昼休みの廊下。
楓香はお弁当を持って、紅組へ向かう。
この学園には、様々な優遇を受ける20名だけのトップクラス、蒼組の他に、体育系特待クラスが2クラス、その他のクラスが3クラスある。
その他3クラスも成績別に分けられており、上から葵、紅、竹という構成になっている。
楓香の在籍する蒼組は、先日のテストで20名のうちに女子生徒が1名増え、楓香を入れて6名になった。
この学園で上位20名に入る生徒と言えば、皆ガリ勉タイプで、楓香のように外見の派手な者はいない。
完全に浮いていたとは言え、常に上位の成績をキープしている楓香は、それでも一目置かれていた。しかし、教室に打ち解けられる友人はいなかった。
「陽菜、めぐ、いたいた」
楓香は紅組に入り、やっと安堵の表情を浮かべる。
「楓香ちゃんだ、今日もカワイイ~」
教室にいた男子生徒に声をかけられた。
「毎日こっちに来るんだったら、もう紅組になっちゃいなよ」
昼休みや開いた時間の度に、楓香は紅組にいるので、この教室の生徒たちも皆慣れていた。
「うーん」
楓香は困って笑顔だけ返すと、陽菜と愛美のところへ走り去る。
「楓香、蒼組キープおめでとう」
真っ黒な髪を腰まで伸ばしている愛美が言う。
「もう慣れたけど、ホントに楓香はすごいわ。あのメンツに入ってるなんて」
最近髪を肩まで切って、緩いパーマをあてた陽菜。
彼女の可愛らしい雰囲気にすごく似合っていた。
「相変わらず友達はできないけどね」
楓香はお弁当を広げながら笑った。
「なんか、あの教室の人って、プライド高そうって言うか、ギスギスしてるって言うか…。私だったら成績が良くても蒼組は嫌だなあ。まあ、楓香がいればまだいいけど」
既にサンドウィッチを食べ始めている陽菜が言った。
「家が厳しいと大変だね」
愛美は楓香に同情の目を向ける。
「まあ、慣れたけどね…」
友達には、『家が厳しい』という事にしていた。
楓香自身、居心地の悪い蒼組に在籍したい理由なんて本当は無い。
ただ、謙介がいるからというだけだ。
もっと細かく言えば、謙介がいるからと言うより、謙介に勉強を教わっている限り、蒼組レベルの順位をキープしないと大変な事になりそうだからだ。
(違う、そうじゃなくて…)
楓香は、自分が順位を大きく落とした時の謙介の反応を想像する。
『オレの時間を割いてやってるのに、お前は無駄にしたな』
(とか言って、もう勉強を見てもらえなくなるだろうな…)
もし謙介に見捨てられたら、あの謙介の事だ。もう一緒にいる口実もなくなってしまうだろう。
楓香は謙介が好きだった。
恋愛感情は勿論だが、楓香が抱く思いはもっと切実なものだ。
(ケンちゃんがいないと、生きていけないかも…)
昼休みが終わり、蒼組に戻る足は重い。
「あっ…」
教室の入り口で、謙介とすれ違う。
背の高い謙介は楓香を上から見下ろす感じになる。
その目に親しみの感情は無く、ただじっと楓香を見ただけだった。
それが数秒。
すぐに謙介は教室から出て行ってしまう。
(ああ、ドキドキした……)
楓香は自分の席に着き、やる事も無いので、さっき別れたばかりの友人にラインした。
(私って、飼い犬みたいだよなあ…)
謙介にとって自分の存在は、いつからか彼の肉体的な欲求を昇華させるための都合の良い道具だという事は分かっていた。
それでも楓香なりに、この状態に満足していた。
謙介は外面は良いものの、他の女子とは自分から話もしないし、誰かに優しくしたりする事も無い。
楓香は謙介には自分が一番近い存在だと、確信があったのだ。
放課後、楓香は最低でも週に1度は愛美と陽菜と一緒に寄り道をする。
蒼鳳学園の制服を着ているだけで、街で噂されたりする事もあったが、そんな事は気にしなかった。
「うわー、来た来た。みて~このラテアート♪写真撮っちゃお」
陽菜は嬉しそうにスマホを出して写真を撮る。
「私も撮る!」
楓香も携帯を出した。
「こういうのって、練習したらできるのかな」
「どうだろ?専門の機械とかいるのかな?」
「家でできたら良いよね~」
可愛いものが大好きな、女子らしい話が弾む。
楓香のクラスで、こういう話をしている女子は誰もいない。
(ああ…安らぐ~…)
カフェラテを飲んでいると、楓香の携帯が鳴った。
『母たち今日は遅くなるらしい。すぐに来い』
謙介からのメールだった。
「ごめん、ちょっと家に帰れって…。今日は帰るね!」
楓香は荷物を持ち、慌てて立ち上がる。
「じゃあね!バイバイ!またラインする!」
「大変だなあ、楓香のとこ… 」
走り去る楓香を、2人は見送った。
「こんにちは、緑川さん」
左近家に入ると、家政婦の緑川と廊下ですぐ会った。
「こんにちは、楓香さん。坊ちゃんならピアノ室にいらっしゃいますよ」
「あ、ありがとうございます…」
左近の家は広い。
地下には防音設備のピアノ室がある。
ここで昔は謙介もピアノを習っていた。
しかし今では、ほとんど本来の目的で使われる事はない。
重いドアを開けると、グランドピアノの音が漏れてくる。
謙介がピアノを弾いていた。
(ケンちゃん…)
楓香のすぐ後ろに、ティーセットを持った緑川が待っている。
「あ、すみません」
「いえ、楓香さん、お先にどうぞ」
緑川に促されて、楓香は部屋に入る。
ティーセットをテーブルに置くと、ドアのところで一礼して、緑川は去って行った。
楓香はそのまま来たので、制服のままだ。
四角い黒の革ソファーの上に、楓香は座る。
謙介はゆっくりとピアノの蓋を閉めて、楓香の方へ歩いてくる。
「調律しないと、ダメだな」
謙介は敏感で、音のちょっとしたずれも許さない。
「……お茶、飲んでもいい?」
何をするために呼ばれたのかがハッキリ分かっていたから、楓香は何をしゃべっていいか分からなかった。
謙介が隣に座る。
「何、してた」
普通の会話の振りでさえ、謙介が言うと威圧的だ。
責められてるわけでもないのに、楓香はビクビクしてしまう。
「紅組の友達とお茶してた」
「………」
聞いておきながら、謙介は返事を返さない。
カップをテーブルに戻すと、楓香はすぐにソファーへと押し倒される。
(やっぱり、そうなるんだよね…)
制服のブラウスの前を広げられ、乳房がブラから溢れる。
「楓香の胸が大きくなったのって、オレのおかげだろ」
謙介が両方の乳房を強く掴んだ。
「あっ…」
謙介は楓香に覆いかぶさると、彼女の乳首を口に含む。
「うっ…、ううんっ…」
テストが終わったその日に、謙介と楓香はお互いを慰め合った。
それから先日の事があり、楓香にとっては10日ぶりの謙介との触れあいだった。
楓香はすぐに興奮してきてしまう。
恥ずかしいほど乳首が立っていた。
その先を、謙介の舌と指が刺激する。
「ああっ…、ああんっ…」
謙介が楓香のスカートの中をまさぐる。
「ひゃっ…」
彼の指が、ショーツの上からそこに触れた。
先日、謙介の目の前でオナニーさせられたが、結局彼は楓香を愛撫したりはしなかった。
ほんの少し触られただけで、楓香の腰は動いてしまう。
「…もっと触って欲しいか?」
「……うん…、触って…」
楓香は素直に頷いた。
謙介は楓香のショーツを剥ぐと、体を起こして彼女の足を開く。
バレエを習っていた楓香の体は柔らかく、謙介に押されるまま大きく開いてしまう。
もう何度も見られている、楓香の性器。
小学校の時のあのきっかけ以来、お互いを見せ合い、触り合ってきた2人。
小学校時代の楓香の性器を知っている謙介は、18歳になった今、目の前の変化した女性器の姿が、本当に淫靡だと思う。
制服のまま押し倒され、これ以上開かないところまで足を広げている彼女。その真ん中にある、桃色の亀裂が既に濡れ、謙介の愛撫を待っていた。
「いやらしいな、お前も」
「あんまり見ちゃ、嫌…」
何年も何度も見られているのに、楓香は今でもこうされるのが恥ずかしい。
「お前の大好きな事、してやるよ」
彼女の足を大きく上げさせ、謙介は楓香のそこに口を付ける。
「ああっ…、あんっ…」
謙介と楓香は、ずっとお互いの感じるところを確かめ合いながら、慰め合ってきた。
謙介が高まる場所を楓香が知っているように、謙介もまた、楓香の良くなるツボを分かっていた。
舌をベッタリと女性器につけたまま、頭を振ると楓香は喜ぶのだ。
「はあっ、あぁっ…、やぁっ…」
穴の周りを少し触ってやると、ヌルリとした液体が溢れ出てくる。
謙介は指を1本、そこへ入れる。
「ああぁぁっ…、ああんっ…」
ここへ来て、たいした会話もないまま、行為が始まってしまった事など、もう楓香の頭からは消えていた。
(ああ、気持ちいい……、だめぇ…)
楓香の体は、謙介に『開発された』という表現がまさに言い得ていた。
まだ性感も分からない頃から、巷に溢れている様々なオーガズムについての情報を、謙介に実践され続けて来ていたのだ。
謙介はネットで情報を集めては、それらを楓香で試していた。
謙介の指が、小刻みに楓香の中の感じるポイントを刺激する。
「ああっ…、うあっ…」
そうしている間も、彼の舌は楓香のクリトリスをしっかりと押さえ、撫でる。
(気持ちいいっ…、気持ちいい…)
楓香は指を噛む。
~~~~
中学に入った頃には、謙介は楓香でもっと色々な事を試したい気持ちが抑えられなくなっていた。
中学に合格し、それまでの心配ごとから開放されたのも大きい。
特に謙介は、楓香が本当に合格できるのか、試験が終わってもずっと心配していた。
小学校6年生の時は、楓香のクリトリスを弄ってイカせるのが謙介のブームだった。
最初はそうでも無かったものの、回数を重ねるうちに楓香はクリトリスですぐイケるようになった。
その頃には謙介も射精を覚え、楓香に扱かせたりしていた。
受験勉強の忙しさとストレスの息抜きに、楓香と謙介は親の目を盗んでは、時々そんな行為をしていた。
蒼鳳学園中学へ入学し、生活がだいぶ落ち着いてきたある日、母親同士が一緒に遅くまで出掛けるという、絶好のタイミングがあった。
謙介は防音がしっかりしている、ピアノ室に楓香を呼ぶ。
「楓香、Gスポットって聞いた事あるか」
「何それ?」
「お前の体の中にあるらしいよ」
「ええ~?どこに?」
無邪気に可愛い瞳のままで、楓香は謙介を見つめる。
謙介は楓香の中に指を入れた事はあったが、意識をして中を愛撫した事は無い。
「ここに」
謙介は楓香のパンツに手を入れた。
「あんっ……」
楓香は謙介との遊びのせいで、普通の少女より性感への欲求が強くなっていた。
「ああ……」
楓香が声を出す。
謙介が指を動かすと、すぐにその指はヌルヌルに汚れていく。
少し弄っているだけで、謙介の指に触れる楓香の粒が、固くなっていく。
「もうイケるの?」
謙介は楓香の耳元でささやく。
「うん…、イっちゃう…」
楓香の声が切羽詰る。謙介の肩をギュっと掴んだ。
ビクンと体を大きくそらすと、声を上げて、楓香は達した。
「楓香、どんな感じか教えて」
「うん…」
楓香は体育座りから上半身を斜めに倒したような体勢で、腕を後ろについて足を広げていた。
謙介は楓香のそこへ中指を入れていく。
「ああん…」
「痛い?」
楓香は処女だ。
そして女の子に指を入れる事に、謙介は慣れていない。
いつも初めての行為をする時には、謙介はちゃんと楓香の反応を確認していた。
「…大丈夫、痛くない。気持ちいい」
楓香も素直に答える。
謙介はもっと奥まで、指を進めていく。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫…」
「処女膜とか、どこなんだろう」
そう言って謙介は楓香の中を探る。
「…本当に痛くないの?」
心配になって、彼はまた聞いた。
「へーき…はぁっ…」
眉をしかめる楓香の表情が、謙介は好きだった。
楓香の中の謙介の指が、熱を感じる。
謙介は痛いぐらい、勃起していた。
(確か、中をこう動かすとイイって…)
指をしっかりと中に入れたまま、指先を折り曲げない程度に動かす。
(コの字にすると、傷つけるって書いてあったよな…)
第二関節を折るように動かすのは良くないと、どこかで読んでいた。
元来器用な謙介は楓香の中から、恥骨の方へ向かって探るように指を曲げる。
そしてピアノを弾くように、指の腹がそこへ当たるようにリズミカルに繰り返した。
楓香のそこがくちゅくちゅと音を立てる。
「ああっ……、んんっ…」
「どんな感じ?」
「分かんないけど…、イヤじゃない…」
(ああ、温かいな…)
液体の溢れる楓香の体内を、指先に感じる。
中で指を動かすと、楓香の体が小刻みに揺れた。
幼い可愛らしい顔が、快楽に歪む。
「あぁっ…あっ…あぁっ…」
さっきからもうひっきりなしに、楓香は声を出していた。
謙介自身の先も濡れてくる。
楓香に入っていた指を、一旦謙介は抜いた。
指は根元までドロドロになっていた。
「楓香、舐めて」
「えっ…」
L字型のソファーの角、広くなったところに、謙介は移動する。
「オレにまたがって」
「えっ…えっと…、えぇっ…」
戸惑う楓香をお構いなしに、謙介は楓香の足を引っ張り、自分の顔の上へまたがせる。
「やぁっ!恥ずかしいっ…」
「何言ってるんだよ、ずっとお前のここ、さっきから見っ放しなのに」
謙介はグッショリと濡れた楓香の性器に口をつけた。
「ああっ…」
「楓香もオレの舐めて」
「うんっ……、ケンちゃんも、濡れてる…」
楓香も、しっかりと剥けた謙介の先を口に入れた。
「ううっ……んんっ…」
楓香が声を漏らす。
謙介は彼女のクリトリスを指で触りながら、彼女の入り口を舌で舐めた。
~~~~
5年前のあの時と同じ場所に、2人は いる。
今では分かる、楓香のGスポットに当たるように謙介は指の動きを早くする。
「ああっ…、ダメ、ケンちゃん!…い、イっちゃうよぉっ…」
謙介の動きに合わせて、楓香がグチャグチャと音を出す。
「ああっ、ああぁぁっ…!!」
楓香の全身から力が抜ける。
「はあ…、はあ…、あぁっ…」
完全にソファーへとグッタリ沈む楓香。
謙介の手のひらまで、楓香の液体でベタベタになっていた。
「休むなよ」
楓香をソファーにうつぶせにさせると、制服のスカートをしっかりめくり上げる。
丸出しになった彼女のお尻を、謙介は腰ごと自分の方へ引っ張った。
「ああ…、はぁっ…」
達したばかりの楓香の上半身の力は抜け、ソファーへ体重を委ねていた。
しかし腰を持ち上げられた状態で、濡れた性器はしっかりと謙介の方へ晒されている。
曲げた腕にネコのように顔を乗せて、楓香はまだ肩で息をしていた。
謙介と楓香がお互いを慰め合うようになってから、謙介が言った事がある。
「将来、お互いちゃんと付き合う人ができるだろうから、キスとセックスはやめよう」
どこからどこまでがセックスで、じゃあ自分たちが今している事は何なんだろうと思った楓香は、謙介のその言葉がよく理解できなかった。
それを謙介に言ったら、だからお前は頭が悪いんだとか、またバカにされそうで、楓香は言えなかった。
(キス、しないんだ…)
謙介から「お前とはキスしない」とハッキリ言われて、正直楓香は悲しかった。
そして自分が、「ちゃんと付き合う人」では無いんだという事を宣言されたのも、すごく悲しかった。
(だけど、離れたくないよ…)
どんなに恥ずかしいところを見せようとも、色んなところを触られようとも、キスする事さえ許されないというのが、辛い。
それでも楓香は謙介から離れられなかった。
謙介が自分に与えてくれる、快楽にも溺れていた。
(気持ち良すぎてダメになっても、それでもいい…)
楓香はそう思っていた。
膝を組むようにして、バックの形で謙介を受け入れる。
と言ってもセックスをしない約束をしているので、謙介は楓香の性器と太腿の間に自身を挟んで擦るだけだ。
楓香はたっぷり濡れていたが、謙介はローションを自分のモノに大量に垂らした。
「ああぁっんっ…!」
足と性器の間、そこに謙介が滑ってくる。
両足をギュっと絞っているから、自然と力の入る股間が、楓香の性感をさらに高める。
「ああっ、…ああんっ…」
謙介が腰を動かす度に、楓香のクリトリスにピッタリと付いた彼のペニスがヌルヌルと滑る。
指よりも滑らかな感触が、楓香のそこを激しく擦った。
(ああっ…、そこ、感じちゃうのにっ…)
外れそうになる足に力を入れて、懸命に謙介の動きを受止める。
気持ちが良すぎて、握る指が震えた。
何度も敏感な肉芽に謙介のモノが擦りつけられる。
(ダメっ…、そこ、イっちゃう…)
「あぁんっ!……だめぇっ…」
腰を震わせる楓香の尻を、謙介は動かない様にギュっと掴んだ。
もう何度もこうしているから、彼も慣れていた。
楓香の肉の間に包まれるように、彼女の性器に自分のモノを滑らせる。
「楓香、…先、持って」
完全に密着すると、彼女の股の間から長さのある謙介の先が出る。
出てきた頭の部分を楓香に押さえさせると、ペニスが彼女の性器と更に密着した。
「あぁっ、…ああんっ…」
楓香が謙介のモノを自分へ押しつけると、さらに性感が高まってしまう。
謙介は腰を楓香に打ち付け、もっと早く動かす。
(楓香……、いい…)
挿入していないのに、それは十分性器だった。
クリトリスが弱い楓香が感じる度に、ビクンビクンとそこを揺らすのも良かった。
(はあ…はあ……)
それでももっと腰を引いて角度を少し変えたら、きっと簡単に楓香の中へ入ってしまう。
彼女の入口は、すぐそこにあった。
(入れたい…、楓香に……)
痛烈な願望が、謙介を誘惑する。
それに抗うために、謙介は楓香に密着した。
入らないように、腰を引き過ぎないように。
(もうガマンできない…)
謙介は離れると、急いで楓香を引っ張る。
高校の制服を着たままで、すっかり感じている彼女の、女の顔。
察した楓香が、謙介を咥えた。
どくん、どくん…
自分の愛液で汚れた謙介のものを、楓香はしっかり咥えて、彼の精液を飲みこむ。
彼のペニスは自分の唇が触れる事が許される、唯一の場所。
だから愛しかった。
「はあっ…、はあっ…」
崩れてソファーに倒れ込んでいる楓香のそこを、謙介はティッシュで拭いた。
楓香が汚したソファーも、彼がキレイにしている。
「ごめん…、ケンちゃん…」
「いいよ、お前は休んどけ」
そう言って、楓香のスカートを直す。
(意地悪な事ばっかり言うのに…)
まだ下半身が重く、ジンジンとした快感でそこが熱かった。
(そうやって、いつも優しいから…)
離れられなくなるのに…と、楓香は思う。
行為が終わり、次第にお互いに落ち着きを取り戻していく。
楓香は謙介に膝枕され、髪を撫でられていた。
(こういう時間が好き…このまま時間が止まればいいのに)
謙介のズボンを、楓香はキュっと握る。
「明日、中間で落としたところ、重点的に復習するから」
彼の声の響きは淡々として、既に謙介は普段の彼に戻っていた。
「………」
「明日までに、間違ったところ完璧にして来い」
「はい…」
合間にこうやってエッチな事をすることも多いが、大体の時間を2人は真面目に勉強に費やしていた。
(帰ったら、全部か…厳しいなあ…)
普通の家庭教師よりも、彼の方が遥かに厳しい。
頬に謙介の温もりを感じているのに、急に楓香は現実に戻されていくような気がした。
「楓香さん、お夕飯はいかがですか?」
帰り際、緑川が楓香に声をかける。
「ありがとうございます。今日は帰ります」
楓香は一礼して、去っていく。
足元のおぼつかないその後ろ姿を、緑川は見送る。
(奥様は気付いておられないけれど…)
母親のいない時に、謙介は楓香とピアノ室で過ごす。
それが何を意味するのかは、帰り際の楓香の様子を見れば一目瞭然だった。
「緑川さん」
夕食のために来た謙介が、彼女に声をかける。
小さかった少年が、今では緑川が顔を上げて見上げるほど大きく成長していた。
「母さんには秘密だって、分かってるよね」
「勿論です」
緑川は頷いた。
(言えないでしょう…)
謙介とは生まれた頃からの付き合いだ。
長い期間信頼され、他とは比較できない程の厚待遇を、左近家にはされている。
それは決して手放せないものだ。
(例え、言えと言われても、言えないわ…)
倫理的に許されない程幼い頃から、ずっと続いている謙介と楓香の関係を彼女は知っていた。
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