
時々髪を撫でてくれる謙介の指。
泣くと、必ず涙を舐める舌。
(優しいところ、無いわけじゃないんだよね)
そんな事を他の女の子にされたら……
胸が詰まる。
(耐えられるのかな、私…)
楓香は考えると怖くなった。



学校紹介に載せる生徒代表の文章を、謙介だけではなく楓香も教師から依頼されて、昼休みに2人は呼び出された。
文の横には小さく写真が入る。
「ここだけの話、どうせなら見た目がいい生徒の方がいいだろ」
教師は小声で言い、笑った。

学校で2人になるのはめったに無い事だった。
(制服のケンちゃんが、すぐ隣に…)
楓香はそう考えるだけでドキドキしていた。
謙介の方は、いつもと変わらない様子だ。

打ち合わせだけで昼休みが終わってしまい、5時間目の予鈴が鳴る。
「これ、締切が明日の午前なんだ。次の授業は出なくていいから、仕上げておいてくれないか」
「分かりました」
謙介は答える。
常に主席の彼に対し、教師は甘い。
担当の教師が授業へ行ってしまうと、数名の教師とともに、2人は教職員室に残された。
「ちょっと貸せ」
書きあぐねていた楓香の原稿を謙介は取ると、サラサラと文章を書きだした。
「すごい、あっという間にできちゃった…」
「お前、時間かかり過ぎ。こんなの嘘ばっかりの適当でいいだろ」
謙介は原稿をキッチリとまとめて、担当教師の机の上に置いた。
その置き方ですら、彼の几帳面な性格が表れている。

教職員室を後にする。
2人で並んで廊下を歩くのも、初めてだった。
「授業中は、静かだね…」
「ああ」
ふと謙介は立ち止まり、楓香を引っ張る。
「え、なに?」

1階の階段の裏、廊下からも教室からも、階段からも死角になっている場所。
そこへ謙介は楓香を連れて行った。
「どうしたの?ケンちゃん…」
「膝をついて、座れ」
「えっ…」
楓香はすぐに状況を察した。
謙介はズボンを緩め、ボクサーパンツを下ろすと自分のものを露出させた。
「楓香、気持ちよくしてよ」
「えっ…、でも…」
「誰も来ないよ。早く」

目の前に謙介のものがある。
学校で、制服で、それなのに肌色の部分が露出されているのがすごくいやらしいと楓香は思う。
楓香は謙介のペニスを手にとる。
ゆるゆると擦ると、それは次第に固さを増す。
「ケンちゃんの、おっきくなってくる……」
右手で謙介のものをこすりながら、楓香は謙介の顔を見た。

謙介は興奮した目で、じっと楓香を見ていた。
そんな謙介の表情に、楓香も興奮してしまう。
人差し指と親指に力を入れて、ギュっと根本に下げると謙介は感じる。
楓香は彼のペニスの先を舌で舐めながら、右手はその動作を繰り返した。
「気持ちいい…?」
「ああ」
謙介は楓香の頭を両手で押さえる。
謙介に触れられる、それだけで、楓香は嬉しくてもっと興奮してしまう。

何度も何度も、楓香は頭を動かし、しっかり咥えた謙介のそれを擦る。
「出すよ」
「んん」
楓香は頭を動かすのを止め、謙介の動きを受けとめる。
謙介は射精するために、楓香の口内へ腰を振った。

(ああ………)

もう何度も味わった、謙介の味が口に広がる。
「うっ…、んぐ…」
いつもより沢山出ているような気がした。
楓香はそれをこぼさないように、全て飲みこむ。

「はあ、…あぁ……」
大声を出さないように、楓香は小さく息をする。
「楓香も濡らしてるんだろう」
「えっ…」
謙介に引っ張られ、楓香は強引に立たされる。
楓香のお尻の方から、謙介の手がショーツに入ってくる。
「オレの飲むと、こんなに出てくるの?」
後ろから触られても、濡れたそこにすぐに指が届いてしまう。
「出てない…。出てないから」

謙介の胸に、楓香の顔が埋まる。
彼が後ろから手を回しているから、完全に抱きしめられている格好になっていた。
ギュっとされて、楓香はドキドキしてしまう。
(ケンちゃん…)
腕を謙介の胸に置き、楓香は彼に触られるがままになっていた。
 くちゃっ、くちゃっ…
謙介の指の動きに合わせて、楓香から嫌らしい音が漏れる。
「ヌルヌルじゃないか」
「違う…」
楓香は首を振りながら、謙介の胸にぴったりとくっついた。
触られている直接的な部分より、密着している謙介の体温に興奮してしまう。
ショーツが下げられる。
脱がされてしまう。

「戻るぞ」
「えっ…」

謙介は廊下に戻って行く。
ショーツを取られたまま、何も履いていない状態で楓香も慌てて謙介の後についていく。
廊下越しに見える中庭へ、謙介は楓香のショーツを投げた。
「やだっ…なんで…」
「放っておけ」
すっかり元に戻った表情の謙介は、早足で教室へ進む。
謙介に触られて、楓香のそこは完全に溢れていた。
「あぁっ…」
急いで謙介について行こうとして、太腿を伝い、足元にポトリと液体が零れてしまう。

「だめ……」
耐えられなくなって、楓香は女子トイレへ駆け込んだ。
「はあ…はあ…」
息をする口に、謙介の精液の味を感じた。
楓香は濡れたそこを拭いて、次の休み時間の前に教室へ戻った。

放課後まで席を立つ事ができず、すぐに近くのコンビニでショーツを買って、それを履いて帰る。
(ケンちゃん……)
学校でああいう事をしたのは初めてだった。
(いけない事なのに…)
楓香はすごく興奮してしまった。
(ケンちゃんにも、して欲しい…)
自分のベッドで、今日抱きしめられた事を思い出しながら、楓香は自分自身を慰めた。



蒼鳳学園の夏休みは長い。
7月の2週目から8月いっぱいまでがその期間に当たる。
夏休みに入ってすぐに、楓香は謙介から呼び出された。
楓香が左近家に行く時は、勉強をする事が口実になっているので、いつものようにテキストの入る大きなバッグを持って家を出た。

楓香は左近家の裏口から入った。
時刻はまだ午前だった。
いつもよりシンとしていて、日差しを遮るためにカーテンがあちこちで閉じられており、空調が入っていなくても暑くはなかった。
(誰もいないのかな…)
時々そういう事がある。
緑川がおらず、謙介の母親が出かけている時。
謙介の母親はちょっとしたビジネスもしており、昼間は不在の事も多かった。
楓香は謙介の部屋へ向かう。
一応ノックをすると、中から謙介の返事が返ってくる。

謙介はベッドにクッションと枕を立てて、そこへもたれて座っていた。
「今日は誰もいないの?」
「緑川さんと母さんは、先に長野に行った」
「そうなんだ」
謙介は休みの間には、ほとんど軽井沢にある別宅で過ごしている。
「向こうでも仕事があるらしいし」
「ふうん…」
2人きりというと、嫌でも意識してしまう。
今日、なぜ自分がここへ呼ばれたのかも分かる。
ベッドを見ないようにしようと思っても、気になってしまう。

「こいよ」

彼の声に、一瞬ピクリと楓香の体が跳ねる。
ゆっくりと謙介を見ると、大きく足を広げて座っていた。
「えっと…」
楓香はベッドに乗る。
謙介の手の届くところまで近づくと、彼に引っ張られた。
座っている謙介の足の間に、背中から寄りかかるように抱きしめられる。
座ったまま後ろから抱かれるその体勢に、楓香の動機が一気に高まる。
「ケンちゃん…」
「いいだろ、たまには」
楓香のお腹へギュっと回された腕。
謙介の顎が楓香の髪を分け、楓香のうなじへ彼の唇が触れる。
「あっ……」
それだけで声が出てしまう。
謙介の息が首にかかるだけで、楓香はどんどん興奮してしまう。
彼の舌が、首筋を這う。
(汗、かいてるのに…)
恥ずかしさと、唐突な展開とで、楓香はどうしていいか分からなくなる。

ブラジャーのホックが外される。
謙介の手がTシャツの中へまわり、抱きしめられるような格好のまま、後ろから乳房を触られた。
「あっ……あぁ」
「大きいよな、胸」
楓香の豊かな乳房を、下から上へ、謙介は何度も揺すった。
「はぁ…あぁ…」
謙介と密着している背中だけでも、楓香はいつもよりずっと興奮していた。
乳首に触れないまま、謙介は乳房を触り続ける。
(ああん…、気持ちいい…ケンちゃんの手…)
謙介にただ触れられるだけで、楓香は感じてしまう。
それが乳房でなくても、例えば頬でも、腕でも。
理屈でなく体が反応してしまうのだ。

謙介の指先が、楓香の乳首を撫でた。
「はぁんっ!…」
乳首を摘ままずに、謙介はただ乳首の先を撫でる。
「あぁ…、ああ…」
楓香の体から力が抜けて、完全に謙介へ寄りかかってしまう。
謙介は楓香の耳を時折噛みながら、Tシャツの中で乳房を弄ぶ。
「いいよ、声出して。今日は誰もいないから」
「うあっ…!」
謙介が楓香の乳首をギュっと摘まむ。
「どうした方がいい…?強いのがいい?さっきのがいい?」
「あぁっ…、さっきのが、いい…」

「はぁっ…、はぁっ…」

随分長い時間、胸を揉まれていた。
時間をかけて愛撫される、それだけで楓香の体はかなり昂っていた。
お尻のあたりに、謙介の固さを感じる。
それがまた楓香の興奮を高めた。
謙介の手が伸び、楓香のショーツの中に入ってくる。
「うあっ!」
少し触れられただけで、思わず大きな声をあげてしまった。
「いつもより濡れてるよね?ここ」
そこから、くちゅくちゅと恥ずかしい音が出てしまう。
「やぁ……あぁっ…」
「おっぱい気持ち良かったの?」
謙介の優しい口調が、楓香の心を揺らす。
「…う、……うん」
楓香は素直に頷いた。
何よりも、自分のすぐ後ろに謙介が密着してくれている事が嬉しかった。

「ここ、膨らんでる」
謙介は腕を回して、楓香のクリトリスを指先でなぞる。
「あぁっ、あんっ…あっ…」
その芽を中心にして、謙介の指が何度も何度も緩くそこを撫でる。
強くされるよりも、弱くされる方が楓香は感じてしまう。
「あっ、あ、…あぁっ…」
それを謙介はよく分かっていて、指先が密着する程度の力で、その場所を何度も愛撫した。
指に少し力を入れると、楓香の体がビクンと跳ねる。
「このまま、こすっていい?」
「や、…あぁっ…、イっちゃう……もうっ…ダメっ…」
楓香の腰が反る。
「ああんっ…!」
謙介の首元に楓香は顔をくっつけて、体全体が一瞬固まる。
無意識に謙介の二の腕を、ギュっと掴んでいた。

「あぁっ…、ああんっ…はぁっ…はぁっ…」
しばらく謙介にグッタリと寄りかかったまま、楓香は大きく息を切らしていた。
(すごい…気持ち良かった…)
いつもより謙介が優しかったから。
謙介に抱きしめられて、幸せだったから。
(ケンちゃんが好き…)
体があまりにも蕩け過ぎて、心まで緩んでしまう。
切なくて、思わず涙が出ていた。

「泣いちゃったの?」
子どもに問いかけるような優しい謙介の声が、普段の彼と全く違っていて、それがまた楓香をさらに切なくさせる。
「うん」
子どものように、楓香も頷く。

謙介の手が楓香の頬に触れる。
そっと彼の方へ向けられる顔。
謙介が楓香の涙を舐める。

「…キスして、ケンちゃん」

謙介の唇が、目を閉じた楓香のまぶたに触れ、そして頬に移る。
(やっぱり唇には、キスしてくれないんだ…)
楓香の目から、また涙がこぼれる。
謙介は何度も、彼女の涙に唇を這わせた。


 

   

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