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言いなり学園
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15.体温

「ご飯、美味しかったね」
「ああ」
謙介は静かに頷いた。
食事を終え部屋に戻り、楓香はソファーに、謙介はベッドに座っていた。
「海の方は真っ暗で、もう何も見えないね…」
少しだけカーテンを開けて外を見た。
初めて過ごす謙介との一夜に、抱き合った後の今でも楓香は緊張していた。

「買ってきた水ってまだあったよな」
「うん」
楓香は冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを出す。
「はい」
謙介にそれを渡して、彼の隣に座った。
未だに謙介とこうしている事が信じられなくて、楓香も気持ちはフワフワしてしまう。
手を伸ばして謙介はサイドテーブルにペットボトルを置く。

「ケンちゃん、…疲れてない?運転してたし…」
(ここに来てから何度も私を抱いてるし…)
楓香は言葉にせず、心で思った。
「大丈夫。楓香こそ、疲れた…?」
謙介は楓香の髪を撫でた。
目が合う。
「ケンちゃん…」
洗ったままの髪で眼鏡をしていない謙介は、いつもよりずっと幼い。
「……」
楓香を見る彼の目はとても優しくて、最近の彼は楓香の知っている謙介ではないような気がした。
それでも、今の彼も、前の冷たい彼も、楓香にとっては大好きな謙介である事に変わりはない。

謙介の唇が、柔らかく楓香に触れる。
触れあう肌から、これまでに無い穏やかな優しさが伝わってくる。
(好き…ケンちゃん…)
彼に脱がされながら、楓香はまた泣いてしまいそうだった。

裸で、お互いの体に手を伸ばす。
謙介の指が楓香のそこをなぞる度、くちゅくちゅと音が鳴る。
それは楓香にも聞こえた。
(恥ずかしい…)
自分の体がこんなにも濡れてしまう事を、謙介に教えられた。
子どもから大人へと変化するお互いの全てを、2人は知っていた。
楓香の手の中にも、彼のものがあった。
そっと掴むと、柔らかくて固い謙介の形が分かる。
「こんなに大きいのに…」
そう言う楓香の息が上がる。
謙介に触れ、触れられ、既に昂っていた。
「さっきまで、私の中に入ってたんだよね…?」
根本から先まで、愛しさを込めて楓香はそれを撫でる。
「自分で…、確かめてみる?」
謙介は楓香の肩を起こし、下から彼女を見つめた。
ただ彼の顔を見ているだけでも、楓香は興奮してしまう。

謙介は楓香の手に、コンドームを渡す。
「楓香がつけて」
「どう…したらいいの?」
袋からそれを取り出し、謙介がやり方を見せる。
その先端を押さえると、楓香は彼のものへとゴムを滑らせた。
「結構、簡単に付けられるものなんだね」
楓香はしっかりと手で、ゴムを下へ伸ばす。
「お前はこういう事するの、器用だよな」
そう言って謙介はニヤリと笑う。
「ほら…来いよ」
「………」
楓香は謙介にまたがった。
こんな風に彼の上には何度も乗った事がある。
その時は自分の性器を彼へただ擦りつけただけだ。
「持ってるから、楓香はただ来ればいい」
謙介は自分のそれを掴み、楓香へと先を当てる。

「………うんっ…」
楓香は真っ直ぐに、彼へと腰を落としていく。
先端にあった彼の感触が、自分を割っていくのがハッキリと分かる。
「ああ……あんっ……」
謙介のものが、入っていくだけの感触で、楓香は感じてしまう。
(気持ちいい……)
既に濡れたそこは、謙介を簡単に奥まで飲んでしまう。

「はぁっ…入った…?」
楓香は薄く目を開けて、下にいる謙介を見た。
その表情があまりにも色っぽくて、謙介自身も固さを増してしまう。
「入ってる」
謙介は楓香の両手に手を伸ばす。
楓香は謙介に抱きついた。
「だめ、…ケンちゃん…まだ動いちゃ…」
「痛いか…?」
先程初めて結ばれたばかりの楓香の体が、やはり謙介は気になってしまう。
「ううん……、動いてないのに、気持ち良すぎて…」
楓香の顔は、既に快感に歪んでいた。
彼女の柔らかい背中を、謙介は撫でた。
しっとりと吸いついてくるような楓香の肌。
それは繋がっているだけで、お互いが絡むような一体感を高める。

謙介は楓香をギュっと抱くと、グルっと体の上下の位置を入れ替えた。
上になった謙介は、楓香の頬を触った。
「楓香、見て」
「ケンちゃん…」
楓香は謙介の目を見、そして謙介の視線の先へと、彼の視線に合わせて下を見る。
「ちゃんと入ってるから、…確認して」
謙介は楓香の足を大きく広げて、彼女の方へ倒す。
楓香のその上に、謙介の体がくっついている。
「見て」
謙介が腰を上げる。
そのゆっくりとした動きに合わせて、楓香の中から彼のペニスが出てくる。
「ああっ……」
謙介のものは何度も見ていた。
しかし自分の中から出てくるそれは、そして謙介を飲みこんでいた自分のその部分も、楓香の想像を超えたいやらしさだった。
体毛の薄い楓香のそこから、謙介の固まりが出てくる。
「あぁ、…いやっ……」
謙介のそれが濡れて光る。
(恥ずかしい…)

謙介のものが全て出てしまうと、楓香は自分自身からも熱い液体がこぼれたのが分かった。
「入れてただけなのに、すごい溢れ方してるな」
「いやんっ……」
足を大きく広げられて、謙介にそこを見られていた。
謙介もまた、興奮していた。
コンドームの先を引っ張ると、謙介は自分からそれを取っていく。
(ケンちゃん……)
ゴムを脱ぐ一連の謙介の動作を、楓香は熱い体のまま、ただ見ていた。
生でさらされたそれを、謙介は楓香のそこへ当てる。
「入れるから、見てて」
「……んっ…」
(ケンちゃん、ゴム取った…)
分かっていたが、楓香は謙介にされるままだった。
生々しい桃色の謙介のペニスが、楓香を割ってくる。

「ああっ…!!!」

ゴムを付けている時の感触とは、全く違っていた。
入って来ただけで、楓香は達してしまうかと思った。
楓香は目を閉じ、背中を大きくのけぞらせる。

(楓香……)
良かったのは、謙介も同じだった。
彼にとっても夢にまで見ていた、楓香との繋がり。
お互いの肌が擦れあう眩暈のような快感が、2人の体に伝い合う。
「ううっ、…んっ…」
謙介は楓香に覆いかぶさり、楓香の唇に自分の唇を重ねた。
そうしないと、謙介も恥ずかしい声をあげてしまいそうだった。
「あぁっ…!ああっ…、うあぁんっ…!」
楓香は我慢できずに、謙介から唇を離し、声を出す。
「ダメっ……、もう、……イクっ…」

楓香の中がギュっと締まる。
これまでに指で感じたのとは別次元の、生でそこへ伝わる彼女の感触に、謙介も連れて行かれそうになる。
謙介は、何とか理性を振り絞った。

「はぁっ…、あぁっ…」
謙介は楓香から自分を抜いた。
そのまま、息を切らしている楓香の元へ急ぐ。
楓香は口を開けて、目の前の謙介のそれを咥える。
「あぁ…、はあっ…、うぅっ…」
謙介の声に、楓香も興奮してしまう。
口に挿しこまれた謙介から、熱いものがほとばしる。
「んぐっ…、んぅっ…」
自分の体中に快感を与えてくれるそれを、楓香は唇で確かめる。
そして口に放たれた彼のものを全て飲んだ。

「はぁ…はあ…はぁ…ああんっ…!」
謙介のものを飲み、グッタリしている楓香の中へ、謙介は指を入れた。
「イきそうだったんだろ?」
「あっ…、やんっ……、あぁんっ…」
つい今まで、謙介自身が入っていた中の感触を、謙介は指で確認する。
これまで愛撫してきたどんな時よりも、そこは柔らかかった。
(楓香……)
彼女の体の気持ち良さを、改めて謙介は思う。
(ここ…、入れるとあんな感じになるのか…)
先程自分は、この場所から激しい快感をもらった。
謙介はそこへ指を2本入れた。
楓香の感じる場所は分かっている。
「ダメっ…、もうっ…、ダメなのっ…、ああっ…」
楓香の足が震える。
それをきっかけに、彼女の体中がガクガクと震えだす。
「ああっ…!ああっ…」
2本の指でさえ、ギュウギュウと締め付けてしまうその感触を確認するように、謙介は楓香を探った。


「またすごく汚しちゃった…」
潮を噴いたわけでもないのに、楓香の腰の下は広範囲で濡れてしまっていた。
「こっちで寝よう」
シャワーを浴びて、隣のベッドに2人で入る。
備え付けられていた浴衣に着替えていた。
(ケンちゃん、浴衣似合うなぁ…)
(夏には一緒に出かけられるかな)
そんな事を考えて、楓香は謙介にくっつく。
謙介の肩を触っていたら、その楓香の手を謙介は握ってくれた。
(嬉しいな…)
どんなに激しく求め合っても、こんなささいな事にドキドキしてしまう。
そっと謙介を見ると、謙介も楓香を見ていた。
恥ずかしくて楓香がちょっと笑うと、謙介は楓香のおでこにキスをした。
(どうしよう…好き…)
恥ずかしくて顔があげられなくて、楓香はそのまま謙介の首筋に顔をくっつけた。
「ケンちゃん、私の事…好き?」
「うん」
あっさりと、謙介は頷く。
楓香は少し拍子抜けして、それでもやはり嬉しくて笑顔になる。
「ケンちゃんが私とキスしないのは、…私の事が好きじゃないからかと思ってた。前に私が好きだって言った時、…はぐらかされたし…」
「フッ」
謙介はこれまでのような、意地悪な笑みを浮かべる。
「どうして…今までこんな風にしてくれなかったの?もっとずっと前から…、私はケンちゃんと付き合いたかったよ」
ずっと心にあって、棘のある檻のように楓香を苦しめていた謙介の存在。
これまでずっと辛かったのは、事実だった。

「キスしたら…、キスだけで済むと思うか?」
謙介は楓香に体を向け、楓香を真っ直ぐに見た。
「…思わない…」
これまでの肉体関係の中で、もしキスしたなら当然のように求め合ってセックスしてしまうだろう。
「もしオレ達が中学ぐらいでそういう関係になったら…、多分歯止めが効かないぐらい、エッチしてたと思うだろ。してなかったのに、あんなだったんだから」
「……そうかも…」
「正直言って、オレ…」
謙介の真面目な表情が、目の奥に揺れる何かが、楓香の心を揺さぶる。
「………」
「やっぱり言わない」
謙介は目をそらした。
「何っ?…何?気になる!」
「………」
「ちゃんと言って…ね?」
楓香は謙介にすがりつく。
これまでキスも結ばれる事も許されなくて、それは楓香をずっと苦しめていたのだから。
「…オレ、もし楓香と付き合ってたら…、多分いつか妊娠させてたと思う」
「…えっ…」
意外な謙介の言葉に、楓香の目が丸くなる。
「今だって、生で入れた。お前も気付いてただろう」
「……」
「お前も許しただろう」
謙介はコンドームを途中で取っていた。
それを見ていたのに、楓香も謙介に何も言わなかった。
(流されてた…)
もし謙介とお互いの体に興味を持ち始めた頃から、セックスをしていたなら、本当にいつか妊娠していたかも知れない。

「そうなったとしても、オレは責任取れなかったしな」
「ケンちゃん…」
「今なら…。楓香もオレももう18だし、できたならできたで、まあ何とかなるだろ」
(『何とか』って……)
楓香はじっと謙介を見た。
「それって…、ケンちゃん…」
楓香が言い終わる前に、謙介は楓香の口を手で塞いだ。
頬にキスをし、唇の端を舐める。
「ケンちゃ…」
謙介は手を離すと、唇で楓香の唇を塞いだ。
「んん…」
キスされるのにまだ慣れていなくて、楓香はすぐドキドキしてしまう。
(ああ…)
彼の舌が、自分の舌に触れる。
その感触の愛しさに、楓香の瞳の奥に熱いものがこみあげてきた。

長いキスの後、頭の芯まで溶けかけた楓香は、声を絞り出す。
「私と……」
(結婚してくれるの?)
と聞きたかったが、言葉にするのが怖い。
そんな楓香の気持ちを十分分かった上で、謙介は涼しい顔で言った。
「お前がオレと結婚したくなったら、お前の方から言えよ。タイミングとオレの気分が合えば、ちゃんともらってやるかも知れないから」
「何よ、何でそんなに偉そうなの…」
眉をしかめて、楓香は謙介を少し睨む。
「はは…」
謙介は楽しそうに笑っている。

(ケンちゃんが、笑ってくれてる…)

今日の謙介はいつもよりずっと笑顔が多かった。
こんな風に過ごしたかったんだと、楓香は改めて思う、そして胸が熱くなる。
「ケンちゃん…大好き」
楓香は謙介に抱きついた。
「キスできて良かった…エッチできて良かった…、ケンちゃんが私の事を好きでいてくれて、ホントに良かった、一緒にいられて良かった…ケンちゃんの笑顔が見れて良かった…」
言葉にすると、かなわないと思っていた事全てが現実になっているのだと、実感した。
楓香は涙がこらえられなくなる。
「また、泣いてんの?」
謙介は自分に抱きついてくる楓香の髪をそっと撫でた。
「泣いてない…」
「いいよ、泣けば」
謙介は楓香の頬を両手で挟み、じっと彼女の顔を見た。
楓香は泣いても笑っても可愛いと、謙介は思う。
その気持ちとは裏腹に、自分の事だけを一途に想ってくれる純粋過ぎる楓香を、時々めちゃくちゃに壊してしまいたい衝動にかられる。

「よく、…そう言ってたよね、ケンちゃん」
両目に涙をためたまま、楓香はクスリと笑った。
「……」
謙介は楓香の瞼に唇を寄せた。
舌先で、まつ毛を舐める。
「おやすみ、楓香」
「おやすみなさい…」
謙介に寄り添うと、楓香はその温もりを体で感じた。
その温度に安心して、いつの間にか眠りに落ちた。
 

 

   

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