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言いなり学園
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14.ふたり

楓香は助手席に座って、流れる外の景色を見ていた。
「いつの間に免許取ってたの?」
「お前が必死で勉強してた間」
そう言って、運転席の謙介はニヤリとした。

試験休みに、楓香は謙介に2泊の旅行に誘われた。
嘘をついてもどうせバレるからと、謙介は楓香のいない時に楓香の母親にこの旅行に連れて行く事の了承を得に行っていた。
謙介の母にも、楓香を連れて行く事を知らせている。
お互いの両親ともに、2人の交際に非常に好意的だった。
元々子どもの頃から母親同士の仲が良く、楓香は小さい頃からいつでも謙介のところへ嫁に行っていいと言われ続けていた程だったからだ。

「旅行の事…お母さんに、ケンちゃん何て言ったの?」
「秘密」
「…じゃあ、お母さんは何て言ってた?」
「秘密」
謙介はハンドルを握り、前を向いたままで答えた。
デザインは若者向けだが高級だと一目で分かる車でも、謙介が乗ると嫌みにならずハマる。
楓香は運転している謙介の横顔を見た。
こうしていると、彼も大人になったのだと実感した。
(でも、お母さんと何を話したのか、やっぱり気になるよ…)
これ以上聞いても、謙介は何も言わないだろうと楓香は思った。
それよりも、普通にデートすらした事の無い楓香は、この旅行に緊張していた。
そして嬉しかった。


謙介が予約したのは、離れのある旅館だった。
規模は大きくなく、隠れ家のような佇まい。
若い自分たちに楓香はどこか引け目を感じてしまったが、謙介の余裕のある態度は、そこにいても違和感がない。
案内された部屋は、低い大きなベッドのある和洋室だった。
(お泊りなんて、小さい頃家族と行ったのがいつだったっけ…)
楓香は窓に進み、外の景色を見る。
緑の向こうに、海が見えた。
「静かでいいところだねー」
「ああ…」
荷物を置いた謙介は、楓香に近づいてくる。
(あ……)
楓香は謙介に後ろから抱きしめられた。
長い髪を横に流され、首筋にキスされる。

「楓香……」
「ん……」
お腹に回された謙介の腕も、背中に感じる温もりも、楓香は嬉しくてたまらない。
「キレイになったな…お前」
「えっ…」
「前から可愛かったけど、試験結果発表の後から…もっとキレイになった」
謙介らしくないその言葉に、楓香は戸惑ってしまう。

謙介にキスされたあの日から、楓香の世界は変わった。
諦めていた謙介が、自分に近づいてくれた。
そばにいられるという安心と、気持ちが通じた事の喜び、そして何よりも謙介の気持ちが伝わって来て、楓香の目に映るものは全て輝き出した気がしていた。
「ケンちゃん…」
振り返り、楓香は謙介へ体を向ける。
そのまま唇が重なる。

謙介は上着を脱いだ。
楓香もコートを脱ぐ。
楓香はそのまま謙介に脱がされていき、2人は裸でベッドに倒れ込む。

唇を割り、謙介の舌が楓香の舌に絡む。
謙介の右手が、楓香の乳首に触れた。
「んっ…」
それだけで楓香の体はビクンと跳ねてしまう。
謙介は一旦唇を離すと、楓香を見てまた彼女の唇を舐めた。
楓香のお腹を撫で、足の間に指を滑らせる。
既に愛液が亀裂を満たしていて、謙介の指を濡らした。

「しようか…」
「………うん」

愛撫をせずとも、楓香のそこは謙介を受け入れるのに十分過ぎる準備ができていた。
謙介が体を起こす。
明るい部屋で、お互いの体が見えた。
何度も触れあったその部分。
謙介は自らの先端を楓香の亀裂に滑らせた。
「んんっ……」
楓香の声が甘い。
謙介は自分のそれを掴むと、楓香のそこへと角度を変えた。

彼の先が当たった感触に、楓香の期待は高まり、全ての感覚がそこへ集中していく。


「んっ……!」

指では無い、もっと温度を持ったそれが、楓香に割って入ってくる。
「ああっ…」
「……っ…」
謙介は自らのものを、楓香の奥まで一気に刺した。

(ああっ……すごいっ……)
楓香は謙介へ手を伸ばす。
謙介は楓香の肩に手を回し、楓香も同じように彼の肩を掴む。

「あっ……あっ…」
ギュっと抱きしめあう。
謙介は動かずそのまま楓香の中にいた。
「…大丈夫か?………痛くない?」
楓香は謙介の優しい声が嬉しい。
「うん……大丈夫」
痛みは全く無かった。
それまでに謙介の指で、中の感じる事を覚えさせられている楓香は、むしろもう感じてしまっていた。

(すごい……気持ちいい……ケンちゃん…)

謙介が自分と繋がっている喜びで、楓香の目から涙が零れた。
「う……うぅ…」
「痛いか……?」
心配そうな謙介の声に、楓香は首を振る。
「…嬉しい……。ケンちゃん…」
楓香は唇をかんだ。
涙を浮かべた大きな美しい瞳が、謙介を見つめてくる。
その切なげな表情に、謙介の胸も締まる。
「……楓香…」
謙介は彼女の頬にキスした。
「ケンちゃん…好き…」
首筋に触れる謙介の手に、楓香は触れた。
謙介は楓香のその手を、グっと握りしめる。

楓香に体を重ねたまま、謙介は動き出した。
これまでされた指の愛撫とは全く違う謙介の感触に、楓香の性感は高まっていく。
「あっ…、あぁっ……」
謙介に揺さぶられて体が動くだけで、楓香は感じてしまう。
「あぁっ……、あんっ…」
(すごい……ケンちゃん…すごい…)
「楓香……」
「あぁっ…」
夢中だった。
謙介と一緒に動いていている自分の体さえ、楓香は愛しくなった。



「はあ…はあ…」
楓香の顔は涙でグシャグシャになっていた。
謙介はタオルを持って来て、汚れた楓香の頬をそっと拭いた。
「いつも……」
「うん?」
軽くする返事の謙介の声さえ、これまでよりもずっと穏やかで優しかった。
「ケンちゃんはタオル持って来て、拭いてくれるね…」
「ああ、そうだな。そう言えば」

謙介は楓香の隣に、横になった。
そして楓香の髪を撫でる。
(可愛いな……)
とっくに自分のものだと思っていたが、こうしてちゃんと抱くと、改めて楓香が自分だけのものになった実感が沸いた。
(泣き過ぎだろ…)
謙介は人差し指の裏側で、楓香の目の下を触った。
彼女の長い下睫毛が指先に触れる。
自然と楓香の唇へ視線が移っていく。
「……体、痛くなかったか?」
「うん……ホントに全然痛くなかったよ」

(やっぱり、あれか…)
謙介は思い当たる事があった。
中学生の時、楓香に入れる指の数を増やしてみた事があった。
その時に楓香はすごく痛がって、少し出血させてしまった。
その後、指を2本以上入れる事はしなかった。
しかし彼女の中を、謙介の指はこれまで何度も愛撫している。
楓香は処女だったが、肉体的にはもう謙介に全て捧げているようなものだった。

「やっぱり、…エッチって全然違うね。1つになってるって感じがする」
「……そうだな」
楓香と繋がる感覚は、謙介が予想していたよりもずっと良いものだった。
「ケンちゃん……」
「ん…」
「大好き…」
楓香は謙介に唇を寄せた。
それに応えるように、謙介も楓香の唇を割った。


キスを繰り返すと、謙介はすぐに復活してくる。
「あっ…」
体を密着させていたので、楓香はそれにすぐ気付いてしまう。
「楓香、触って」
謙介が楓香にささやく。
「……」
楓香は何度も触れている、謙介のものに手を伸ばした。
「もう、大きいね……」
謙介の形を確認するように、根本から先まで、丁寧に触った。

謙介は楓香の耳を舐める。
「ひゃっ…」
くすぐったくて、楓香は思わず声をあげた。
「楓香、可愛い……」
「ん…」
そう言われて楓香は、すごく嬉しくなる。
試験以来、謙介はとても優しくて、楓香はそのギャップに戸惑ってしまう。
2人の間にあった見えない壁が、完全に無くなったような気がしていた。
(嬉しすぎる……ケンちゃん…)
楓香の手の中の、謙介が固さを増して小さく動いた。

「入れたい…?」
謙介は楓香の耳元で、小さく言った。
「うん、…入れたい…」
楓香は謙介を見た。
謙介も自分を見ていた。
重なった胸に、お互いの動悸を感じる。
見つめ合っているだけで、息が上がりそうだった。

「オレも入りたい」

唇が重なり、貪るような激しいキスが始まる。
キスをしたまま謙介は楓香の上になり、体重を彼女に乗せた。
「うぁ、あぁんっ……!」
楓香が声を上げる。
足を開き、腰を寄せるだけで楓香は簡単に謙介を受け入れてしまう。
先程初めて結ばれたとは思えないほど、彼女は体中で謙介を求めていた。
「どうしよう……、気持ちいいっ…すごいっ、いい…あぁっ…」
謙介がゆっくり動かすだけで、楓香の表情が崩れる。
「あっ…、やっ…、あぁんっ…」
楓香の感触を確かめるように、謙介は彼女の中をゆっくりと探った。

(ああ……すごい…)
楓香は体内で謙介を感じた。
(ケンちゃんの……すごい、いい…)
焦らすような謙介の動きに、楓香の体はたまらなくなる。
(入れられるのって…こんなに、いいんだ…)
「はぁっ、あんっ…あっ…」
楓香は枕を掴んだ。

謙介が大きく腰を引くと、ヌルリと彼女から出た愛液が彼のものに纏わりつく。
更に腰を引いてペニスを出してしまうと、楓香の中から大量の液体が栓を抜いたように零れ出てきた。
「楓香……、すごい出ちゃってる」
「やっ……だって…」
再び謙介が楓香へゆっくりと入って行く。
謙介は楓香に自分のものが入る様子を見た。
これまで散々弄んだ彼女のその部分に、猛るそれが差し込まれていく。
謙介は楓香の膝を掴んだ。
動くたびにグチャグチャと淫靡な音が出る程、楓香の中から愛液が溢れてくる。
「あぁっ……やぁんっ…」
快感で、楓香の指先が震えた。
頭が真っ白になっていく。
奥へ当たるように、謙介は腰を押しこんだ。
「やぁっ…、だめっ…」
楓香の体が大きくのけぞり、謙介を締め付ける。

キツく締まっていくのに、溢れる愛液が謙介を滑らせた。
(楓香…すごい…)
自身の先で感じる彼女の奥の感触を味わうように、謙介は更に楓香を突く。
「はぁ…はぁ…」
「あぁっ…、ダメっ……、ケンちゃんっ…、イっちゃう…!!」
楓香は謙介の腕を掴んだ。
腰がガクガクと揺れる。
その動きに、謙介も連れて行かれる。
「はぁっ、…うっ…」
謙介と楓香を隔てる1枚の膜の中へ、彼も精を吐く。
「はあ、はあっ…」
大きく息の上がる楓香の体の上に、そのまま自分の体重を乗せた。


シャワーを浴び、2人は裸のままでベッドに入った。
夕刻になり、日も落ち始めている。
「温泉あるって言ってたよね…」
楓香は謙介の横にくっついて、彼の肩を触る。
「夜、行ってみるか?」
「うん……」
ここに着いてからすぐ、謙介に抱かれてた。
ベッドに横になっていると、安心して楓香はウトウトしてしまう。
昨晩もあまり眠れなかったのだ。
「寝ちゃいそう…」
「いいよ、寝れば」
「ううん、…夜、寝る…」
「寝れればな」
そう言って謙介はニヤリとし、楓香を見た。
楓香はその意味を悟り、恥ずかしくなってしまう。
どんなに体を見せようとも、謙介に体を預けようとも、やはり恥ずかしさは変わらない。

「絶対、こんな恥ずかしい事、ケンちゃんとしかできないよ…」
楓香は頬を謙介の肩にくっつけた。
謙介はそんな楓香の甘えてくる様子が可愛いと思う。
これまでも2人でいる時間はあったが、今とは全く違っていた。
今、隣にいる楓香は謙介に対して心を許している。
謙介がキスしてからの楓香は、さらに魅力を増して謙介の目に映った。

「キスだって、ケンちゃんとしかしたくなかった…」
「………」
耀にキスされて、楓香は相当ショックを受けていた。
家まで来て、号泣していた彼女を謙介は思い出す。
「ずっとケンちゃんとキスしたくて、我慢してたのに…。
最初のキスは、ケンちゃんが良かったな…」
寄りそう楓香の髪が、謙介の耳に触れる。

「楓香の最初のキスって、とっくにオレがしてたけど」

「えっ?」
楓香は驚いて、顔を上げた。
「い、いつ?」
自分が覚えていなかっただけかも知れないと思い、楓香は焦る。
「いつか…、忘れたけど。楓香が寝てる時」
「ええっ?!」
楓香は思わず身を起こした。
「うそ!、… ホントに?いつ?ええっ?」
「いつって…、寝てる時にもう何回もしてるけど。最初は中学何年の時だったか…」
涼しい顔で謙介は答えた。
(うそ……)
ファーストキスを耀に奪われたと思い、ショックを受けていた自分が楓香はバカらしく思えてくる。
そして、自分が眠っている時に何度も謙介にキスされていた事にも驚いた。
謙介は自分に好意を寄せてくれていると思えなかったし、まさかキスしてくれているとは想像もできなかった。
「何よ…、ケンちゃんは勝手に私にキスしてたの?」
「お前、1回寝ると全然起きないから」
「それって、ズルくない?自分はキスしないって言っておいて!」
苦しい程キスしたかったこれまでの自分を思い出し、楓香は悔しくなる。
「悶々としてる楓香を見るのが面白かったから」
謙介は意地悪に笑った。
「酷い~~!」
楓香は唇をとがらせて、謙介から少し離れて横になる。

(確かに何度も楓香にキスしたけど…)
膨れっ面の楓香を横目で見て、謙介は可笑しくなってくる。
(あんなのは、ホントのキスじゃないけどな…)
眠っている楓香にするキスと、今、お互いを求め合うようなキスでは全く違っていた。
現実に、眠っていない楓香にキスしてしまうと、なぜこれまでそうして来なかったのか少し後悔した。
それと同時に、きちんとしたキスをしなくて良かったと思う気持ちもある。
もしも今のようなキスをしていたら、楓香への気持ちをここまで冷静に抑えられなかったと、謙介は思った。

「楓香」
「………」
名前を呼ばれて、謙介の方へ少しだけ楓香は体を向ける。
謙介に名前を呼ばれるのが、楓香は好きだった。
どんな時でも、彼の口から出る自分の名は、特別な響きを持っていた。
楓香が手を伸ばすと、謙介が指を絡ませてくる。
「ケンちゃん…」
楓香はその指を、ギュっと握りしめた。

 

   

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